辿り着けたことに
ほっとして

それでも
まだ先はあるのだと
前を見据えた

彼女の手を取って
また
先へ




Truth 〜 considerable 〜





彼女の家を出たのは、十時過ぎ。
彼女の見送りで。
彼女の笑みを見て、別れた。
その時に聞いた決意は。
俺にとっては、大歓迎なもので。
だから。
『葉月くん?』
「はい」
彼女の家を出た直後。
諸岡さんの携帯の番号を、ダイヤルしてた。
『今日、二時だけど…』
「大丈夫です。それで……」
『で? AKIRAちゃんは何て?」
「……がんばるって」
作家業をがんばると、彼女は言ったから。
その、作家たる彼女に、仕事を回しているのは、この人。
諸岡さん、だから。
それに俺は。
作家としての彼女の力も、借りたかったから。
がんばると言うなら。
作家として、俺の仕事を支えてくれても、いいと思うから。
諸岡さんが、彼女に。
俺の仕事を回せば…いいだけのこと。
『そう! 大丈夫だとは思ってたけど。不安だったから』
じゃあ、予定通り、一時に集まって、軽く打ち合わせしましょう。
それに、短く肯定の言葉を返して。
通話を切る。
それから。
べつの番号を、俺は押す。
『はい?』
「…ミノリか?」
出た相手に、そう言葉を届ければ。
『葉月さん!?』
と、かなり驚いた様子で、声が上がった。
大きなものに、くすくすと笑う。
「どうした?」
『どうしたって……』
「履歴書に書いてあった。おまえの携帯の番号」
『…覚えてたんすか』
はぁー…、と。
電話の向こうで、長々と吐き出されたため息に。
俺はまだ、笑ってて。
『それで? 何ですかー?』
わざとらしく。
不貞腐れたように紡がれたのに、俺は笑みを零して。
それでも。
「…今日」
そう、口を開いた。
『はい?』
「今日…あるだろ? 記者会見」
『あー。そういえば言ってましたねぇ。で……それが?』
「来い。おまえも」
『はぁ!!!?』
反応に、またくすくすと笑って。
そうしながら、歩いていく。
まだ、雪は残っていたけれど。
泥で、汚くなってしまっていて。
綺麗とは…言い難くて。
『何だよそれ!?』
そんなことを考えていれば。
向こうからは非難。
「何って?」
『だから! 何でオレが?』
「デザイナーとしては、俺はまだまだだけど。でも、おまえの持ってるものは、いいと思う」
『………』
「だから、支えてもらえれば、助かる」
『…それはいいんですけど。っていうか、嬉しいですけど。だからって何で、オレが記者会見に?』
「………」
『葉月さん?』
「逃げないように?」
理由なんか、実はなくて。
だから必死に考えて、掠めた言葉を、口にしてみた。
ミノリがいれば、俺はあまり、緊張しないですむかもしれない。
そんな、安易で。
曖昧な理由だったから。
届けることはできなくて。
けれど。
『確かにオレ。雲隠れすんの、得意だけど』
なんて言葉が、耳に飛び込んできて。
「ミノリ?」
『美弥に…いっつも叱られてるしなー。っていうか、楽しければそれでいいんだけど、オレ』
「……」
『ま、いっか。これも経験だし。楽しいかもしんないし』
いいっすよー。
笑みでの返事にほっとして。
それから、一時に、と届けた。
『わっかりましたー。できるだけ遅れないように行きます!』
その言葉を聞いて、通話を切る。
大丈夫。
これだけ、逃げ道を封じておけば。
彼女は必ず、首を縦に振ってくれる。
やってあげる、なんて。
言ってくれるはず。
考えて。
その光景を、思い浮かべて。
俺は一人で、歩きながら。
くすくすと笑っていた。

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