今 この時が
いつまでも続けばいいと
そう願ったのは きっと
初めてのこと

明日が
いつまでも来なければいいと
そう思ったのは
初めてのこと




Truth 〜 reputalion 〜





気絶するように、眠りへ落ちた、彼女の顔を見続けて。
隣りで、見続けて。
それだけじゃ足りずに、抱き締めた。
背中に手を回して。
顔を胸に押し当てて。
そうできることが、嬉しくて。
そうすることが、許されているということが、嬉しくて。
それを、し続けていたのだけれど。
壁の向こうから響いてきた声に、俺は眉根を寄せて。
閉ざしていた瞼を上げた。
片手を、彼女から離して
身体を反転させて。
ベッドのそば。
サイドテーブルに置かれている時計を見れば。
七時を過ぎた場所を、その二つの針は、差していた。
また、声が響いて。
昨日のことを、思い出して。
俺はゆっくりと、身体を起こす。
彼女から離れるのは、少し、嫌だとは思ったけれど。
許してもらわなければならない相手が、まだこの家の中には、いたから。
彼女を起こさないように気をつけて。
ベッドから、降りる。
服を集めて、とりあえず、下だけを身に付けて。
その部屋から出た。
けれど、リビングにも、キッチンにも、姫の姿はなくて。
月宮の部屋を覗けば。
ベッドの上で、丸くなっているところを、見つけられた。
俺の視線に、一瞥を投げて。
姫は大きく、あくびを零す。
…つまり。
それが意味するのは。
夕飯を用意しておけと。
そういう、こと。
たぶん、何がいいかと聞いたとしても。
昨日の彼女のようには、答えてもらえないだろう。
だから。
俺は踵を返して。
昨日と今日の朝。
彼女が開けた棚の扉に、手をかけた。
姫が何を食べたか。
思い出して。
べつのものを、手にする。
扉を閉めて。
皿を用意して。
ふたを開けて、その上に、中身を入れた。
フォークで崩して、こたつのそばへと、置いておく。
それから、部屋を見渡して。
小さく、息を吐き出した。
彼女は、家で仕事をしているから。
一人の時間が、多い。
姫がそばにいるだろうけれど。
けれど。
姫だって、出かけると彼女は言っていたから。
そうなると、ひとりで家の中にいる。
周りは静かだし。
そうなると、近所付き合いみたいなものも、ほとんど、ないのかもしれない。
でも、今はいい。
月宮が必ず帰ってくる、今は。
月宮と一緒に暮らしている、今は。
けれど、問題は。
月宮がいなくなった、そのあと。
部屋へと戻って、彼女が眠る、そのベッドの端に、腰かける。
伸ばされた手に、指を重ねて。
こんなにも、ひとりを怖がっているのに。
なのに。
彼女は自分から、ひとりになろうとしている。
ふとんをかけ直して。
彼女の前髪を、かきあげて。
こうして、いつだって触れられる距離にいたいと願う。
それはきっと、悪いことではなくて。
むしろ、人として、当然の願いだと思う。
出会えたことに、感謝している。
こうして、想いが受け入れられたことも。
だからあとは。
その気持ちを忘れないことだけ。
だから――。
「ずっと一緒に、いられたらいいのにな」
今、この時みたいに。
ぽつりと呟いて、彼女の額に唇を落とす。
それから、またベッドの中へと潜り込んだ。
けれど、自分だけ、服を身に付けているのが、何だかおかしくて。
結局、脱いで、ベッドの下へと落とす。
彼女を抱き締めて。
その温もりが、愛しくて。
あたたかくて。
俺は瞼を閉じる。
腕の中に、彼女がいる。
胸に、擦り寄ってくれる。
それが何よりも、嬉しくて。
目が覚めても、彼女がそばにいるように。
祈るように、思いながら。
俺の意識も、眠りへと傾いていった。

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