彼女を思うやつらは
たくさんいてけれど彼女は
それに気づいていない ということ
なのかもしれない
Truth 〜 meandering
〜
もう少し、読んでいきたかったけれど。
俺はそこで、ノートを閉じた。
机の上。
置いてあった位置に、それを戻して。
俺はベッドの上で丸くなっている姫に、瞳を向ける。
俺に一瞥を投げてから。
姫はふいっと、顔を逸らして。
また、瞳を閉じたようだった。
それに、失笑をこぼして。
俺は部屋を出る。
そのまま、真っ直ぐに、彼女の部屋へと入って。
扉を閉めた。
彼女は変わらず、丸くなって眠っていて。
俺は軽く、端に腰かける。
前髪をかき上げて。
手を、取れば。
やはりそれは、きゅっと握られた。
けれどそれは、彼女の方へ、引き寄せられることはなくて。
そこに、あり続けるだけで。
「玲」
逆の手で、頬に触れる。
伝染ったあたたかさに、なぜか、ほっとした。
ただ。
「………」
触れたなら、触れた分だけ。
もっとと、欲求が膨らむのは、仕方のないことかも、しれない。
考えて。
眠っているのだし…なんて、思ってしまえば。
彼女の横へと、俺は身体を、横たわらせた。
それでも、遠慮がちに。
ゆっくりと、手を伸ばす。
何度、望んだだろう?
こうすることを、夢見ただろう?
彼女の髪を梳いて。
少しだけ、身体を彼女の方へと、近づける。
繋がっていたままの手を、俺の胸に当てれば。
鼓動は、早くはなくて。
むしろ、穏やかで。
けれど。
「っ!」
不意に、俺の方へと伸びてきた手には、驚いた。
俺の服を、きゅっと握って。
胸へと、擦り寄ってくる。
そんな、彼女の行動に、俺は固まっていたのだけれど。
それでも。
彼女の背中に、手を回してしまえば。
楽になった。
抱き締めるというより、包み込む。
その言葉の方が合っているような。
本当に、軽く、彼女のことを抱き締めて。
ゆっくりとでも、彼女の背が、真っ直ぐになっていくのが、嬉しかった。
それから、ふと気づいて。
彼女の髪を束ねているゴムに、手をかける。
寝るのにじゃまじゃないか、と思ったから。
力を込めて、引っ張れば。
それはするりと、抜け落ちて。
俺の手に収まった。
それと同時に、束ねられていた髪は、音を立てて、シーツの上に、落ちていく。
赤いゴムをどうするか考えて。
何となく。
上へと、あげた。
思えば、これに触れたのは初めてで。
彼女が髪を下ろした姿は、幾度か見ているのに。
触れたのは、初めてで。
考えながら、手を開けば。
当然のように、それは俺の顔へと、落ちてくる。
拾い上げて、それを手近な場所に置いて。
俺はまた、彼女の背に、手を回した。
頭を撫でて。
今度は強く、抱き締める。
彼女と一緒に眠ったのも、幾度かあった。
思い出して、ふっと、笑みを浮かべる。
それは、高校の時で。
彼女が寝不足の時は、俺も付き合って。
空き教室で、二人で座り込んで。
その時も、彼女は俺の腕に、自分の腕を絡めてた。
肩に頭を置いて。
俺に寄りかかるようにして。
眠っていた。
俺が先に寝てる時は。
それを、彼女が見つけた時は。
手荒く、起こしてくれるのに。
一緒に眠った時は、彼女が先に起きても、俺が自然に起きるまで、待っててくれたのに。
思い出して、ひとりで笑みを浮かべて。
彼女の髪に、指を潜らせる。
彼女の寝息は、規則的で。
穏やかで。
表情も、穏やかで。
それが本当に、嬉しかった。
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