一つのことに向かっているのだと
そう 信じたかったべつの結末は
望まないから
できることはすべて
やるから
たった一つ
俺が望む 結末へ
Truth 〜 gravitation
〜
「あ」
音楽がわずかに流れ出して。
その瞬間に上がった声に。
俺は眉根を寄せて、振り返る。
けれど、彼女が見ているのは、月宮の部屋の、ドアで。
座ることもせずに、見続けていて。
俺はどうしようかと、考えていれば。
彼女の肩の上からの視線に、座ることを余儀なくされて。
ゆっくりと腰かければ、その音楽は、変なところで途切れた。
携帯だというのは、その直後に、彼女の携帯が音楽を奏で出してから。
こたつの上に放ったままだったそれを、彼女が手に取って。
じっと見続けていたから、それは疑問だったのだけれど。
音楽が流れ出して。
彼女の携帯が、光を発したから。
「はい、もしもし? 光太さん?」
……コウタ?
名前に、彼女から聞いたことを、必死に思い出して。
そして、月宮関連のものだったと、思い出せた。
その間に、彼女は持っていたカップを、落ち着かせる。
「まだ寝てます。………。今日の予定ですか?
って言うより、待ち合わせの時間?」
ああ、そう言えば出かけるとか言ってたな。
立ったまま、電話し続ける彼女を見上げながら、考える。
彼女は俺に、視線を向けてはくれなくて。
あの蒼い瞳を、向けてはくれなくて。
代わりに俺に注がれ続けるのは。
姫の鋭い、金色の瞳だけ。
目を細めて、睨むように見続けていれば。
「九時…ですか?」
そう、彼女が言葉を綴った。
「わかりました。それじゃ」
通話を終えたらしく、彼女は耳から携帯を離して。
それでも、その携帯を開いたまま。
じっと見続けたままで。
姫もつられるようにして、そこへと視線を動かしてた。
「九時…ってことは、そろそろ起こさないとマズイな……」
そうなのか?
思いながら、また、月宮のドアへと、瞳を向けた彼女を見る。
わずかに、うーんなんて唸り出して。
それからすぐに、肩の上へと、視線の先を変える。
にこっと笑った彼女は、どこか…企み顔。
「ヒーメ」
「にゃ?」
「頼んでいい? また今日も」
「にゃー」
また? 今日も?
考えて、眉間に皺を刻む。
その間に、彼女は姫に頬を擦り寄せて。
それから、月宮の部屋の前まで歩いていった。
ドアの前。
彼女の部屋の前にも置いてあるような棚に、向き直って。
それを合図に、肩の上から、姫は降りる。
しなやかなその行動に、慣れてるな、なんて、ぼんやりと思えば。
それでは飽き足らずに、床の上に、降り立った。
「それじゃ、よろしくね」
「にゃー」
………。
確かに、猫と会話できるっていうのは、彼女の特技ではあるかもしれない。
けれど、猫が好きと言うだけで、普通はあそこまで、気持ちは通じないだろうから。
言ってしまえば、変。
頬杖を突いて、視線を逸らせば。
背中には、ドアの開けた音と、閉める音が連続して、ぶつかって。
それから、足音。
その音を追いかけて、振り返れば。
彼女が足早に、冷蔵庫の前へと、歩を進めていて。
中から牛乳を取り出して、こたつへと戻ってくる。
その間。
月宮の部屋からは、大きな物音と、悲鳴交じりの声。
「どうする? 先、食べる?」
座りながら、彼女は聞いてきて。
俺はちらと、未だに物音が響き続けている部屋のドアを、瞳に映した。
「いいのか?」
「平気」
即答。
それに、やっぱり俺は、どうすればいいのか、わからなくて。
「大丈夫だよ。姫が起こしに行ってるだけだから」
「………」
「しっぽでくすぐってみたり、猫パンチ、かましてみたり。ダメなら、最後の手段」
「…?」
「顔の上に、乗る」
「………」
「さすがに起きるでしょ? そうすれば」
つまり。
それだけやらないと起きないということ。
考えていれば。
彼女は早々に手を合わせて。
「いただきます」
と、発してた。
直後に、声も物音も消える。
気になって、また、ちらと振り返って。
「……いいのか?」
そう聞けば。
「いいの。二度寝しちゃったって、同じことが待ってるんだから」
という、言葉。
それに、二度寝、よくするのか…、なんて、考えてた。
俺も、よくする方だけれど。
大切だと思ったことには、できるだけ、しないようにと努めてはいるから。
その部分は、違うか。
そう、思ってた。
彼女は食事を進めはじめていて。
俺も、はしを持ってから、手を合わせる。
そうすれば、彼女はほっとしたように、手を止めて。
「葉月くんて、今もシリアル?」
そう、さっきまでとは違う、穏やかな声で、話しかけてきた。
さっきはそう。
どこか、怒った風だったから。
とにかくそれに、肯定の言葉で答えれば。
「よく飽きないね。そして、よく持つね。僕も一回やったことあったけど、すぐにおなか減っちゃった」
「そうか」
「うん。あとさ、雑誌で読んだこと、あったんだけど」
「何だ?」
「夜はお風呂、朝はシャワー…じゃなかったの?」
「………」
「遠慮してる?」
「……少し」
「しなくていいよ。らしくない」
言って、彼女はパンを千切って、口へと運んだけれど。
遠慮は――するだろう?
俺は視線を逸らして、そう思ってた。
思い――つつ、オムレツを口へと運んで。
「………」
「何? 何か言いたそう」
「………」
「何ー?」
「…味がない」
言えば、彼女は一度、びっくりして。
「あー。だって、塩こしょうしかしてないもん」
なんて、答えをくれた。
そのあと、彼女は自分のにケチャップをかけて。
「味はあとで、自分好みにどうぞって、思って」
「……おまえな」
「だって、君の好み聞いたことなかったからさぁ。麻衣も僕も、甘いの大好きだけど」
「……」
「高校の時と、味覚変わってるかもしれないじゃん!」
拳を握って力説して。
その姿に、呆れながらも、笑った。
それから、食事を続けて。
二人で、続けて。
月宮が出てくるまでの間。
俺は彼女と二人で、笑ってた。
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