目の前にあるものに
理由ができた

自分がすることに
自信が持てるようになった

それでも
俺の周りにあるものは
どうでもいいものばかりだった




Truth 〜 rubbish 〜





今まで、来る者拒まず、去る者追わず――的だった、女遊びを。
俺はピタッとやめていた。
理由を問うやつもいたし。
未だに、連絡を取りつけようとするやつもいた。
けれど、そのすべてに口を閉ざして。
俺は毎日が早く過ぎることだけを、願っていた。
早く、一ヶ月が経って。
諸岡さんから、連絡が入ればいい。
今回がだめでも、次があるかもしれない。
なかったとしても、理解者はいる。
そればかりを考えて。
そんなことばかりを、考えて。
それでも、ふとした瞬間には、デザインをあれこれと考えていたりもして。
見るものすべてが、新鮮に映ったからかもしれない。
毎日、見てきたものだったのに。
たぶんだけれど。
これがそうなのかもしれない、とか。
考えた。
俺に、足りなかったもの。
生きる――理由。
そんなもののような気が…してた。

俺がモデルを続けてるのは。
ひとえに、彼女の言葉のせいで。
卒業式のあと。
彼女の姿を見つけた教会で、彼女が発した、言葉のせいで。
あれはきっと、彼女の本心だと、信じているから。
彼女の、本当のわがままなのだと、俺は…信じているから。
だから俺は、今の立場を、守り続けていた。
彼女が今でも、街中で俺の姿を見ているのかは、わからないけれど。
もし、俺の姿を見て。
笑みを零してくれているなら。
それを考えると、辞めるに辞められなかった。
けれど、そのおかげで、今の俺があるのだから。
感謝すべきことかもしれなくて。
「使えるものは、全部使う……か」
ぽつりと呟いて、いすに腰かけ直す。
目の前の、鏡に映った俺は。
彼女と道を違えてから進んだ道のせいで、また少し…変わっていた。
高校の、あの日から。
あの頃は、彼女と一緒にいたから。
彼女の見解を、押し付けられていたせいもあって。
周りのものを、今とは違うように見ていた。
けれど今は。
彼女と再会する前のように、戻って。
それでも少し、自分だけで前へと進めたのかは、わからないけれど。
彼女が言ったのとは違うように。
前までの俺が感じていたのとは違うように、見ることができていて。
これが成長するってことなのかもしれないとか、わずかながらに、思っていた。
少し前まで、彼女以外のものは、意味がないとばかり、考えていたのに。
思って……いたのに。
手近な場所に放っていた、車のキーを手にして、いすから腰を上げる。
今日の仕事は、すべて終わったはずだから。
マネージャーも、これで終わりだと、言っていたし。
何も、言いには来ないから。
急な仕事も、入らなかったんだろう。
考えながら、控え室を出る。
廊下で擦れ違うスタッフに、頭を下げて。
言い寄ってくるやつらを、何も言わずに、振り切って。
ビルを抜けて、車へ。
けれどそこで、足は止まる。
俺の車の、ワイパー。
そこに挟まれていたものに、俺は眉根を寄せた。
『連絡ちょうだい』
それだけ書かれた紙。
字に見覚えはあったけれど。
表情を変えずに、ぐしゃぐしゃに丸めて。
駐車場に備え付けてあるごみ箱へと放る。
そうしてから、キーを挿し込んで。
俺はそこから、逃げるように、エンジンをかけた。
誰が悪いのかと言ったら、俺でしかなくて。
すべてを彼女のせいにして。
彼女に押し付けて、逃げてもいいのかもしれないけれど。
けれどやっぱり。
こんな状況に、自分を追い込んだのは、俺自身だから。
誰も責めることはできなくて。
変える力を持つのは、俺自身。
生きることに。
目の前のことに、全力で行こうと決めたのは、つい最近。
評価してくれる人がいて。
その人が、多くの人にと願うなら。
俺も過去ばかりではなくて。
前を向かなくてはならないのだと。
今更ながらに気づいた。
けれど現状は。
ひとりでは前に、行けなくて。
だからと言って。
一緒に前へと進んでほしいやつも、今の俺の、そばにはいなくて。
結局、一人きりなのだと。
その答えに、行き着いてしまう。
俺を変えるのは、俺だけ。
今は…俺だけ。
途中で、海へと寄って。
高校の時に、時々見た景色を見たいと、車を降りた。
彼女は、今、どこに住んでいるかなんて…わからないけれど。
それでも。
この光の中ではなくても。
どこかの、同じような光の中に、彼女はいるのだと、信じて。
俺は車に寄りかかりながら。
濃くなる夜の気配を、感じていた。

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