彼女のことは 大切で

でも それは
友達としてだと ずっと思ってた

誰にも渡さない
そう思ってはいても

俺のだ
そう…考えてはいても

友達だと 思ってた




Truth 〜 intention 〜





「コクられた」
そう、彼女が言ったのは、高校二年の、冬のこと。
俺が珍しく、風邪をひいて。
朝、いつもよりも、少し遅く、家を出た日。
教室に着いて、ほっと息を吐いて。
用意をして。
それから少しして、教室にやってきた彼女は。
少し、疲れたような表情をしてた。
まだ、一日ははじまったばかりだったのに。
それでも、俺に、何も言わずに。
遅れた理由を、聞いてきた。
彼女が疲れてる理由は、わかってた。
だから、文句を言われても、仕方なかったのに。
彼女はきっと、言いたかっただろうと、思うのに。
彼女は何も言わずに、俺のことを心配してくれた。
必ずと言っていいほど、毎朝、登校途中に会っていたから。
そして、彼女がそれを理由にして、あいつから逃げてきてたことも、知っていたから。
俺は罪悪感で、いっぱいで。
でも彼女は、笑みを浮かべて、元気だと言い切った。
甘えたがりで、子供。
言うことは合っていたけれど。
でも何だか、おかしくて。
彼女の考え方は、おかしくて。
変な『友達』。
それが俺の中の、彼女だった。
隣りにいれば、必ず、腕を絡めてきて。
出かける時の、待ち合わせ場所では。
俺の姿を見つけると、大きく手を振って、笑みを零してた。
嫌なことや不満があると、頬を膨らませて。
俺にそれを、愚痴のように零してた。
言い方がおかしくて。
変で。
笑ってた。
それがなくなるのが、嫌で。
そのあたたかさがなくなるのが、嫌で。
仕方が、なくて。
でも彼女は、『友達』だった。
だから。
こんなやつを好きだと思うやつもいるんだな、とか。
本気で…思ってた。

「好きなんです」
そう言われたのは、高校の時、知らないやつに。
先輩とか、同学年とか、後輩とか。
そのぐらいは、見ればわかったけど。
たまに言われては、そんな気に、なれなくて。
断り続けてた。
彼女がいるから。
女はそばに、いなくていい。
彼女だけでいい。
ほかは…いらない。
そんな風に。
でも、それを彼女に知られた時。
言い訳に、困ってた。
見られたくなかったのかもしれない。
一番。
彼女には。
だから、知られた時に、困ったのかもしれない。
驚きよりも、先に。
どうしようと。
どう、言い訳しよう? と。
考えていたのかもしれない。
振った理由を問うような、そんな言葉に。
おまえがいるから、なんて言えなくて。
「……タイプじゃない」
そう、うそを吐いた。
視線を外して。
じっと見上げる瞳から、逃げて。
なのに。
「葉月くんだって、ずっとそばにいるわけじゃないのにね?」
「葉月くんだって、いつかは。可愛い恋人作って、離れていっちゃうのにね?」
落とされた言葉に、俺は何も言えなくて。
どうすることも、できなくて。
視線を伏せて。
時々、蹲る彼女の姿を映しながら。
逆もありえるんだと。
ぼんやりと、考えてた。
彼女は、ずっとそばにいるわけじゃない。
彼女だって、いつかは。
彼女が望んでいる、『俺みたいな彼氏』を作って。
離れていくんだろう。
そう考えてた。
今は、べったりではないにしろ。
周りをうろうろして。
触れて。
あたたかさを届けてくれてはいるけれど。
いつかは――なくなってしまう。
それが、嫌だと思った。
いつまでも、友達でいてはくれない。
それをはばむものが、男女というそれなら。
どうしようもないことぐらい、わかってる。
彼女は、できた恋人に、遠慮はするけれど。
それでも、俺にも会ってくれるだろう。
友達である、俺のことも、大事だから。
そうして、自滅するように誤解されて。
傷ついて。
涙を流すのは、目に見えて。
だから俺から。
俺が…彼女から離れることを、選ぶのかもしれない。
そうなったら。
彼女は悲しむかもしれないけれど。
すぐに、仕方のないことだと、受け止めるのかもしれない。
そう――考えていることも、嫌だった。

『友達の彼女』よりも。
『彼女』自身の方が大事なんだと気づいたのは。
それから、少しして。
『俺みたいな彼氏』がほしいと言った、彼女に。
小さな怒りを感じたのも。
離れてほしくないと、思っていたのも。
無理矢理のように、『友達』だと考え続けていたから。
『友達だから』と、変に拘っていたから。
彼女は、彼女で。
『友達』という、それは。
あとに付くもの。
彼女自身をどう思うか。
それを考えたなら。
彼女は友達、だなんて。
すぐには言えなかった。
彼女は甘えたがりで。
本心をあまり、曝け出さなくて。
だから、放っておけなくて。
ひとりに、しておきたく、なくて。
そう、思ってはいても。
結局、俺が……そばにいたかっただけ。
あのあたたかさを、手放したく、なかっただけ。
ほかの男の話題なんか、出してほしくなかったのは。
そっちに行くから、俺から離れていくのか、と。
不安で、仕方なくなっていたから。
ひとりにされることよりも。
彼女に去られることが、一番、怖かった。
繋ぎ止めるために、どうすればいいかを、考えて。
そばにいてほしくて、どうしようもなくて。
無理矢理口づけて。
想いを、ぶつけて。
――失敗して。
言葉で届けようとしたのに、彼女がそれを、許してはくれなかった。
俺はまた、繰り返すのかもしれない。
考えて、息を吐く。
許されなくても。
それでも。
今度は必ず、届けると、誓っているから。
今度は何かが、変わる。
きっと。
考えて、信じて。
扉の開くその音を、聞いた。

NEXT

BACK

RETURN