幸せって
自分が素直になるところから
はじまるんだね初めて知った
そんなこと
素直な心
わたしは…取り戻すよ
あなたに手伝ってもらいながら
自分でも
探してみる
綺麗な心の手に入れ方
〜 永続 〜
それから。
わたしの周りは慌ただしくなった。
麻衣の方は、六月に結婚式をやることに決まったって大はしゃぎで。
ジューンブライド……って、そんなに幸せになりたいの?
って聞いたら。
当たり前って返された。
花束はちゃんと、玲の方に投げるからねって。
約束もしてくれた。
そんな麻衣に、わたしは苦笑する。
ありがとうって、とりあえず言ったけど。
何かやっぱり、実感って湧かない。
それで、教会知らないかって言われて。
首を振った。
一つ知っているけれど。
あそこは…森の中にあるし、はば学の敷地内だし。
何より、秘密にしておきたいって言うのがあったから。
わたしは教えようとは思わなかった。
それから、わたしの方。
まず、HP。
台本はOKもらえたから。
きちんと収録して、更新を友達に任せた。
彼とのことを話したら、よかったねって笑ってくれた。
王子さまは戻ってくるんだねって。
何か、おとぎばなしみたいだねって言って、笑ってくれた。
そして、CM。
わたしは、彼と相談しながら、CMの脚本を書き上げた。
全体の流れは、事前にあったんだけど。
わたしが納得出来なくて。
結局、わたしが書いた。
彼を使ったものと。
アクセサリーを重点に置いたものと。
二通り。
彼を使った方は、彼のセリフを入れることで、大丈夫だったんだけど。
問題は、二つ目で。
結局やっちゃった。
ナレーション。
全部自己流なんですけどー、なんて泣き付いても。
彼はわたしを甘やかしてはくれなくて。
半ば自棄になりながら、男役で付けてみたりして。
そうしたら、スタッフの皆さん、絶句してた。
これでもう一パターン、できますよね?
って切り返したら、全員、慌てたように頷いて。
全部で三パターン。
それはもう、流されていて。
最初は反応にドキドキしてたわたしだったけど。
かなり好評で。
作家としても…なぜか、原稿依頼が増えてきちゃってたりする。
諸岡さんが、今ではわたしの担当やってくださってて。
編集長自ら? って思ってたら。
AKIRAちゃんの面倒は、僕が見るって決めてたから。
って、笑ってた。
そして、プライベートの方。
「月宮が出て行ったら、どうするんだ?」
仕事が一段落したんで、今日は麻衣の許しを得て、彼の家に泊まりに来てたりして。
彼が大学進学してから…少しして。
彼は引越したって雑誌に書いてあった。
だからここは、わたしが踏み入れたことのない、領域だったんだけど。
高校時代に、何度か行った彼の部屋の様子に似ていて。
わたしはほっとしてた。
とりあえず、仕事の話したり、他愛無いことを話したり。
そんな風に時間は進んで。
今は夜。
少し遅いかもしれないけれど、夕飯の支度をしようってことになって。
台所に二人で立ちながら、会話する。
「前にも言った。一人で暮らす」
「………」
「姫もいるし。でも、姫…機嫌悪いんだよねー、ずっと」
姫はもう、忙しくなったわたしにかまってもらうことを諦めたらしい。
パソコンに向かっている間は、膝の上に勝手に乗るようになったけど。
姫の方から、わたしに遊んでもらおうとは思わなくなった。
……ごめんなさい。
何度も言ったけど。
結局は、微妙な感じ。
「今は麻衣にばっかり甘えてて、何か悔しいんだよねー」
「…そうか」
「それどころか、光太さんが来ると、光太さんのそばから離れないんだよ?
どうして? って思わない?」
「べつに」
「…もう。姫を最初に口説いたのは僕なのにさー」
「……禁止」
後ろから抱き締められて、驚く。
固まる。
「な、何が?」
「それ」
「…『僕』?」
「ああ」
耳にキスされて、反応しちゃう自分を叱咤して。
ペシッと彼の額を、裏手で叩く。
「お鍋吹いちゃうから、ダメです」
「……止めればいいだろ?」
「夕飯は?」
「終わってから」
「却下!」
早く離れて。
言えば、彼はすぐに離れてくれた。
本気じゃなかったって、とこかな?
何にせよ、目の前のことはきちんと終わらせたい。
「考えてみれば、麻衣との生活もあと少しかー。結局、料理しなかったな、あいつ」
今からでもやらせようかな?
零しながら、材料切って。
鍋を覗き込んでる彼に渡す。
「六月か」
「そう。わたしね、雨の中の花嫁さんって見てみたいな」
「…?」
「銀の糸が降り注ぐ中、純白のドレスを着た女性がいるの。綺麗だと思うんだけど…ダメかな?」
「風邪ひくな」
「……そうかも」
ため息。
そっか。寒いか。
麻衣に風邪をひかせるわけにはいかないな、やっぱり。
「で?」
「で、って何?」
「おまえは?」
「だから、一人で……」
「ここに来る気は?」
「………」
止まる。
固まる。
それが本当に聞きたいこと?
「来る気なくても、俺が行くけど」
「ちょっ、待ってよ!」
「待たない」
「選択肢はないわけ?」
「やった。こっちかあっち」
「違う! 一人っていう選択肢」
「ない。俺の家か、おまえの家。それだけ」
脱力。
本気?
……だとは思うから、聞かないけど。
彼は嬉しそうに笑う。
笑いながら、頃合いを見て、鍋に材料を入れていく。
「姫は?」
「月宮に引き取ってもらう」
「理由は?」
「おまえを取られるから」
「……相手、猫だよ?」
「それでも」
何それ?
今日だって、急に電話してきて。
これから迎えに行くって言われて、焦って。
支度してたら、麻衣に小言言われて。
彼が来た時も、言われてて。
で…彼は。
麻衣とちょっと衝突してた。
何なの?
全部ダメって、こと?
眉根を寄せて、彼を見る。
そんなに?
「言っていい?」
「何だ?」
「…独占欲、強すぎ」
「……べつにいい」
「子供」
「何とでも」
「勝手」
「…またか」
「わがまま」
「それで?」
「いじわる」
「知ってる」
「強情」
「あとは?」
「………」
思い浮かばなくて、黙る。
いや、本当は――あと一つ、あるんだけど。
それは言わずに置いておきたいから。
あと…あとは……。
「玲?」
少し俯いて、考えてたら。
その顔を覗き込まれた。
目の前に、彼の綺麗な顔がある。
わたしの指には、彼からもらった、クローバーのリング。
本物は…まだ待ってろって言われて。
わたしは催促もせずに待ってるんだけど。
そう、あとは。
…あとは。
「……好き」
「………」
どちらともなく、唇が重なって。
耳には、時計が時を刻む音と。
コンロの火が燃える音しか入らなくなる。
離れて。
視線が…絡まって。
「答えは?」
「……考えとく」
「わかった」
ポンッて頭に手が乗って。
その暖かさに笑みが零れた。
わたしがいていい場所は、ここにあって。
わたしは頑張って、心に色を載せる。
彼の色。
彼の綺麗な色。
それだけを…乗せていく。
綺麗な心。
手に入れられるように。
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