『正義』と『悪』は
表裏一体なのだと
俺は思う自分が『正義』だと思えば
それと逆のことをやっている相手は
全部 『悪』になるから
みんな 自分のために
自分の『正義』のために
自分の『正義』を
正当化するために
自分から見て
『悪』の位置に立ってるやつらを
傷つけて いくんだろ?
だったら
誰も正しくないし
誰もが正しいのだと
俺は思う
そう 高校の時
彼女に言ったことがあって
彼女もそれには
大きく頷いてくれた
Bridge 〜 平素 〜
少し早めの夕飯を終えて。
それからずっと、ソファにもたれて、彼女の腰に、手を回して。
二人で、テレビに瞳を向けていた。
彼女は俺の肩に、ずっと寄りかかっていて。
そんな彼女の頭に、わずかに俺も、頭を預けてる。
電気を点けずにいたから、真っ暗な中。
離れる気には、ならなくて。
だから、電気を点けようと思わなかった。
そうして、何時間も一つの場所に居続けて。
きっと今は。
真夜中。
テレビに映っている、海外の昔の映画が、いい証拠で。
英語の成績の悪かった彼女のこと。
きっと、そんなテレビのことは、どうでもよくなってきていると思った。
俺だって、言葉はわかるけれど、どうでもよくなってきていて。
それよりも、気になるのは。
そばにいる、存在の方で。
わからないように、薄く笑みを浮かべてから。
俺は身体を起こした。
彼女の頭は、俺の肩から外れて、ソファへと落ちて。
それでも、顔を覗き込めば。
突然のことに、彼女は驚いて、目を丸くする。
キスをして。
その甘さに、離れたくはなかったけれど。
すぐ離れれば、彼女は眉根を寄せて。
そのあとで、俺を睨んでた。
「どうした?」
微笑を浮かべて、問えば。
彼女は小さく、頬を膨らませる。
「…言わない」
「どうして?」
「言いたくないから」
視線を注ぎ続ければ、彼女からはキスが送られて。
きゅっと手が握られた。
それで、物足りないのだという、それは。
俺にもわかったけれど。
何も言わずに、笑っておく。
彼女の瞳は。
表情は。
一生懸命に訴えてくるけれど。
俺は俺で。
口で言わなければわからないだろ?
なんて。
そんなことを、彼女に視線で届けてた。
ソファへと、背を預け直せば。
彼女は膝立ちをして、俺の前まで、移動してきて。
開いていた、その足の間で、正座をする。
身体がくっつくかくっつかないかぐらいの位置でのそれを、俺は見続けていたのだけれど。
表情を変えずに、彼女も俺を見た。
彼女がしたいことはわかっている。
彼女が、俺にしてほしいと思っていることも、わかっている。
だから、考えることもなく。
俺は一方の足を立てる。
と、彼女の頬は、ますます膨れた。
「やっぱり珪って意地悪…」
呟かれて。
口付けられて。
すぐに離されなかったそれに、俺は彼女の腰を抱く。
それに離れていったあと、彼女は安堵したような表情を見せて、正座を崩した。
唯一動く、右腕が、俺の首へと回されて。
立てた膝へと、彼女は背を寄りかからせる。
ほんの少し、離れてしまったことが嫌で。
抱き締めたいのもあって。
俺は彼女の身体を、抱き寄せた。
それでも彼女は、まだ、言ってはくれなくて。
俺も、言わなかったけれど。
蒼い瞳を覗き込んで、笑みを零す。
と、また彼女は、頬を膨らませて。
可愛いと、本気で思った。
頬にキスを降らせたかったけれど。
それを押し込めて、彼女の腰を撫で上げる。
それでも彼女は、言わないまま。
「強情」
「どっちが」
言えば、言い返されて。
俺は眉根を寄せて、彼女を見た。
同じような表情を浮かべた彼女と、顔を突き合わせて。
それから同時に、吹き出して笑う。
くすくすと笑って、キスをしあって。
ここに彼女がいることを確かめるように、抱き締めるその腕に、力を込めた。
同じ瞬間に、首へと回っていた腕に、力が込められたのがわかって。
噛み付くように、キスをする。
口が開けられたのに、舌を中へと滑り込ませて。
口内を犯して。
変わっていないその甘さを、充分に味わってから。
彼女を解放した……のだけれど。
やっぱり、離れがたくて。
舌先で、彼女の唇を舐め上げた。
それに、ビクッと肩を震わせた彼女が愛しくて。
焦点の合っていない、その瞳にさえ、刺撃されて。
俺は耳元へと、唇を寄せる。
「あとは?」
「んっ……」
反応するように、声が上がって。
俺は小さく笑った。
けど。
そうやって、俺が意地悪をすればするほど、彼女の意識は、現実へと戻ってくる。
「玲」
「……言わない」
促せば、はっきりとそう、答えが返って。
俺は笑って、彼女の頬に、唇を押し当てた。
「珪だって、言えばいいのに」
「何を?」
「………」
とぼければ、彼女は小さく、俺を睨んでくる。
それから俯いて。
俺の胸に、擦り寄ってきた。
甘えられることは、嬉しい。
けれど、やっぱり、彼女の素肌に、直に触れたくて。
なのにこうして、押し問答を繰り返してしまっていることに、俺は微笑を零す。
「玲だって言えばいい」
「何を?」
視線が戻って。
俺はふっと笑った。
もう終わり。
その意味を込めて。
「触ってほしいって」
「!」
驚いたあと、彼女の表情は、残念そうなそれへと変わる。
彼女としては、もうちょっと楽しみたかったのかもしれないけれど。
俺はもう、触りたかったし、抱きたくて、仕方がなかったから。
首筋へと、唇を寄せた。
ぴくんっと彼女の身体が震えて。
とりあえず一つ、痕を残す。
腰に回していた手を、上へと移動させて、服を捲って。
その、暖かい肌へと触れた。
額に唇を落として。
離れて。
服の上から、口付ける、その時に。
ちらりと彼女を見れば。
いつ、大きな波が来てもいいように、耐えているようで。
けどまだ、やらない、とか考えて。
俺は一人で、笑う。
じれったそうに身体をくねらせたとしても。
それでも、まだ。
「消えたな、やっぱり」
Tシャツを剥ぎ取った、その時に見えたものに。
俺はそう、零した。
いつ、消えてしまったのかはわからないにしろ。
その間は、彼女は俺のものではなかったのだと。
それを示されたようで。
あったはずの場所を、指で触れる。
「そりゃー、ねぇ……」
曖昧に紡ぎながら、彼女が俺へと、身体を向けてきたのに。
くすぐったいのか…? とも、思ったのだけれど。
たった一つのものを隠そうとしているのだと、すぐに考えが行った。
左腕は、動かないのに。
どこか必死で。
だからこそ、彼女の答えは曖昧なものになっていたのだと、思い直す。
けれど俺は、それをきちんと見ておきたかったから。
それを俺自身の手で、無理矢理、俺の目の前に曝け出すことは可能だけれど。
「どうしてた?」
「何が?」
「性欲の処理」
気になったことを口にすれば。
彼女は固まってしまって。
俺は彼女の左腕を、見ることに成功した。
けれど、気になっていたし。
知りたかったから。
彼女の名を呼んで、答えを促せば。
諦めたように肩を落として、彼女は抵抗せずに、俺の目の前に、それを晒し続けていた。
「…女の子は平気なものなんです」
「そうか」
「そうだよ」
答えを聞いて。
それに、本当か? とも思いながら。
俺は、あの日のことを思い出していた。
一つの線が浮かび上がっている、そこに。
いくつもの横線。
テレビの、移り変わる光を受けて。
それが赤くなっていることは、わかって。
赤い線として、そこに存在していることは、確かで。
俺はゆっくりと、目を細める。
「紗枝と付き合ってたのは、実験みたいなもの…だった」
紡ぎ始めれば、彼女は首を傾げた。
きっと。
何となく、だけれど。
彼女は謝罪を望んでいないような。
そんな気がしていたから。
事実だけを教えておこうと思った。
「実験って……何の?」
「あいつ、おまえにそっくりだったから」
「?」
「昔の、おまえに。『あき』に」
紗枝の姿を思い出して。
小さく、息を吐く。
笑みと、困ったような表情と。
すべてが『あき』と重なったけれど。
『あき』そのものではなかったから。
傷つけてしまった、そのことに。
募るのは、罪悪感だけ。
「けど、考えるのはおまえのことばっかりだった」
「わたし…?」
「今のおまえ」
望んでいなくても、謝りたくて。
俺は目の前のそこに、唇を当てた。
傷口を、舌でなぞって。
吸い上げれば、彼女の眉根は、顰められる。
「…悪い」
「大丈夫……」
急いで、唇を離して。
手さえも離せば。
彼女は痛みを取るように、右手でそこをさすっていた。
それが離された、その時を見逃さずに、俺はその細い身体を抱き締める。
「珪?」
「俺、おまえじゃないとダメなんだな」
それはもう、最初からわかっていたこと。
なのに、それをそのまま、受け入れることはできなかった。
二人でいることに、意味があったのに。
当たり前のことになってしまった、その時に。
俺はそれを、忘れてしまったのかもしれない。
胸に頬が擦り寄せられて。
彼女がゆっくりと、瞼を閉じる。
こんな時間が、何よりも大切だったのだと。
何よりも、安らかな時間だったのだと。
俺は、思い出していて。
「ね? 珪」
「ん?」
「テレビ……」
「…ああ」
彼女の言おうとしていること。
それを理解して、手を伸ばす。
リモコンを取って、電源を消せば。
光と共に、音も消えた。
所有の印を刻む度に、肩に置かれた彼女の手が、力を持つ。
たとえ、いくつ付けたとしても、いつかは消えてしまうから。
消える前にまた、俺は痕を落としていくんだろう、なんて考えつつ。
いくつ目かわからない痕を刻んだところで、その、抗議の声は上がった。
「…まだ?」
「まだ」
「しつこくない?」
身体が捩られて。
肩から下りた手に、わずかに、胸を押し返されて。
俺は小さく、笑みを浮かべた。
先へと進むことを望むなら。
そんな意地の悪いことを思って。
手をそこへとかけて、動かす。
と、それはぱちんと音を立てて、開いた。
瞬間、彼女の胸が露になって。
締め付けられていたのか、小さく揺れていて。
彼女はそれを直視してしまっていたことに、頬をほんのりと染めて。
顔を逸らす。
「赤いぞ、顔」
ブラジャーを取りながら言えば、彼女の顔は、急激に赤くなる。
それに小さく笑って、手を離せば。
音も立てずに、それは床の上へと落ちた。
「変わらないな、おまえ」
「しょうがないでしょ…」
呟かれた言葉に、また笑みを零して。
彼女の胸へと、手を這わせた。
ただ滑らせただけのそれに、反応は薄くて。
下腹部へと、そのまま滑らせていく。
当然、手に当たるのは、彼女が普段穿いているジーパンで。
脱がせるの、結構面倒臭いんだよな。
とは思っても。
彼女がじっと、手の動きを見ていたから。
べつに構わないか、とも思う。
彼女に触れるために必要なことなら。
面倒臭くも何ともないと。
逆に、楽しさまでもが、湧き起こってくるから。
でも彼女は、じっとその手を見てるだけ。
ボタンを外しても、ジッパーを下ろしても。
ただ、片手で脱がそうと手を入れた時には、眉根を寄せていた。
嫌がっていないのは、抵抗を見せてはいないから――明確。
「また…変なことを考えてるのか?」
「変……なのかな? 人間って矛盾の塊だなって思っただけなんだけど」
「どういう脈絡で、そうなるんだ?」
「………っ」
左足だけ抜いて。
右足は面倒になって、最後まで抜こうとは思わなかった。
それでも、触れることはできるから。
そう思って、内股を撫で上げれば。
瞬間、そこは閉じられる。
俺の手は挟まったままで。
無理に動かせば、動いたのかもしれないけれど。
動かさないまま、そこにあって。
小さく、息を吐いた。
「開いて欲しい?」
首に手を回されて、聞かれて。
ちらりと、彼女を見る。
悪いことをしてしまったという自覚があるのか。
彼女は身体を少し、縮こませていて。
「ほしい」
そんな彼女に、短く応えた。
けれどどうせ、開くことはしてくれないだろうから。
実力行使に出る。
薄く、紅潮している胸を吸い上げて。
痕を付けてから、すでに立ち上がっていた中央のそこを、舌先で舐め上げた。
服はきつく、捕まれたけれど。
彼女の意識は、胸へと移動したらしく、足は力を失って。
俺の手は、自由に動くようになる。
それに、口角が持ち上がってしまったのは、仕方がなくて。
俺は下着の上から、彼女の中心へと触れた。
続けていれば、そこは、下着越しにでもわかるほど、濡れてくるけれど。
彼女はぎゅっと、瞼を閉じていて。
全身を緊張させていて。
声を……上げてはくれない。
「声」
「…っや」
わずかに、頭が左右に振られて。
俺は微苦笑を浮かべる。
セックスの時。
彼女はほとんど、声を上げてはくれない。
理由を聞けば、「自分のじゃないみたいだから」とか。
理由もなく、「嫌だから」とか。
そんな風に言っていた。
でも俺は、彼女の声が好きだから、聞きたくて。
そこから手を離して、髪を撫でる。
「玲」
それでも、彼女は瞼を上げてはくれなくて。
ふるふると、頭を横に振るだけで。
仕方なく、俺は下着に手をかけた。
脇から、腰へと、手を滑らせたあとで。
下手に意識があるから、彼女は自分の声を嫌がる。
だったら、それをなくしてしまえばいいと、思ったから。
行為に集中してしまえば。
自分の声なんて、聞こえなくなってしまうだろうから。
下着を取り去って、触れて。
潤っていることを確認してから、指を一本、挿し入れた。
「〜〜〜〜っ!」
久しぶりの感触に、笑みが零れたけれど。
そこは前ほど、柔らかくはなくて。
とりあえず、確認するように、奥まで入れて、ゆっくりと抜く。
彼女はそのことで起こった快感を、外へと逃がすのに必死で。
俺へとしがみついてきた。
「本当にしなかったんだな」
「そう、いった…っ!」
少しずつ広げて、指を増やしていく。
逃がし切れなかったのか、彼女は涙を流していて。
口付ければ、彼女は小さく、吐息を漏らした。
その熱の含まれたものに、手の動きを乱暴にしていって。
少しずつ少しずつ、そうしていって。
彼女の声を、導いて。
「あ…や、ぁっ」
余裕がなくなったのか、彼女の声は発され続ける。
吐息が荒くなって。
俺ももう。
彼女のすべてに煽られ続けて。
これ以上は、耐えられそうになくて。
「玲」
確認を求めるように、名を呼んだ。
引きぬいた指に上がった声を聞きながら。
指に纏わり付いている、彼女の愛液を、舐め取る。
そのあとで、彼女を見れば。
涙で潤んだ瞳で、俺を見てた。
「けい……?」
俺以外の、彼女に触れているものを、すべて取り払って。
彼女の額に張りついていた前髪を上げる。
そこに唇を押し当てて。
そうしてから、彼女を抱き上げた。
膝の上に、向かい合わせに座らせて。
久しぶりなことに、身体がうまく動かないのか、彼女は俺に、しがみつくばかりで。
それはべつにかまわなかったから。
その間に、俺は自身を取り出す。
彼女の頬に、唇を押し当てて。
彼女の膝裏から、腕を通して、彼女の身体を、持ち上げて。
入り口に、俺を充てたのだけれど。
そこは俺を、受け入れてはくれなくて。
つい、眉根を寄せてしまった。
「ご、め……」
「いい。久しぶりだしな」
「ん…」
彼女が息を吐く。
それに合わせて、彼女の中へと、分け入って。
「……っ!」
それでも最後は、我慢ならなくて。
つい一気に、押し進んでしまった。
許しを請うように、彼女の手を取って、指先にキスをして。
薄らと開かれた瞳を見てから、俺は自分のTシャツに、手をかける。
あまり動かないようにと、気をつけたつもりだったのだけれど。
彼女は身震いをし続けていて。
それを床へと置く前に、彼女から俺へと、キスが送られた。
わかっている。
それは、彼女の意思表示。
早くイきたいという――その。
キスに応えながら、彼女の腰を掴めば。
彼女はゆっくりと動き出す。
望むものを手にするために、俺もまた、腰を動かして。
「あきらっ」
深く、深く。
彼女の一番そばへと進んだ、その時。
俺はすべてを、彼女の中へと放っていた。
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