なんて言ったらいいんだろう?

ただね?
時々
本当に時々
君のこと メチャクチャにしちゃいたくなるの

本当に 時々ね




受け入れてくれる場所





家に帰れば、彼はそこにいて。
わたしはむーっと唸る。
寝る場所じゃないって、何回言えば、わかってくれる?
思いながら、バッグを置いて。
わたしはそのそばに屈み込んだ。
ただいまーって、声を掛けたのに。
おかえり、の声はなくて。
代わりに、リビングに足を踏み入れたわたしの耳に入ってきたのは。
規則的な寝息と。
時折漏れる、睦言みたいな、そんな声。
「………」
ソファの端に、手を置いて。
彼の顔をじっと見続ける。
わたしはきっと、悪くない。
ここで寝ていたのが彼じゃなかったら、こんな気持ちは、抱かないもん。
悪いのは彼。
あとは……人の、性。
「んっ…」
小さく声を上げた彼に、わたしの理性は、はっきり言って、もう千切れそうで。
切れて、しまいそうで。
わたしはきゅっと、ソファの端を掴む。
彼は綺麗で、どうしようもなくて。
綺麗だからこそ、色っぽくて。
男の人にこんなこと言うのもどうよ? っていう気はするけど。
そう思うしか、出来なくて。
気が付いたら、彼を真上から見下ろしてた。
息を詰めて。
「………」
無け無しの理性って、こういうことを言うんだろうか?
どうでもいいことを、まだ考えられてるんだから。
でも、無意識にしちゃってる行動は、そんなこと、なくて。
彼に触れたい。
触れたいし、声が聞きたい。
わたしのものだっていう印を、刻んでしまいたい。
外でこんなに無防備にしていても。
してしまっていても。
わたしのものだから触るなって。
そう、他の人たちに示すことの出来る、印。
それを――刻み込んでしまいたい。
前髪をかき上げて。
額に、唇を落とす。
いつだって、触れていたい。
いつだって、わたしのだって、声を上げていたい。
小さくて。
それでも強い、わたしの独占欲。
彼に負けず劣らずの、その心。
彼はきっと、笑って許してくれる。
嬉しいって、言ってくれるだろうけど。
そんな可愛いものじゃない。
わたしはどっか、やっぱりおかしいのかもね。
誰に聞いても、そこまでじゃないって、言われちゃうから。
するすると唇を落として、頬を滑って。
大好きって、そんな想いばっかり、広がっていく。
好き。好き。好き。
何回言っても、足りないぐらい。
何回言っても、それじゃなくて。
もっと違う、いい言葉があるんじゃないかって、思うぐらい。
それぐらい、好き。
その言葉しか、出てこないぐらい。
「好きだよ、珪」
まだ眠っている彼に、キスをして。
彼が来ているTシャツの裾から、手を差し入れる。
触れたいなら、触れればいい。
わたしには、その権利が、彼から与えられているんだから。
起こさないように、気を付けながら。
そろそろと、彼の肌に触れていく。
指先で触れて。
彼の体温に、触れて。
ほっと、息を吐き出す。
それを上へと上げていって。
胸に、手のひら全体で触れて。
彼の鼓動を、確かめた。
早くはない。
いつもと同じ、リズム。
眠りを妨げないように、シャツを捲り上げて。
彼の上半身を露にすることに、成功する。
知ってるから。
彼は周りが煩いと、かなり高い確率で、起きてしまうこと。
でも今は、静か。
音と言えば、彼の寝息と、わたしがしていることで起こる、布擦れぐらい。
肩口に、キスをして。
舌先でチロッて、舐めて。
強く強く、吸い付いて。
痕を残す。
彼が悪いんだから。
仕事で何か不都合があっても、知らない。
ファンデでうまく、消しなさい。
わたしは悪くないもん。
そんなことを考えながら、小さな刺撃を、彼の肌に落としていく。
どれだけ付けても、足りないけど。
わずかに寄せられた眉に、わたしは身体を起こした。
襲ってる?
うん。わたしは彼を襲ってる。
怒られても、聞かないでおこう。
わたしは悪くない。
ベルトに手を掛けて、慎重に緩める。
彼はどんな夢を見てるんだろう?
わたしの夢だったらいいな。
ドキドキしながら、ジッパーを下げて。
さすがに起きるかなーって、思いながら、下着の上から、彼の中心に触れる。
ピクッと、彼の身体が震えて。
少しだけ、笑みを浮かべた。
頭をもたげ始めているそれを取り出して。
手のひらで包んで。
ゆっくりと、上下に扱く。
彼の口が歪んで。
歯を食いしばってるのがわかる。
「珪…?」
手を休めることなく、耳元で囁いて。
前髪を上げて。
キスを落として。
ね?
起きてくれて、いいよ?
戸惑いで揺れる瞳を、わたしに見せて?
その表情を思うだけで、ゾクゾクしちゃうから。
戸惑いの色をたっぷり含んだ声で、わたしの名前を呼んで?
わたしがいかに、君のことを好きなのか、教えてあげるから。
主張している彼からは、先走りの雫が溢れ始めてる。
ね?
ねぇ?
夢の中でも、同じことをしているのは、わたし?
それとも――別の人?
そんなの、許せるはずなんて、ないけど。
指先に、それを絡めて、そのまま、先に刺激を与えていく。
ね?
早く起きて?
じゃないと、本当に。
わたしは君のこと。
食べちゃうよ?
それはそれで……わたしは、いいんだけどさ。
「…ふっ」
吐き出された熱い吐息に、わたしはもう、押さえ切れなくなって。
大好きで、仕方なくて。
手にしていたそれの先を、舌で舐め上げた。
それに、彼はようやく、瞼を上げて。
「あきら…?」
寝起きも手伝った、舌足らずな声で、わたしの名前を、呼んでくれる。
想像したのと、同じ瞳で。
少しだけ上半身を起こしたから。
その瞳で、見下げてくれて。
ソファの背もたれを、ぎゅっと握っているのは、刺激がきっと、強いから。
「言ったよね? わたし」
「あきら?」
「今度寝てたら、襲っちゃうよ? って」
「………」
「ね? 珪」
彼は無言。
そんな彼に、キスをして。
触れるだけのキスを、一度だけして。
わたしは手にし続けてる、彼のそれを、口に含んだ。
片目を瞑った彼は、綺麗。
綺麗だけど、もうすぐ堕ちる。
わたしが堕とす。
『ここ』まで。
「はっ」
口の中で大きくなっていく彼が、嬉しくて。
舌を使って。
ここ…押さえるといいんだっけ?
なんて、思い返しながらやっていたら。
彼の喉が、反り返った。
もうすぐ、もうすぐ。
「あきら、もう…いい……」
「…イヤ」
堕とすの。
その証をもらうの。
それまでは、嫌。
やめて欲しそうに、彼の手は、わたしの髪に、手を入れる。
でもそれに、力はなくて。
それをいいことに、わたしは行為を進めていく。
ピクッと力が込められるのは、感じている時。
わたしのしていることで、感じてくれている時。
欲しいと思うことは、とても人間的だと思う。
だからそれを、抑えることはしない。
彼には。
彼と二人きりの時には。
「くっ」
小さく声を上げて。
息を詰めて。
彼はわたしの口の中に、証を放ってくれる。
熱かったそれは、すぐに冷めてしまわずに、口の中に広がって。
突然のことで、ちょっと混乱しちゃいそうだったけど。
何とか、飲み込んだ。
苦かったけど、彼のだし。
勿体…ないし。
「飲んでるのか…?」
ぐったりと、ソファに沈み込んで、彼は言う。
口を手で拭いながら、顔を上げて。
わたしは彼の顔を、また真上から覗き込む。
息の荒い、その音に、わたしは満足してて。
にっこりと笑みを浮かべた。
「何を?」
「酒」
「素面」
「………」
「挿れていい? 欲しい」
「………」
「ダメ?」
上に乗って。
馬乗りになって。
強請ってみる。
首を傾げれば、彼は微苦笑。
「服、脱いで」
「下だけでいい?」
「……わかった」
彼の上にいながら、脱いでいく。
それを、床の上に落としたら、彼が上半身を起こしてた。
「指、貸して?」
「ん」
唇が落ちてきて、受け止める。
彼のペースになる。
わかってるけど、別によかった。
啄ばまれて。
舌を吸われて。
絡めて。
鼻にかかった声は、いくらでも、外に出ていく。
薄らと瞼を上げれば。
グリーンの瞳と、かち合った。
手が下りていくのが、気配でわかる。
貸してと言ったのは、わたし。
それが、双丘の一方を撫でて。
奥の入り口へと、触れた。
その時ばかりは、力いっぱい、目を瞑って。
「や、ぁ!」
キスを振り切って、そう、声を吐き出してた。
「貸せって言ったのは、おまえ」
「わかって…る。んんっ」
中へと指が入ってくる。
背中に回した手に力を込めて。
彼の肩を、ぎゅっと掴んで。
「大丈夫。濡れてる」
充分。
なんて言いながら、彼は手を動かし続ける。
肩に額を押し付けて。
無意識に、逃げちゃうんだけど。
逃げられるわけもない。
「自分でやるか?」
すっと引かれて。
身体が反応を示して。
それでも、欲しかったから。
重くなり始めてた身体を、どうにか動かした。
腰を浮かせて。
手で、彼のを掴んで。
入り口へと、あてる。
「んっ」
こんなことで感じてなんて、いられないのに。
わかってるのに。
何か今、身体がピリピリしてる気がする。
「玲?」
「へい…き」
腰を落として、挿れて。
「ふぁ…」
「全部入った」
「う、ん…」
ぎゅって、抱き着く。
大好き。
また思う。
そればっかり、思う。
「うごいて、い……?」
「ああ…」
我慢できなくて。
言葉を聞く前に、腰を動かす。
ごめんね? 恥じらいって言葉、知らないかもしれない、わたし。
そんなことを考えながら、彼と堕ちていく。
「すき…、けい」
その最中。
多分そう、呟けたとは、思う。
思うけど。
すぐに頭の中は、真っ白になった。


上機嫌。
そんな感じで、鼻歌まで歌っちゃいながら、わたしはカバーを取ったソファの上で、彼の背中を見続ける。
そんなわたしに気づいて、彼がわたしの方を振り返った。
訝しげな、そんな視線で。
「満足…?」
「うん! すっごい満足」
「………」
「うふふー」
声を漏らして笑って。
わたしは膝を抱える。
彼は息を吐き出して、またお鍋に向き直った。
「付け過ぎだ、痕」
「知らない」
「どうするんだ? 仕事」
「わたしは悪くない」
「………」
そっぽを向いて。
偶然のように、視界の中に入ったテレビのリモコンへと、手を伸ばす。
パチッと付ければ、ニュースで。
何か、どうでもよかったから、すぐに消した。
「これからは、ソファで寝ない」
「嘘だねー。君は絶対、これからも寝る」
「襲われるより、襲う方がいい」
「わたしもその方がいい。何か、楽しかったし」
「………」
「だから、寝てくれていいよ?」
にっこりとした笑みで届けて。
わたしはまた、彼を見る。
好き。
大好き。
そんな言葉でいっぱいになったら、彼にとっては、都合、悪いかもしれないけど。
わたしにとっては、いいことかもしれない、なんて。
そんなことを、考え始めてた。

END

 


戻ってきてくれる場所の別バージョン。
と言うか、続き、と言うか。
どうしても書きたかったので。
書きたくなったので、書いちゃいました。
…ヤバメ? やっぱり。

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