そこは座る場所であって
寝るとこじゃないです

この部屋は
コミュニケーションを取るための部屋であって
寝室は別にあります

…そうやって 何度も言ってるつもりなんだけど

君は全然 聞いてくれてないんだね?

わたしはため息を吐いちゃいます




戻ってきてくれる場所





この光景を見るのも、もう何度目だか。
打ち合わせから帰ってきて早々。
見つけてしまったものに、わたしは盛大に、ため息を吐いてた。
見つけてしまったっていうのは、ちょっと違う。
だって別に、何かを探してたわけじゃないし。
いや、返事がないことには、首を傾げてはいたけどさ。
テーブルまで歩いて、その上に、鞄を置く。
それでも彼は、そこで寝続けてた。
規則正しい寝息。
いつ見ても、どんなに長く見てても、飽きない寝顔。
でもね、ここは寝る場所じゃないんだよ?
疲れてるのは知ってるけど。
寝室に行くぐらい、なんてことないでしょう?
テーブルを退かして。
ソファの上で眠ってしまっている彼のそば。
テーブルを退かしたおかげで出来たスペースへと、わたしは座り込んだ。
「襲っちゃうぞ?」
小さく呟いて、彼の頬に触れる。
暖かさを感じると、ほっと安堵の息が漏れちゃって。
怒ってたはずなんだけどなぁ、なんて考える。
生きてるなら、別にいい。
だから安堵しちゃうのかもしれない。
寝息は静かなものだから。
時々、怖くなったりするんだよ。
物音を立てないように、彼の顔のそばまで、近寄って。
ほんの少しだけ、彼の頬に唇を押し当てた。
出来る事なら、あんまり、無防備なとこを見せないでほしい。
家の中でも、出来るだけ。
外では絶対!
「本当に襲うぞ?」
「やれるものならやってみろ」
「はい?」
上から見下ろそうと腰を上げた瞬間。
そう、答えが返って。
わたしは目を見開いた。
大きな手が、わたしの身体を、上へと持ち上げて。
きちんと立ち上がったと思った時には、すでに彼の膝の上に、座らされてて。
ぎゅっと、彼の腕が、わたしの腰に回る。
頬が擦り寄せられて。
それは、嬉しかったんだけど。
「リビングで寝ないでって、この前も言ったよね? 僕」
「そうだな」
「そうだな、じゃなくて」
彼の身体を押し返して、頬を叩いて、抓って。
それでも、彼は笑顔のまま。
わたしの手を取って。
指先に、キスをくれた。
「外でもそういうことしてるんでしょう?」
「外?」
「誰かにお持ち帰りされても、知らないから…」
俯いて言って。
それから、彼に抱き着けば。
彼は苦笑を零したみたいだった。
「大丈夫。外ではしてないから」
「どうだか」
「家でしか、してない」
「信じられません」
「玲」
「無防備すぎ。珪が攫われちゃっても、助けになんか、行ってやらないんだから」
「それは困る」
「悪いのは君でしょー? 助けに行ってやる義理はないもん」
「好きじゃないのか? 俺のこと」
「好きだけど。それとこれとは別」
「………」
「わたしは突き放すタイプなのですよーだ」
ぎゅっと、力を込めて、彼の背中に手を回す。
それから。
「戻ってきたいなら、戻ってきなさい」
そう、届けた。
わたしのことが必要なら。
必要だと思ってくれるなら。
ここに戻ってくれば、わたしはいるから。
「わかった」
答えてくれたことが、嬉しくて。
ほんの少し離れてから、キスをして。
「でも、今度ここで寝てたら、本当に襲っちゃうからね?」
「べつに…そうしてくれてもいい。俺」
「…あのね……」
「玲になら、かまわない」
紡ぎ出された言葉に、わたしは驚いてたけど。
それじゃ次は、期待に応えてあげよう、なんて。
くすくす笑いながら、思う。
でもちゃんと。
出来ればしないでね?
って、届けて。
彼の、「できればな」っていう言葉を、聞いてた。

END

 

 

どうしてこの二人は、いつもこうなるんでしょうか?
まぁ、裏に行かなかったので、よかったんですけど。

二次創作書きさんにたった10のお題』より、お借りしました。
三つ目は『ソファ』。
考えてすぐに、珪くんのお昼寝場所、なんて思っちゃったのでした。

web拍手に置いてました。

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