ふーん
とか
わたしの感想は その程度だって彼は
『彼』ではないから
exchange 〜 玲 2 〜
彼と優菜ちゃんの会話を見ながら。
ぼんやりと、この人はこういう人、なんていう分析を進めていく。
というか。
ほのぼのだね。
それが正直な感想。
わたしと『彼』の間には、絶対にない空気。
この二人は。
わたしたちとは違う種類の『素直さ』を持ち合わせている。
――っていうか。
優菜ちゃんが、あったかい空気の持ち主なんだろうな。
思って、目を細める。
ここは、if...の世界。
どこがどう、if...なのかといえば。
ここだろう。
腕を組んで。
わたしはわずかに、考える。
わたしは、あの頃と変わってしまったけど。
『彼女』は、変わらなかった。
だから彼も。
幼い頃のままの印象の方が、濃いんだ。
「なるほどね」
呟いて、そこから目を逸らす。
変わらなかった『彼女』がそばにいたから。
彼はこうなった。
変わってしまったわたしが、そばにいたから。
『彼』は、ああなった。
高校時代の、三年間だけだけれど。
それでも、『彼』の心はあんなにも変わった。
周りの人間が持っている色を、『彼』の心に、載せていった結果。
というか。
わたしが、わたしの色を、と言った方が、正しいのか。
こめかみを爪で引っかいて。
わたしは小さく、息を吐く。
『彼』がああなったのは、わたしの所為と言っても、過言じゃないわけね。
考えて。
やっぱり、その責任は取るべきだよなぁ…。
なんて思って。
腕を組んだまま、一つ、頷いてみる。
目の前にいるのは、『彼』と同じ姿形をした人間だけれど。
名前だって、同じだけれど。
わたしの知っている、『彼』じゃない。
わたしが好きだって言える人は。
やっぱり。
あの『彼』だけ。
この、目の前にいる。
この人じゃ、ない。
確信を持って、言い切れたことに、ほっとして。
わたしはディスプレイに向き直る。
そろそろ…来てもいいんじゃないかな?
思っていれば。
『ちょ〜っと、ゴメン』
そう、なっちんの言葉が割り込んだ。
「ごめん」
椅子ごと、彼を退かして。
わたしは文字を打ち込んでいく。
キーボードを操ることは得意です。
どんな格好だとしても、大丈夫です。
仕事で、慣れてますから。
そんなことを、考えつつ。
『何?』
『志穂と守村くん。来たよ』
『ども。じゃ、優菜ちゃん、しばし彼とお別れです。いい?』
『うん。仕方ないし』
『ごめんね(^人^;)』
物音がして、後ろを見れば。
彼が椅子から、腰を上げていて。
ため息と共に、そうしていて。
それを見て、わたしも、小さく微苦笑で息を零す。
高校入学直後。
教室で会った時の、『彼』みたい。
ってことは。
彼は、変わってはいないんだ。
あの時から。
やっぱり。
『田端さん?』
考えていれば。
そう、文字が出てきて。
わたしはディスプレイへ、しっかりと意識を向ける。
そう、今考えるべきことは。
わたしが、向こうに帰ること。
彼に、優菜ちゃんを返すこと。
そして。
「珪に思いっきり、甘えること!」
言いながら、Enterキーを押す。
背中に刺さったのは、彼の鋭い視線で。
でもわたしは、それを気にする余裕なんて、なくて。
だってやっぱり。
『彼』に会いたい。
『守村です。葉月くんから、事情は聞きました』
『私も。にわかには信じられなかったけど、こっちにいる彼女を見て、理解したわ』
『すいません(^^;)』
なっちんの名前で発言してきたのは、守村くんで。
有沢さんは、自分ので、発言してきた。
まぁ、それは。
わからなくもないんだけど。
有沢さんは、花屋さん、経営してるから。
それに、必要なことはパソコンで管理してるって、聞いたこと、あったから。
いつも持ち歩いているとしても、不思議じゃない。
『尽くんにも、参加してもらうわ。彼も機転、効くし』
『了解です』
なぜか。
本当に、なぜか。
有沢さんがこの場にいてくれることが。
心強かったりして。
やっぱり、彼女は麻衣に似てるのかもしれない。
思って。
考えて。
わたしはすっと、背筋を伸ばした。
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