| いなくなったことに
面食らって 代わりに現れたやつの言葉に
また面食らって
俺はどうすればいいのか
それが
わからなくなってた
exchange 〜 yuuna's
珪 〜
パソコンの前に陣取った彼女は。
さっき、何かを打ち込んだと思ったら。
今はじっと、静かにしていて。
「あ、ネットに繋いじゃいました」
見ていたことに気づいたのか、笑って、彼女はそう言って。
それからすぐに、またディスプレイへと向き直った。
けど。
「来た!」
何が?
思いながら、後ろへと回り込んでみる。
見れば、そこには文字が並んでいて。
『きちんと 届いてる
おまえの想い おまえの願い
きちんと 俺には届いてる
だから次は 俺の想い
俺の願い
俺の言葉が おまえに届くといい
同じように 目に見えないものに
乗せるから
うまく 俺の想い
おまえに届いてくれれば
それだけでいい』
そう、書かれていた。
「思いは受け取った。言葉も受け取った。あとは…願いか」
受け取ったけど、今すぐは叶えられません。
言いながら、彼女は返信のそれを開いて。
勝手に、誰かへと向けた言葉を、打ち込んでいく。
こんな『彼女』は知らない。
姿は同じでも、中身は全然違う。
考えて、息を吐き出せば。
「チャットとかって…登録してる?」
そう、問いが投げられた。
俺が後ろにいるとわかっているから、顔は向けないのかもしれない。
「…してない」
「じゃあ、登録していい? 帰れるってわかったら、削除していくから」
「………」
「もしくは、わたしがいなくなって、ゆうなちゃんが帰ってきたら、削除していいから」
「…ああ」
許可すれば、彼女はまた、静かになって。
響くのは、キーボードを叩く音。
それが止むと。
ディスプレイは切り替わる。
「今の状態、言うね?」
それを見ていれば。
彼女は静かに、口を開いた。
「? ああ」
「向こうも、わたしとゆうなちゃんが入れ替わったことは、気づいてたみたい。で、今何をしたかというと、向こうにメールを出してみました」
「…メール?」
「メール。電波って、目に見えないから。空間を…世界を飛び越えられるんじゃないかと思って」
「………」
「で、その考えは当たって。向こうからメールが返ってきました」
「え?」
言葉に、彼女の横顔を見る。
そうすれば、彼女はちらりと、俺の顔を見て。
「でも、残念だけど。わたしもゆうなちゃんも、形があるので。飛び越えることは出来ません」
そう、答えをくれた。
……わかってる。
そんな簡単なことじゃないってことは。
でも、早くと願ってしまうのは、仕方のないことなのかもしれなくて。
「なんで。チャットとメールで、連絡を取れるようにしてみました」
結論をくれたあと。
白い画面に、文字が浮かぶ。
それを見た途端、彼女は目を細めて。
「珪だー…」
そう、呟いてた。
「けーいー」
泣きそうな声で言いながら、今言ったことを打ち込んで。
俺はそれを見て、息を吐き出す。
大人だったり、子供だったり。
彼女はよく、わからない。
思いながら、俺もディスプレイに、瞳を向けた。
『無事か?』
『平気。そっちは?』
『大丈夫』
『違う! ゆうなちゃん! 襲ってない!?』
『ない』
「おい…」
思わず、口を挟めば。
彼女は俺を振り返って。
「よかったね?」
そう、笑ってた。
……けど。
そうじゃないだろ……?
思いつつ、肩を落とす。
『帰る方法、わかってるのか?』
『…わかるわけ、ないじゃん……』
『玲』
『今、考えるよ』
『俺は早く、おまえに会いたい』
それを見て。
彼女は俺を、ちらりと見る。
「こういうの、平気?」
それから、そんな問い。
どういう意味か、わからなくて。
眉根を寄せれば。
『わたしも早く会いたいけど。どうすることも、出来ないもん…』
そう、文字が打ち込まれた。
……そういうことか。
思って、目元を手で覆う。
『早く会って、抱き着いて。甘えたいもん』
『俺も。早く会って、抱きしめて、キスしたい』
「ふふっ」
何なんだ? こいつら……。
わからなくて、目を逸らす。
どうやら、向こうにいるのは。
俺と同じ名前で、同じ姿をしてはいても。
中身は違うらしい。
考えて。
嬉しそうに笑っている彼女に、刺すような視線を向けた。
|