いなくなったあいつが
考えていることそれを必死に
考えてた
exchange 〜 akira's
珪 〜
彼女がいなくなって。
どうしようという声が、口をついている中。
俺はもう、仕事に行くとか。
そういうことを考えていられなかったけれど。
俺はずっと、彼女のことを考えていた。
誰にも頼れないという、その時。
彼女がどうするかといえば。
自分一人でできることを、考えるだろう。
べつに、手足が縛られていて動けない、とか。
意識がないとか。
そういうことでは…ないんだし。
だから彼女は。
自由に動き回れるはずで。
でも。
家からは、出ないような気がする。
それはきっと、自分のためではなくて。
『彼女』の――ため。
小さく息を吐いて。
俺は、周りを見渡してみる。
この家の中にあるもので。
たいていの家にも、存在しているもの……。
「聞いていいか?」
口を開けば、全員の視線が、俺に注がれて。
でも俺は、それを気にせずに、一つのものをまっすぐに見据える。
彼女が毎日と言っていいほど、使っていたもの。
「パソコン…おまえの家にもあるか?」
問えば、瞳を向けていた人物の一人が、こくんと首を縦に振って。
それを、視界の端で捉えてから、俺は歩き出した。
彼女が毎日使っていたのは、彼女の書斎にあるもの、だけれど。
このリビングにあるのは、俺のもの。
いすに腰かけて、電源を入れる。
立ち上がった、その瞬間。
新着のメールが届いていることを、それは告げた。
「メール?」
「ああ」
「玲から…ってこと?」
「来てなくても、出してみればいい」
「まぁ、そうなんやけど」
周りに集まってきたやつらの問いに答えながら、件名が顔文字の、それを開ければ。
目に飛び込んできたのは、短い文章たち。
「何これ?」
「玲から」
短く答えて、俺は文章を読んでいく。
『君に届いていればいい
君へと 届いてくれればいい
想いは目に見えないから
言葉は 目に 見えないから
目に見えないものに乗せて
届けてみてる
君に 届いていればいい
君へと 届いてくれればいい
わたしがここにいること
この想い
君に――届くといい』
彼女らしいと思う。
こういう、ところ。
「どういうこと?」
「世界が違うから…葉月のアドレスで送ったとしても、届かないかもしれない。うまく送信できたとしても、別の人に、届くかもしれない。だから玲は、こういう、わけのわかんない文章で送ってきた。……だろ?
葉月」
説明してくれた尽に、頷いて。
返信するために、それを開く。
『きちんと 届いてる
おまえの想い おまえの願い
きちんと 俺には届いてる
だから次は 俺の想い
俺の願い
俺の言葉が おまえに届くといい
同じように 目に見えないものに
乗せるから
うまく 俺の想い
おまえに届いてくれれば
それだけでいい』
短く書いて、送り出す。
こっちから届かないのでは、意味がない。
うまく送信されたことに息を吐いて。
今度は。
彼女からの、きちんとした言葉でのメールが来ることを、待つだけ。
「パソコンで繋がっとるなら、連絡の取りようは…あるなぁ」
「ああ。だからあとは、あいつが何を考えてるか……だな」
「でも、葉月までワケわかんない内容、書くとは思わなかったけど」
「……そうか?」
「でも、ああいう風に書いた方がいいよな。わかりやすいし」
「……ああ」
応えて。
俺はじっと、ディスプレイを見つめる。
いつ、届くだろう?
あと、何分待てばいい?
そう、考えていれば。
メールが届いたことを、それは、主人である俺に、教えてくれた。
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