ぶっちゃけ
何が起こったのか わからなかったいやもう
本当に!
exchange 〜 玲 〜
問いに、わたしは少し、考える。
目の前の彼は、変わったところはなくて。
ただ、言うとすれば。
「ちょっと失礼します」
言いながら、ボタンを一つ外して。
首元を少し広げれば。
案の定、綺麗で。
何も…なくて。
「…ないか」
「? だから……」
「君は、『葉月珪』で間違いない?」
「? ああ」
「そか。僕は『田端玲』というんですよ」
「………」
「で、この部屋を僕は知らない」
「………」
「おかしいな。廊下は変わりなかったんだけど…」
「…おい」
呼ばれて。
多分、呼ばれたんだろうと解して、顔を向ければ。
彼はまだ、そこにいて。
「聞きたいこと聞いて。それから推測していくから」
「…そうじゃなくて」
「でも多分だけど。if...の世界に来ちゃったことは、確かだな」
ぼんやりと考えながら、わたしはベッドから離れる。
「用意出来たら、リビングに来ていただけるとありがたいです」
そう言い残して、廊下へと出る。
うん。
当たりだ。
そしてそこで、また思う。
この家の間取りが、全然わからない。
まぁ、そんなに広くはないだろうから、探検するけど。
「………」
仕事、まだ残ってたんだよなぁ。
すぐに帰れるかな?
考えながら、階段を下りて。
リビングは普通、一階にあります。
思いながら、廊下を進んでいく。
扉を開けて、中を見れば。
そこはダイニングキッチンで。
少しそこで考えながら、中へと入る。
彼は…起こしに来たわたしを、『ゆうな』と呼んだ。
ということは。
わたしの代わりに、『彼』を起こしたのは。
その、『ゆうなちゃん』。
「………」
手遅れになる前に、気づいてますように!
祈るように、心の中で叫べば。
「…おい」
後ろから、そう声がした。
振り返って、息を吐く。
急いで着替えてきたんだろう姿に、ちょっとほっとして。
でも。
「僕の名前は、『田端玲』であって、『おい』じゃないです」
「………」
「『田端』でいいので、そう呼んでください」
「……」
「僕も『葉月くん』、と呼ぶので」
OK?
言えば、彼は眉間に皺を寄せて。
それから無言で、中へと入っていく。
ご飯の仕度はしてあるから、大丈夫だとは思うんだけど。
考えながら、彼に付いて、中心へと歩いていく。
「…聞いていいか?」
と、ようやく彼は、そう口を開いた。
「何?」
「if...って、言ったよな?」
「言ったね?」
「じゃあ、おまえのとこにも、俺…いるのか?」
「いるよ?」
「……」
「多分、向こうは向こうで、何か考えてるよ。わたしを戻す方法。でもって、ゆうなちゃんをこっちに返す方法」
「………」
「だから、願うことは。珪がゆうなちゃんを襲ってないこと」
「?」
「起こしに行くと、必ずと言っていいほど、押し倒されてるからさ。その前に、ゆうなちゃんに気づいてくれれば、いいんだけどってこと」
「なっ…!」
言えば、彼は真っ赤になって。
わたしは大きく目を見開いて。
瞬きを数回。
…免疫ないの?
それとも、そういう会話をしない…のか。
ポツリと思って、息を吐く。
新鮮っちゃ、新鮮なんだけど。
でも彼は。
『彼』じゃない。
「自信たっぷりって感じじゃないし。意地悪じゃないし」
「? 何…言ってるんだ?」
「僕が知ってる『葉月珪』との相違点」
「………」
「そういえば、珪、今日仕事だ…。休んじゃうかな?
やっぱり」
「……」
「くっついていく予定だったのに……」
ため息を吐いて、身体の向きを変える。
入れ替わったのは、わたしとゆうなちゃん。
ということは。
わたしは誰にも頼れない。
甘えられない。
淋しいけど、それが現実。
「一週間で帰れればいいな」
見つけた写真を覗き込めば。
そこには、彼と。
わたしとよく似た――多分、ゆうなちゃんの姿。
幸せそうに、微笑みあってて。
「結婚式…か」
呟いて、左手の薬指を見て。
そこに、唇を当てた。
大丈夫、帰れるよ。
そうやって、自分を励まして。
「パソコン、借りていい?」
思いついたことに、そう言葉を紡ぐ。
彼は少し、驚いたように、許可の言葉を届けてくれて。
それから、ちらりと、その場所を、視線で教えてくれた。
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