その言葉の重みを
きっと君は 知らない

だから
その言葉を口にするのに 躊躇しないの

そうでしょう?
違う?




CONFINEMENT





「聞いていいか?」
声に、わたしは手を止める。
何?
なんて言えなくて。
急いで、口をゆすいだ。
思うんだけどさ。
何で歯磨き粉って、ミント系が多いんだろうね?
「何ー?」
ようやく、口の中から何もなくなってくれて。
わたしはようやく、そう口に出来た。
「おまえ…あんまり言ってくれないよな?」
「…何を?」
「好きとか…そういうこと」
言われて。
何度か瞬きしたあとで。
当然のように、うんって頷く。
「どうして?」
「言わない理由?」
「ああ」
「言っとくけど、君のことを好きじゃないからっていう理由はないからね?」
「わかってる」
答えをもらえたから、わたしはにっこりと笑って。
それから、どう言おうかと考え出す。
そのままを伝えて…彼はわかってくれるかな?
「怒らないって、誓える?」
「? ああ」
「絶対?」
「……怒りそうなのか? おまえの理由」
「うん。珪は絶対、怒りそう」
「………」
言えば、彼は少し考えて。
それから。
「……努力する」
って、彼は言ってくれた。
「じゃあ、言う」
「ああ。…で?」
「その言葉には、力があるから」
「? 力?」
「そ。相手のことを束縛しちゃう力。わたしが君に言ったら、君は束縛されちゃうの」
「どうして?」
「例えばだよ? わたしに、君以外に好きな人が出来たとする。――ありえないけど」
「……」
「でも君は、それを知らないから。わたしに好きって言う。それが、わたしの中で罪悪感に変わって、身動きが取れなくなる。君を裏切ることになる。そう考えるとね」
「…だから?」
「そう。わたしがそれを言い続けたら。もし君に、他に好きな人が出来たら、罪悪感でいっぱいになって、困らせちゃうでしょ? だから言わないの」
「…ありえない」
「……怒らないって言った」
「努力するって言っただけ。俺は」
小さく頬を膨らませれば。
彼は顔を逸らして、そう言った。
怒ってるのは明らかで。
だから言いたくなかったのに。
なんて思う。
「ありえないかもしれないけど。でも、確率は0じゃない」
「………」
「出来ないけど。わたしが君をここから出さなかったり。誰にも会わせないようにしてたら、ないかもしれない。でもそれだって、確率は0じゃない」
「……けど」
「それに、言葉では言わないけど。態度では示してるつもりです」
ソファに座っている彼に、胸を張って見せれば。
彼は何度か瞬きして。
小さく、ふっと笑ってくれた。
「そうか…」
「そうだよ」
「そうだな」
「うん」
目の前まで歩いて。
見上げてくれた彼に、にっこりと笑う。
手が伸ばされて。
身体に回って。
それに従えば、彼はわたしを、膝の上に乗せた。
「ここは君の家でしょう? でもわたしは、ちゃんと帰ってくるじゃない」
「…ああ」
「君が触れてくれることは、すごく嬉しいし。そう届けてるはずだし」
「ああ」
頷きながら、彼はわたしを膝立ちにさせて。
ぎゅっと抱き締めて。
わたしの胸に、頬を押し当てる。
そんな彼の髪を梳いて。
「言葉がないと不安なのはわかるよ? わかるけど……頑張ってください、としか言えない」
「困らせるのは嫌でも、不安にさせるのはいいのか?」
「それよりも、束縛しちゃうのが嫌なの」
「………」
見上げてきた彼に、そう紡いで。
わたしは彼の肩に手を置いて、少しだけ離れる。
彼の足を挟み込むようにして座って。
彼と目線を、同じにして。
「不安にさせないように、日々頑張ってるの」
グリーンの瞳を見つめながら。
そこに移るわたしを見つめながら、そう綴る。
「言葉と同じくらい。それよりも強く、君に好きって届けてるつもり。もしまだ不安なら。前に言ったけど。閉じ込めてくれていいよ?」
「…ああ」
口付けて。
わたしもぎゅっと、彼を抱き締める。
何をすれば…なんていうのは、わかってるけど、出来ないから。
したくないから。
わたしは別の言葉で、届けてるだけ。
わたしが欲しいのは、彼だけだから。
一番難しくて。
もしかしたら、簡単かもしれなくて。
ことんと、彼の肩に頭を預けたら。
優しく、彼の手が、頭を撫でてくれた。

END

 


考えたのは、実はこっちが先でした。
でも、オフィ主の方で、どうしても書きたくて。
そんなわけで、同じお題で書いてみた次第(『
POWER』)。

だって、こういうことは玲の方が考えるでしょうから。
こういう、小難しいことは(苦笑)。

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