あなたが言ってくれる その言葉は
いつも わたしに勇気をくれるあなた好みの女の子になりたいってわけじゃないけど
だって そう言ったら
友達に怒られちゃったから
だから そういうわけじゃないんだけど
けどね?
わたしの好きと
あなたの好き
それが重なったら
とても嬉しいから
今日もまた
あなたの言葉に 耳を傾けてる
届けられる言葉
「よし、できた」
そんな言葉を聞いて、彼女は一度、後ろで手を動かしていた友達の姿を視界に収めた。
にっこりと笑っている友達に、ありがとうと届けて。
それから、手鏡を覗き込む。
「平気でしょ? アタシとしても、うまくできたと思うんだけど」
「うん。本当にありがとう。それから…ごめんね?」
「いいって! でも急に、どうしたの?」
「うん…、ちょっと、気分転換?」
曖昧に答えれば、友達はふっと笑って。
「この前の…でしょ?」
そう、頭を小突かれながら綴った。
それに、微苦笑を零して。
彼女は席を立つ。
けれど。
「葉月に感想、聞きにいこうよ!」
そう声を上げた友達に、有無を言えないままに引っ張られて。
彼女はそこを、あとにした。
屋上で見つけた姿に、彼女は下を向いて。
それでも、手を引っ張られて、彼女は彼の前へと、歩を進める。
「葉月!」
彼のことを呼んだのは友達の方で。
外を見ていた彼は、その声で振り返ってくれたけれど。
思い切り、目を開いて、彼女を見ていた。
「優菜…?」
「え、えと…、あの……」
「それ…」
聞かれて。
答えられなくて、そばにいた友達に、目配せするけれど。
同じように見られて。
「じゃ、アタシ行くから」
そんな言葉を置いて、逃げるように去っていってしまって。
彼女が今度は、驚く番。
「優菜?」
「あの、その……」
「この前の?」
「う、うん……」
バイトで、彼の仕事先に行った時に。
撮影をしていた彼の隣りにいたのは、綺麗な女の人で。
それでも、髪型のせいか、少しかわいくも見えて。
そうして、休憩に入った時。
彼もそう思っていたことを教えてくれた。
だから。
だから…。
「なっちんに、手伝ってもらって…。その……」
「ああ」
「………」
「似合ってる」
「本当?」
「ああ。好きだよ、俺。そういうの」
その言葉が嬉しくて。
ありがとうと届ければ。
彼はふっと、笑んでくれる。
それが何よりも、嬉しくて。
その笑顔のためにがんばっているのだと。
そう、届けてしまいたいほどで。
それでも、同じ微笑を届けるだけに留めて。
彼女は、彼に促されるまま、隣りに並ぶ。
彼の言う、『好き』の言葉が。
わたし自身に向いていれば、なんて、彼女は考えるけれど。
それでも、部分部分だけでも。
好きになって、もらえるなら。
好きになってもらえたなら。
好きだと、そう…言ってもらえるなら。
もらえたなら。
それだけでも、嬉しいから。
「それ、髪型」
「? なぁに?」
「似合うな。おまえの方が」
「本当?」
「ああ。本当」
髪に触れた、彼の手に。
彼女は頬に、ぱっと、朱を乗せて。
それでも、嬉しそうに、口元を緩める。
期待を持って。
それでも、想いが受け入れられなかった時のことも、きちんと考えながら。
彼女は少しずつ、距離を詰めていく。
彼の隣りまで。
その距離は、彼女にはわからないけれど。
それでも。
いつか、自分に、その言葉が届けられることを願って。
彼女はにっこりとした笑みを、彼へと向けた。
END
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