大きな手に、安堵する。
彼の手に、安堵する。
頼ってしまう もの
名前を呼ばれて。
顔を上げれば、そこにあるものは、大体が同じもので。
わたしは小さく、笑みを浮かべる。
きっと、彼は知らない。
わたしがとてつもなく、この手に頼ってしまっていること。
この手が差し出されなくなってしまったら。
きっとわたしは。
生きていけないかもしれない。
そのぐらいまでに、思ってしまっていること。
きっと……彼は知らない。
「玲?」
「んー?」
「………」
浮かべていた笑みのままで、彼の手を取って。
立ち上がる。
彼は何も、言わなくて。
ただそこに、居続けているだけで。
「? 珪?」
爪先立ちをして。
顔を覗き込んで。
それでも彼は、じっと、わたしの顔を、見ているだけで。
それに、きちんと、床に足をつけて。
わたしも、彼を見上げる。
手は、離さない。
だって、これがなくなってしまったら。
わたしは本当に、生きていけない。
………。
「もしもの話、していい?」
「……ああ」
短い返答。
ぎゅっと、手に力を込めて。
「あのね? わたしは、君より先に死んじゃいけないと思うんだ」
「…当たり前」
「うん。怒るもんね、君。きっと」
「ああ」
「でもね? 君も…わたしよりも先に、死んだらいけないんだよ」
「………」
「君がいなくなったら。わたしは…誰にも頼れなくなって。生きていけないもん」
「…………」
抱き締められて。
わたしを呼ぶ声が、耳に直接、注ぎ込まれて。
それに応えるように、わたしは。
彼の背中に、手を回す。
そう。
このあたたかさがなくなったら。
わたしはきっと、生きていけない。
「そういえば、何か用?」
わたしを最初に呼んだ理由が知りたくて、そう聞けば。
彼は一つ、キスをくれて。
どこかに食事に行こう、なんて。
そんな風に、誘いをくれて。
今日は…彼が食事を作る番だった、なんて。
思い出して。
わたしはくすくすと笑ってしまっていたりした。
END
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