俺の言葉で、説得力がないのなら。
彼女に届く、言葉を持っている人に頼むことしか。
俺には、できないから。



rely




「?」
彼女の膝の上に乗せられたものを見て、彼は眉根を寄せる。
自分に手渡されたものの。
その中に入っているものとを、交互に見続けていれば。
彼女が顔を上げて、首を傾げた。
「…どうしたの?
珪くん」
「……それ…」
「これ?
お弁当だけど?」
「………」
「どうしたの?」
隣りに座っている彼女の顔を見つつ。
彼はますます、深く眉間に皺を刻む。
「少なくないか?」
「え?
えと…」
「それで足りるのか?」
「う、うん…。大丈夫」
「具合でも、悪いのか?」
「ううん!
そんなことないよ?」
「じゃあ……」
「あのね?
ダイエット、しようかなって…」
「………」
そう言った彼女に、彼は小さく、息を吐いて。
必要ないだろ?
短く、そう言い放つ。
「え?」
「むしろ、もっと食った方がいいと思う。俺」
「…でも……」
言いよどんだ彼女に、もう一度息を吐いても。
彼女の決意は、変わらないらしくて。
でも、と。
その言葉を紡ぎ続けていた。



その人に髪を触れられるのは、もう慣れてしまったのだけれど。
最初の頃は、内心、嫌がっていたなと。
触れられる度に、思い出す。
表情には出さなくても。
心の中では。
けれど、頼まれたとはいえ、仕事なのだし、と…あきらめていた。
ごめんねー、と。
触れる直前に、必ず声をかけてくれていたせいも、あったのかもしれない。
「ダイエットって…優菜ちゃんが?」
「…?
ああ」
あららー、なんて声を上げながら、その人はブラシを手にして。
失礼しまーす、と言ってから、それを頬へと滑らせる。
「…ちょっと赤みが強かった…?」
「……
mimiさん…」
「ごめんごめん。――で?
葉月くんはどう思ったわけ?」
指を滑らせて、赤みを落として。
ほとんど、その色がわからなくなった頃、その人は彼の視界から消えた。
いすを回転させられて。
上げられていた前髪が、下ろされる。
「どうって…必要ないって……」
「だよねー? むしろ、私は君のが必要だと思うよ?」
「?」
「自覚ないのかもしれないけどね。ちょっと顔が丸くなってきてるよ?」
「…本当に?」
「本当」
少しだけ振り返って問えば。
彼女はにっこりと笑みを零して、そう言って。
無理矢理、彼に前を向かせた。
ブラシを持った、手を使って。
「幸せ太りなんじゃないのー? 優菜ちゃんの手作り弁当がおいしいからって、食べ過ぎちゃだめよー?」
「…そんなんじゃ……」
「はいはい」
目の前の鏡ではなく。
直に顔を覗き込まれて。
「顔、赤いぞ?」
そう、からかいのような笑みと共に届けられて。
彼はわずかに、睨むような視線を送る。
それに、逃げるように、また視界から消えて。
彼女の手が、前髪を整えていくのが、鏡に映し出された。
「それで? 私に何をしてほしいのかな?」
「………」
「優菜ちゃんに、必要ないよって言えばいいの?」
「…頼んでも、いいですか?」
「いいけど。葉月くんからは? 言ったの?」
「言った。けど……」
「効果がなかった?」
コクンと頷いて。
髪を引っ張られる、それに、抗わずに、従って。
「まぁ、女の子っていうのは、いつだって自信を持てないものだからね。仕方ないとは思うけど」
「………」
「言っておいてあげる。その代わり、葉月くんはしっかり、仕事してね?」
「わかってる」
答えれば、彼女はにっこりと笑って。
「今日の夕飯は、お姉さんがおごってあげよう」
そう、上機嫌で紡いでいた。

 

当てにされた、mimiさん。
彼女はもう一人から、当てにされます。
彼女はいろいろと遊べるので、結構好きです(オリキャラだもんねぇ…)。

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