太陽を見上げて
一つ 息を吐く

やっぱり こうじゃないと
そう思いながらも
やっぱりちょっとなぁ…
なんて

結局
肩を落としてた




夏らしく!





額の汗を拭って。
真っ青の空に、視線の先を向けて。
そうしてから、一つ、息を吐く。
と、隣りで彼が、くすくすと笑みを零した。
「何ー?」
「ここ、木陰」
「…知ってるけど?」
「……暑いか?」
「気温は高いと思いますが?」
問い返せば、彼は「まぁな」と、短く。
木陰だけど。
そりゃ確かに、直接、陽の下にいるよりは、涼しいけど。
でも、暑いものは暑い。
「先週まで涼しかったのにー」
「…だな」
「あーつーいー!」
「変なやつ」
間髪いれずに放って、また彼は笑い出す。
きっと。
そう思う。
きっと、彼が持ち出すのは、この前のこと。
この前、わたしが彼に言ったこと。
「夏らしくないって、言ってたな。先週」
…やっぱり。
思いながら、頬を膨らませる。
その時のことは、覚えてる。
窓を開けて。
吹き込んできた風が、ほんの少し、冷たく感じて。
夏の風って、もっと、熱気を含んでて。
湿気も、多くて。
そんなものなのにって、思って。
「叫んでたな。夏はまだですか、とか。空に向かって」
「…しましたね」
本当に、よく覚えてるんだから。
考えても、それは仕方のないことで。
わたしはふっと、苦笑を零す。
夏が来れば、秋が来て。
そして、わたしが、最も苦手とする…冬が来て。
大好きな、春が来て。
そしてまた、暑い夏が来て。
「変わらない…かなぁ?」
「?」
「高校の時と」
「ああ……変わってないな」
あまり考えることなく、彼は答えてくれて。
それが意味するのは、わたしが本当に、変わっていないということ。
「珪も変わんないよねー」
言ってみたら、彼はまた、くすくすと笑い出して。
また、短い肯定。
変わらなくて、いい。
時はただ、過ぎていくだけ。
基本的なものは、変わらない方がいい。
まぁ、たとえ、変わったとしても。
彼のことを好きだっていう、この気持ちは、変わらないと思う。
横顔をじっと見て。
それから、肩にもたれてみる。
彼は驚くことはなくて。
むしろ、頭を軽く、叩いてくれる。
変わらなくていい。
というより。
わたしが変わらなければ、彼もきっと、変わらない。
彼が持っている、この優しさは。
きっと、変わらない。
そう、願うように、祈るように、思ってる。
「暑くないのか?」
「…暑い」
「……そうか」
「でも、いいの」
「?」
「暑いからって、くっつかないのは嫌だし」
「…ああ」
「夏は暑い方が、らしいし?」
「…はいはい」
そう言って、彼はまた、笑って。
でも、頭をぎゅっと、抱えてくれる。
寒い時は、くっつくのが、わたしの中では当たり前で。
暑い時も、同じ。
だって。
気温と体温は違う。
あたたかさも。
あつさも。
違うものだから。
それを理由にして、彼のそばにいないっていうのは。
何かが…おかしい。
そう思えて、仕方がないから。
「珪ー」
「ん?」
「暑いね?」
「…だな」
含み笑いで、彼は答えて。
でも、離れることはなくて。
わたしはずっと、笑ってて。
彼も、笑ってて。
これがずっと、続けばいいなって。
今まで、何度も思ってきたことを、わたしはまた。
思ってたりして。
来年も、その次も。
きっときっと。
わたしは、彼の隣りで。
彼と一緒に、こうして。
――これがきっと。
『夏だから』っていう理由に、摩り替わるのは。
そう遠くない未来だって。
信じたい。
そんなことを、新たに。
考えていたりも…してた。

END

 


20060811のイベントで配布していたペーパーに載せてました。
夏だからこそ、くっつかせたいという思いから書いた話。
何となく、ほのぼのに収まったかなぁ…と思うんですが。
気の所為ですか…ね?

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