聞いたことには
答えてくれないと
だって不安になっちゃう君にとって わたしは
まだ――必要な存在?
聞かなくても
カーテンを開け切った窓のそばで、わたしは大きく、伸びをする。
さーて、どこから掃除しようかなー。
考えて、踵を返せば。
彼が欠伸を零しながら、リビングへと入ってきて。
そして。
何も言わずに、ソファへと腰かける。
「………」
こういう時。
わたしは、何も言わずに彼のそばを離れた方がいいって、考えちゃう。
彼の中に今、わたしの存在は、ないに等しいから。
淋しさを感じながらも、わたしはキッチンへと、歩いていって。
そしてそこから、廊下へと、歩を進めた。
一階にある書斎も、書庫っぽくはなってるけど。
二階にあるのは、ほとんど書庫。
本棚が林立してるし。
それを見上げて、わたしは息を吐く。
本を資料として使う回数は。
彼よりもわたしの方が、断然多い。
だからいつも、よく使うものは書斎に持っていって。
逆に、使わないものは、ここ。
買ってきた本とかも、ここに持ってきて。
使う時に、出す。
――とはいえ。
「こんなにあったかなぁ?」
ちょっとした図書室だよね?
とか、どうでもいいことを考えて。
わたしは中身を出すために、用意をはじめる。
台に乗って、上から出して。
降りて、下に置いて。
また、乗る。
この繰り返し。
全部出し終えて、わたしはまたそこで、息を吐いた。
まだ一つ目。
あと三つ、棚はある。
考えて、脱力。
わたしが勝手に考えて、やってること。
だから彼には、何も頼めない。
思って。
それから。
わたしは洗面所へと行くために、そこから出る。
階段を下りて、歩いて。
ついでにと、洗面所を通り過ぎて、リビングを覗けば。
彼はまだ、そこにいた。
視線を伏せて、何かを考えている感じ。
近づくなっていうオーラは、出てないと思う。
でも。
わたしのことは、きっと。
忘れてる。
考えて。
わたしは踵を返す。
洗面所に入って、バケツに水を汲んで。
それと、雑巾を持って、書庫へと戻る。
階段を慎重に上がって。
書庫へ。
それから、雑巾を水に浸して。
固く絞って、台の上へ。
そうやって、棚を拭いていれば。
リビングの扉が閉まった音が聞こえた。
彼が廊下に出たらしい。
ぼんやりと思いながら、掃除を続けて。
こういう時は、失敗しないよなぁ。
考えて、台から降りる。
濡れたままの棚を見上げて。
乾くまでの合間にと、本に手を伸ばした。
床に座り込んで、選別。
……していれば。
積み上げたものが、わずかに崩れて。
音を立てて、床に落ちた。
「……仕方ないのか? これは」
小さく唸って、また手を伸ばす。
けど。
書庫の扉がかちゃりと音を立てて。
一瞬、肩を竦ませて、振り返れば。
「…何やってるんだ?」
そう、言葉。
彼の声と、姿。
さっきの音で、彼の中にわたしという存在が、甦ったらしい。
「…掃除を」
「一人で?」
「うん……」
苦笑で綴って。
わたしはまた、作業を再開する。
彼はといえば、ほんの少し、それを見て。
それから、わたしが分けたものを、棚へと戻しだした。
もちろん、乾いたのを確認してから。
「…手伝ってくれるの?」
「ああ。俺も……置いてるし」
「……うん」
頷けば、彼は一度、わたしの頭の上に手を伸ばして。
ポンッと、そこを叩いてくれた。
小さく撫でて。
見上げれば、微笑ってくれて。
わたしも笑みを浮かべる。
「あのさぁ」
「ん?」
「……何でもない」
聞かなくても、答えはわかっているから。
わたしはそれで、言葉を終わらせて。
掃除を続けようと、また手を伸ばした。
彼は首を傾げてたけど、わたしの様子に、諦めたのか。
彼もまた、作業を再開してくれた。
END
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