願いはいつも
叶うってわけじゃないけど
こんな小さなものぐらいはって
思ってた

でも
やっぱり
願いはどんな時も
叶わないんだって
思ってしまった



心の奥のこの願いだけは




朝、起きて。
カーテンが遮ってくれている光を見ても。
わずかな望みを、持っていたのだけれど。
ベッドから抜け出して、カーテンを引いて。
その時に見えた青に、わたしは眉根を下げてた。
ニュースが告げる最高気温に、また不安になって。
心配になって。
そして今。
たぶん、テレビの中から聞こえた、一番上の気温に達するんじゃないかっていう中を。
彼と並んで、歩いてる。
「大丈夫? 珪くん」
「ん?」
「暑くない?」
聞けば彼は、高い位置にある太陽に、顔を向けて。
「ああ…。そうだな」
と、こめかみに流れていた汗を、袖口で拭き取ってた。
わたしも、ぼうしがほしいなーって、思うぐらいだし。
考えて、後頭部に手を当てれば。
やっぱりそこは、熱かった。
「この頃、暑いな…」
「夏だし。仕方ないんじゃないのかな?」
「……だな」
小さく息を吐いて、彼は歩いて。
わたしもそれについて、歩いていく。
もう少し、速く歩いたなら。
彼は早く、家に帰れるから。
考えて、歩を早めれば。
彼に手を取られてしまって。
わたしは彼の隣りに、戻された。
「珪くん?」
「どうかしたのか?」
「え?」
「何か…用事か?」
「う、ううん。ただ、その……」
「?」
「珪くんがいつも歩くペースに、わたしが合わせれば。珪くん、早く帰れるのにって、そう…思って」
「………」
「だから、あの……」
止められてしまった足を、視界に収めて。
わたしは彼の言葉を待つ。
彼のために、したこと。
どうしてかと聞かれたら、それしかなくて。
でもそのままを伝えるのは、気恥ずかしくて。
言え…なくて。
「………」
黙ったまま、俯いていれば。
彼は静かに、歩き出して。
手を取られていたわたしも、つられるようにして、歩き出す。
結局。
短いとは言え、この暑い中に、彼を立たせてしまったことは、確かで。
そう、結局。
わたしがいいと思ってしたことは。
悪い方へと、顔を向けてしまった。
それが、彼に対して、申し訳なくて。
どうしようも、なくて。
「…大丈夫、だから」
ポツリと落とされた言葉に、わたしは顔を上げる。
大丈夫って、何が?
聞きたいけど、聞けなくて。
今、声を発したら。
確実に、泣いてしまいそうな、そんな気がしたから。
言えなくて。
そんなわたしを振り返って、彼は微苦笑う。
「俺にしてみたら、心配なのは……おまえの、方」
「え?」
手が離されて。
反射で、足を止めてしまったわたしの頭の上に、彼は手を乗せる。
それで小さく、「やっぱり」って、呟いてた。
そしてまた、彼はわたしの手を取って、今度は足早に、歩き出す。
「珪くん?」
「コンビニ、寄ろう」
「え?」
「日射病になる」
「え? そんな簡単には、ならないよ」
「…じゃあ、俺がなる」
「……珪くん?」
「だから、寄ってくれ。コンビニ」
彼の足は、わたしの返答を聞かないまま、そこへと向かっていて。
わたしはくすくすと、笑い出す。
でも。
彼の言ったことは、正しいのかもしれなくて。
わたしは、少し歩を早めて、彼の隣りにつく。
彼がわたしの心配をしてくれているのが、嬉しくて。
でも、わたしが暑いのなら。
そう、思うのなら。
彼も同じ、だから。
「飲み物、買う?」
「…アイス」
「そうだね。アイス食べたいね」
「で、俺んちで食おう」
「………」
彼の顔を見て。
驚いたのを、そのまま、届けて。
嬉しいのに、それはそのまま、届けられなくて。
彼の顔から視線を逸らして、こくんと頷いた。
それから、視線を上げれば。
彼は笑顔で、わたしを見てくれていて。
わたしも、笑みを浮かべて。
繋がっている手に、力を込めた。

END

 

20050820のイベントのペーパーに載せてました。

あなたがそこに いるのなら」の、続きです。
次の日。
題名を最後まで悩んでました。
長くするか、短くまとめるか。
結局、長く……(……)。

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