それを調味料として 見たことがなかった
実は

けど
おまえがそうやって使うから
ようやくそれが そこに分類されるのだと
わかった




毎日の中で





「辛いー」
かき混ぜていた鍋の前で、彼女はそううめいて。
冷凍庫を開けたかと思ったら。
小さな氷のかけらを、口へと放り込んだ。
それに、俺はソファから立ち上がる。
鍋の中身は、知っていて。
今日はそれを夕飯にするのだと言って、彼女が火を入れていたのも、知っている。
隣りの家から、もらったらしい。
作り過ぎたという理由で。
お返しに、彼女も何かを渡したらしいけれど。
カレーという名のそれは。
まだ沸々と、煮立っていて。
俺はそれを少しすくって、口へと運んだ。
「…辛いか?」
「辛いよ!」
「………」
「…半分に分けよう。このままでいいって言うんだったら、君のはこのままで」
「おまえは?」
「甘くする」
言いながら、彼女が冷蔵庫を開けて、手にしたものに、眉根を寄せる。
それでも彼女は、その二つを脇へと置いて。
小さな鍋を出してきて、取り分けて。
「さて、やりますか」
その小さな方へ、それを入れ始めた。
「牛乳…?」
「これで辛さを和らげるわけ」
「はちみつは?」
「もち、甘さをプラス!」
入れて、かき混ぜて。
味見をして。
まだ辛いのか、顔を顰めて。
それでも、コップに水を注いで、飲む程度になって。
彼女はまた、それを入れていく。
「………」
「何ー? 意外?」
「…ああ」
「どっちが?」
「…はちみつ」
「そか」
くすくすと笑いながら、彼女は手を動かし続けて。
それでも、まだそばに俺がいることを確認してから、もう一度、味見をした。
「カレーに砂糖なんて、入れるわけにはいかないじゃん? 逆に辛さが際立っちゃう可能性だってあるし」
「そうなのか?」
「実験しようか?」
言って、彼女は鍋から離れる。
焦げないように、かき混ぜてて。
そう、俺へと届けて。
そうして、彼女が手のひらに乗せたのは、砂糖で。
それにほんのちょっと、塩を混ぜて。
「はい」
と、俺の目の前に、差し出してきた。
「舐めてみ?」
「………」
言われて、一つまみ、それを取って、口へと運ぶ。
もちろん、口の中は甘さが広がって。
俺は深く、眉根を寄せた。
「わかった?」
「甘い」
「んじゃ、こっち」
出されたのは、また白い粒のもので。
彼女が注いでいた水を、飲んでから。
同じように、口へと運んだ。
「………」
「どっちのが甘かった?」
「塩…混ぜた方」
「そういうこと」
手のひらの上の物を、カップへと入れて。
そうしてから、彼女は俺の隣りに立つ。
なるほどな、なんて思いながら、かき混ぜ続けて。
「おもしろいっしょ? けど、覚えとくと結構役に立つ」
「…だな」
火を止めて、彼女はもう一度、味見をして。
それに満足したのか、笑みを零したあとで。
食器を出すべく、離れていく。
その背中を見て。
本当に、いろんなことをよく知ってるよな。
なんて、思ってた。

END

 


蜂蜜と言ったら、それしか思い浮かびませんで。
仕方なく、それで。

二次創作書きさんにたった10のお題』より、お借りしました。
八つ目は、『蜂蜜』。
そのものでなくてもいいんだろうけど。
そうなると、この二人で…となると。
……ねぇ?(何?)

web拍手に置いてました。

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