どんなに大丈夫って思っても
結局 無理みたい暑いものは
暑いのです
ごほうび
高い位置にある太陽の下を、彼と二人、並んで歩いていく。
彼は時折、ワイシャツの袖口で、顔の汗を拭ったり。
前髪をかき上げたり。
でも、わたしは。
「あ〜づ〜い〜…」
と、背中を丸めて、ようやく歩いている状態。
「………」
「登校して、HRやって、掃除やって、またHRやって、終わり。それまで一時間だけしかかかってない。何なの!?
登校日!?」
「うるさい」
不満を口にすれば、彼はぺちっと、わたしの頭を叩いてくれる。
それに少し、身体を起こせば。
彼は太陽に目を向けてた。
「だって暑い中、学校に行ったんだよ?
なのに、たった一時間で帰されるって、どういうこと?」
「さあな」
「君は不満はないわけ?」
「………」
あ、あるんだ?
思いつつ、黙り込んだ彼から、前方に目を向ける。
そこには、小さ目の向日葵が咲いていて。
「ほらほら、向日葵さんだって、くたーってなってるじゃん」
「あれは頭が重いから」
「……暑い」
「冬は寒いって言ってるよな、おまえ」
「今は夏なので、暑い」
「夏生まれだろ? おまえ」
「六月だもん。初夏だもん。もっと言えば、梅雨時だもん」
「………」
「二日しか違わないけど、ニィやんと一緒にしないでください」
また少し、背中を丸めながらわたしは歩いていく。
暑いのは苦手。
寒いのも、ダメ。
「そう言えばおまえ、宿題は?」
「…やってるよ?」
「……そうか」
「とりあえず、数学と現国、古文は終了」
「……英語は?」
「一番最後に、君が終わった頃に、見せてもらう」
正直に言えば、頭を拳で叩かれました。
しかも、甲の方。
骨で。
「…痛い……」
「手伝ってはやるけど、見せてはやらない」
「……いいじゃん。減るもんじゃなし…」
呟けば、また叩かれて。
わたしはその場に、蹲る。
もちろん彼は、歩みを止めてはくれなくて。
わたしはすぐに、立ち上がって、彼の背中を追いかけた。
追いついたところで、背中を叩いて。
「おまえな」
「君が先にぶったんでしょう?」
「…自分でやらないと、身にならないだろ?」
「別にいいもん。英語不得意なままで」
「………」
「ヒヤリングは出来るから。会話はニュアンスで行けるし」
「………」
「和訳だって、大丈夫だし」
「………」
「英訳が出来ないだけだから、何とかなる。そう思えば、大丈夫。頑張れ、僕!」
彼の腕に手を絡めて。
逆の手を大きく空に突き上げてみる。
彼は大きくため息を吐いて。
今度は鞄で、頭を叩いた。
「…葉月くん」
「ん?」
「酷くありません?」
「当然のことをしたまで。俺は」
「………」
「………」
結構いろいろ、痛かったんだけど。
思いながら、頭を自分で撫でて。
「アイス食べたい」
そうぼやいてみた。
「あのな」
「君が言ったから、学校行った。今日」
「じゃあ、来なかったのか? おまえ。俺が言わなかったら」
「………」
「? 田端?」
「…多分?」
苦笑。
学校に行けば、みんなに会える。
わかっているわたしは、そこに行かなかった、なんて、断定は出来なくて。
そう、曖昧に答えたわたしに、彼は眉根を寄せて、訝しげな視線を向けてた。
「とにかく、アイス!」
「買っていくか? コンビニで」
「わーい、葉月くんが奢ってくれるー!」
「おごらない」
また叩かれて。
わたしは口を尖らせてみたりして。
「まぁいいや。アイス!」
「はいはい」
「で、君んちで食べてく」
「………」
「僕んちまで行ったら、多分融ける」
「公園でいいだろ?」
「ヤダー! クーラーとアイスココア!」
子供みたいに駄々こねて。
それから彼をちらりと見れば。
やっぱり彼は、大きく吐息。
妥協したね?
思いつつ、歩を早めてみたら。
彼は最後、とでも言うかのように、またわたしの頭を、軽く叩いてくれた。
END
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