とにかく暑い

暑いったら 暑い

だから涼しい場所に行きたいと願うのは
仕方ないでしょう?




キライなもの ニガテなもの





何で登校日ってあるの?
そう尽に聞いてみたら、知らねー、で終わった。
お母さんに聞いたら、「そうねー? 何でかしらねー?」って、微笑を浮かべてた。
お父さんには、聞き辛かったから、パスして。
で、彼は。
「心配だからだろ? 先生達が」
と、優等生の答えをくれました。
「…だとは思う」
「そうか」
長い夏休み。
彼の家。
クーラーをかけてもらって、アイスココアも入れてもらって。
それを片手に、わたしはリビングで、ソファにだらしなく、縋っていたりする。
で、明日は話題の、登校日。
「行きたくなーい」
「……」
「ここにいるー」
「……あのな」
「だって僕の部屋、クーラーないし」
「………」
「ここなら黙ってても、ココア入れてもらえるし」
「出さないとうるさい。おまえ」
「よくおわかりで」
にっこり笑って、少し身体を起こして、ココアを飲む。
わたしが好きな濃さも、よくわかってる。
彼は。
「出かけるんじゃなかったのか?」
「外は暑いから、ヤダ」
即答すれば、彼は吐息。
しかも大きく。
そうしていても、彼は折れてくれる。
だからわたしは、ここにいられてる。
「本当は、臨海公園にでも行こうかなーとか、思ってました」
「……で?」
「でも、ここまで、君を迎えに来た時点で、へばりました」
「………」
「帽子、かぶってきたのになー。おかしい」
「………」
「蝉さんの声とか聞いてたら、夏だなぁって思って。っていうか、暑いの助長してるよなぁ、とか思って」
「……で?」
「で、玄関の前で、茹ってた」
融ける寸前?
なんて、首を傾げてみたら、彼はまたもや、ため息。
何て言うかね?
わたしってば、身体の中に熱を溜め込んじゃう質らしくてね?
そうなると、ほら。
動いてる時はいいけど。
止まっちゃうと、汗がバーって出ちゃうんですよ。
とか、笑って説明しても。
彼はすぐに、わたしから視線を逸らして。
背を向けて、キッチンへと向かっていくだけで。
「呆れたー?」
「………」
「呆れてるんでしょ? 君」
「聞く必要ないんじゃないか? わかってるんなら」
「…確認だって」
少し不貞腐れながら言って。
またわたしは、ソファに突っ伏す。
汗をかきはじめたグラスを、頬に当てて。
冷たい、とか、当然のことを思う。
「明日登校日かー」
「………」
「行きたくない…」
「去年も言ってたな。それ」
「ちなみに一昨年も言ってみた」
「…言ってた」
「その前も、言ってたなぁ。で、友達に冷たい視線を向けられた」
「…普通」
「で、当日。迎えにまで来られた」
「………」
「逃げられなかったのです」
「尽に追いやられてるわけじゃないのか?」
「言ってないもん。登校日」
「…親は?」
「確かこの日ーって」
「………」
「基本的に、放任ですから。ウチ」
発して、またストローに口を付ける。
氷で冷やされて、ものすごく冷たくなってて。
だからこそ、幸せだって思う。
安いけど、幸せ。
わたしは。
そうしていれば、彼は帰ってきて。
手に持っていた何かを、テーブルの上に落ち着かせた。
何だろ?
思いながら、横目でそれを見れば。
透明なお皿の中に、白い塊。
「………」
「いらないのか?」
「いる…けど」
「?」
「チョコレートのがよかった」
「…おまえな……」
身体を起こして、テーブルに向き合って。
グラスをテーブルに落ち着かせて、スプーンを手にする。
と。
「……痛い…」
「これも貸してやる」
何かで頭を叩かれて。
その何かを、彼から受け取る。
タオルで巻かれたそれは、ものすごく冷たくて。
わたしはありがとうといいながら、それをぎゅっと、抱き締める。
彼はくすくすと笑って。
「明日、ちゃんと来いよ。学校」
そのあとで、きちんと、そう釘を刺してくれた。

END

 

20050812のイベントで配っていたペーパーに載せてました。

しかし、どれだけ暑がりなんでしょう?
この子は。
そう、書き上げたあとに思いました。
そしてわがまま言いたい放題ですねー(苦笑)。

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