| その日が近づいてくる 大好きな親友の
その 大切な存在を
預かるっていう
そんな日
失敗できないから
実はちょっと
怖いんだけどね
Engels 2
ドキドキしてたら。
それはもう、自分のことのように、ドキドキしてたら。
そうやって、じっとソファに座って、テーブルの上の携帯を見つめてたら。
彼が急に、笑い出した。
紅茶を入れていたはずの彼を見れば。
二つのカップを持って、こっちに歩いてきていて。
「何ー?」
「緊張してるだろ?」
「……してるけど?」
「よくわかる」
言いながら、彼は隣りに腰かける。
もちろん、カップをテーブルの上に、置いてから。
「だって仕方ないでしょ?」
少し頬を膨らませて、わたしは抗議。
今日、何があるのかと聞かれたら。
わたしの親友の娘さんに、関わること。
そして、その結果によっては。
わたしにも彼にも。
そして、わたしの大切な子供達にも、関係してくる。
だから緊張。
「受かるだろ?」
「…でも、万が一ということも、考えられるわけで……」
「おかしい。受からない方が」
「……わたしもそう思うけど」
ガクッと肩を落とせば。
彼はまた、笑い出す。
彼と話してると、緊張ってものがなくなってくる。
いいことなんだけど。
大抵の場合は、いいことなんだけど。
玲ちゃん、ドキドキしてるだろうなぁ…って考えると。
ちょっと、素直に喜べない。
「かあさん!」
考えていれば、階段をバタバタと下りてくる足音がして。
腰を上げれば、リビングの出入り口に、二つの姿。
手を繋いで。
引っ張ってるのは、朝の方。
引かれている颯は、その手をぎゅっと握ってる。
気持ちは、わかるんだ。
颯はずっと、髪と瞳の色で、いじめられたりしてたみたいで。
でもそれを、ちゃんと朝が守ってる。
颯を守るのは、朝の役目。
そう、朝はわかってる。
颯を泣かせるヤツは許さないって。
朝は公言して、憚らないから。
颯は朝のそばを離れないし。
朝もまた、颯のそばを、あまり離れようとしない。
それでいいって、わたしは思う。
二人で、生まれてきたんだから。
でもとにかく。
今はそうじゃなくて。
「どうしたの?」
「おねえちゃんきたよ」
「え?」
答えたのは、颯で。
朝はうんって、頷いて。
「まどからみえた」
「笑ってた?」
「そこまではみえなかったけど…」
「でも、おねえちゃんとおねえちゃんのおかあさん。て、つないでたよ?」
「………」
「…わからないな」
彼の言葉に、うんって頷く。
わからない。
嬉しくて、手を繋いでるのか。
残念だったから、元気付けようとして、手を繋いでるのか。
どちらも考えられるから、どうすればいいのか、わからない。
「連絡くれるって、言ってたのに……」
「そういうやつだろ? あいつは」
そうなんだけど。
言えなくて、とぼとぼと歩きはじめる。
キッチンへと入って。
ポットを温める。
まぁ、さっき彼がわたしと彼のと、入れてくれたから、まだある程度は、温かかったけど。
それでも。
もうすぐ来るんだったら、温かい飲み物をあげたい。
まだ寒いもんね。
陽射しはあたたかいけど。
風は冷たいから。
用意をしはじめれば、リビングでは、彼と子供たちの声が響いて。
でもやっぱり、わたしは不安。
大丈夫だとは、思う。
でも、万が一ってことも、ある。
そう、ある。
「ただいまー」
玄関の鍵、開けとくからね。
そうメールを出したのは、三十分前。
鍵を開けたのは、十分前。
だから彼女のこの言葉は、よくわかる。
声のトーンは明るい?
低くはないけど…。
「どうだった?」
キッチンから出て、玲ちゃんに駆け寄っていく、二人の後ろ姿を見つつ、声をかける。
彼女は玲ちゃんを見ていたけれど。
わたしへと、視線の先を移してくれて。
「落ちるわけないじゃない」
そう、言葉をくれた。
「……だよねぇ〜…」
「あからさまにほっとしすぎ」
「だってさー」
「玲は変わんないね。どうせ、こっちの気持ち、勝手に想像して、心配してたんだろうけど」
「……そうです」
「大丈夫だって。しつけはちゃんとしてるし。…っていうか、あんまり堅苦しいとこじゃなかったし」
「だろうね…」
「というより」
玲が行ってたんだから、当たり前か。
加えられた言葉に、ちょっと嘘泣きなんてしてみる。
でもそれに対して、何か言ってくれるわけもなくて。
誰も何も、言ってくれなくて。
みんなはそれぞれ、リビングへと入っていく。
それを追うように、キッチンへと入って。
ポットとカップを手にして、リビングへ。
「というわけなんで、四月からよろしくお願いしますね」
「…わかってる」
遊んでる三人を置いて、二人は睨みあって。
わたしは少し、表情を崩した。
一ヶ月に一回くらいかな?
割合的に。
そう、日常の中に、これから増えるんだろう事柄を考えながら。
わたしは苦笑で、息を吐き出した。
END
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