みんなで出掛けようか?

天気もいいし
青空だし
太陽も笑ってるし
雲もなんだか ふんわりだし
風も穏やかだし

仕事も入ってないし

君もそうでしょ?
家で二人と遊んでるんだから

だったら 外に出ようよ!

天気もいいし
青空だし

……あとは略すけど

だから みんなでお出掛けしよう!




Engel 3





洗濯物を干し終えて。
わたしは青い空に、両手を掲げた。
気持ちいいぐらいの青空。
そこに浮かぶ雲は、ふんわりとしてて、ゆっくり流れてて。
それを眺めていたら、窓を叩く音が、耳に届いた。
同時に、少しくぐもった、「マー」なんて声。
振り返れば、そこには、小さな姿があった。
外に出られないように、窓は閉めているから、それ以上は来られないのだけれど。
ペタッと、手のひらが張り付いて。
その小さな手と、彼女の表情に、笑みを零す。
と、彼女の姿は、彼の腕に、軽々と抱き上げられた。
それを見て、ようやくわたしは、家の中へと入る。
「窓閉めといて、正解だったね」
「もうこいつら、ハイハイできるからな」
すぐに捉まり立ちもするようになるよ、なんて。
この前電話した時、親友は話していた。
窓を閉めて、息を吐いて。
それから。
「朝は?」
そう、彼に聞けば。
彼も部屋の中を振り返る。
「さっき、そこで遊んでたんだけどな」
「マー」
「何ー? 颯」
手を伸ばしてくる颯を、彼から奪うように、抱き上げて。
嬉しそうに笑ってくれたのに、ぎゅっと抱き締める。
そうすれば、嬉しそうな声が上がって。
彼と同じ髪を撫でてあげた。
そうしてから、彼を見れば。
彼は穏やかな表情で、そこにいて。
かと思うと。
「パー!」
という声に、慌てて踵を返す。
彼の後ろから、伺い見れば。
ソファの後ろから、その姿はひょこっと出てきた。
「そこにいたのか」
ずーっと楽しそうにしてる朝を抱き上げて。
小さな手に、何度も頬を叩かれながらも、彼も笑う。
彼に今、幸せかと聞けば。
必ず、肯定の言葉を綴ってくれるだろう。
それは、彼の笑顔を見れば、わかること。
「そう言えば今日は、珪は仕事ないの?」
「ああ。おまえは?」
「全部終わった。だから暇」
「そうか」
彼と向かい合って話してる合間に。
腕の中の二人も、顔を見合わせて。
お互いに、顔を触ったり、身体に触れたりしてた。
仲いいね。
思いながら、くすりと笑う。
「今日、どうするんだ?」
不意の問いに、わたしは視線を上げる。
どうしようか?
考えて。
外へと、わずかに瞳を向ける。
空は青空。
風は穏やか。
雲はふんわりで、ゆっくりで。
天気がいい。
太陽はずっと、顔を出してるって、朝の天気予報は言ってた。
だから、今日は洗濯、いっぱいしたんだけど。
「お出掛け…しようか」
ポツリと零せば、彼は笑う。
公園に行くなら、それなりに仕度をしないといけない。
おむつとか、お弁当とか。
離乳食とか、そのほかいろいろ。
でも、ただ買い物に行くだけなら、そんなでもない。
「どこに?」
ほら、聞いてきた。
思いながら、うーん、なんて、唸りつつ、考えて。
「珪は行きたいとこある?」
結局、そう聞く。
思いつかなかったわけじゃない。
行きたいところが、多くて。
決められなかっただけ。
朝と颯の二人に、見せたいと思うものが、多すぎて。
「とりあえず、買い物には行かないとな」
「買い物? 何で?」
「冷蔵庫の中」
言われて。
そこがどんな状態だったかを思い出す。
そうしてから、苦笑。
「少ないですね」
「そういうこと」
「んじゃ、買い物に行きますかー!」
颯の姿を、上へと上げる。
急なことに、びっくりしてたみたいだったけど。
朝が嬉しそうに笑ってたから、颯が泣くことはなかった。


本音を言えば、動物園か水族館に行きたかった。
きっと、朝も颯も、興味を示してくれるだろうから。
でもそれは、歩けるようになってからの方がいいのかなって。
ちょっとだけ、考えてた。
だって、そうすれば。
自分の足で、行きたいところに行けるでしょう?
自分が見たいものを、自分で選べるんだから。
そうやって考えると、、まだ早いのかなーって。
だから今日は、買い物で我慢しましょう!
駐車場に辿り着いて、車は止まる。
走っている最中、ずっと窓の外を眺めていた二人のシートベルトを外してあげて。
さてどうしよう?
なんて、考える。
と、彼が颯のいる方のドアを開けた。
そのまま見ていると、彼のそばにはカートがあって。
颯を、その手もとの場所へと、座らせた。
「朝」
言われて。
朝の姿を抱き上げる。
きょとんとしている、その姿を、彼へと手渡して。
そうしてから、わたしは後部座席から降りた。
彼は朝を抱いたまま、颯の相手をしてくれていて。
朝は上にいながらも、下にいる颯に、一生懸命、手を伸ばしてて。
颯はそれに、手を挙げ返すことはなかったけど。
楽しそうに、笑ってた。
「何食べたい?」
とりあえず、買うものを決めなきゃならないから。
駐車場から店へ歩いているこの時に聞く。
車に乗っている時は、わたしはそれどころじゃなかったから。
二人の相手で、ちょっと大変だったから。
でも、楽しい時間でもあるんだけどね。
――かと言って。
ここで聞いたとしても、結局、余計なものもあれこれ買っちゃうから、意味がないんだけど。
「おまえは?」
彼からカートを受け取って。
颯の目の前に立って、それを押しはじめれば、問い返された。
彼はいつもこうだと、わたしはちょっと思ったりして。
わたしが先に聞くと、必ず聞き返してくる。
彼が先に聞いてきた時は、答えを用意してる時だから。
わたしは彼に、聞き返す。
わたしの中で答えがある時は、そうしないんだけど。
つまり今、彼は答えがない。
わたしも実は、答えがない。
「買い物しながら決める?」
「…だな」
答えを出して、颯を見れば。
わたしの顔を見上げていて。
そうして、わずかに首を傾げてた。
だからわたしも、首を傾げて見せる。
頬を突つくと、ふにゃって笑ってくれる。
朝はと言えば、彼の肩によじ登って。
彼の肩越しに、後ろを見てた。
時折、指を差しながら、声を上げて。
それに、颯が興味を持って、わたしの後ろを見ようとする。
彼は朝の身体をしっかりと押さえていて。
わたしは朝のことを気にし続けている颯の相手をして。
颯も朝も。
相手のいる場所を、羨ましがったりはしない。
ただ、とりあえず、見てるだけ。
籠を載せて、店の中へと入る。
野菜売り場で、わたしは、トマト食べたいなーとか考えて。
ミニトマトを手にすれば。
颯が不思議そうに、それを見てた。
だから、「ミニトマトだよ」って、教えてあげる。
それが嬉しかったのか、颯はにっこりと笑って。
わたしもにっこりと、微笑んじゃったりして。
「朝がにんじん見てる」
言われて、彼に視線を移した。
「…何で人参?」
「知らない」
「………」
どうしてかを考えながら、朝の視線の先にある人参を手にする。
オレンジ色だから?
でもなぁ…。
「そう言えばこの前、食わせた……」
「人参? 朝に?」
「ああ。颯にも」
わたしが忙しい時は、彼が食事を作ってくれるから。
離乳食を作ったとしても、不思議じゃないんだけど。
「…嫌がった?」
「いや? 逆に颯の方が、嫌そうな顔してた」
「好き? 朝」
朝の目の前に差し出せば、きょとんとした顔をしてた。
けど。
颯の目の前に出したら、わずかに眉根を寄せてた。
「ホントだ。颯は嫌いみたい」
「結構甘くしたんだけどな」
「蜂蜜とか入れた?」
「ああ。入れた」
「うーん…」
甘いのがあんまり好きじゃないのかな?
思いながら、今度は素の甘さで勝負してみよう、とか考える。
とりあえず、朝のリクエストだし、と、人参を籠へと入れた。
「かぼちゃ、買ってこっか?」
「どうして?」
「わたしが食べたい」
「はいはい」
そんな感じで、野菜買って。
お肉に関しては、彼が何でも入れようとするから、待ったかけて。
魚は逆に、彼がわたしを止めてた。
「そう言えば、二人とも、歯は順調に生えてる?」
「ああ。だから少し、荒くしてる」
「さすが。――って言うか、わたし、あんまり二人にご飯作ってないの、バレバレだね」
「だな」
肯定されて。
事実だから仕方がないんだけど、わたしは頬を膨らませた。
「あとは…」
「飲み物?」
「牛乳」
「ミネラルウォーターも頼む」
そんなことを話してると、朝が大きな欠伸を零した。
間髪入れずに、颯まで。
四人で買い物って、初めてだもんね。
この子たちなりに、はしゃいでいたのかもしれない。
邪魔にならない場所に、移動して。
わたしは颯を抱き上げる。
「先にこいつら、車に乗せてくるか?」
眠そうな朝の背中を、テンポよく叩きながら、彼が言う。
その方がいいかな?
考えていると、下から声。
「…マー」
「何? 颯」
きゅっとわたしの服を掴んで。
颯は平気だって顔をする。
一生懸命、欠伸を噛み殺してる感じ。
「颯はここにいる?」
返事はないけど、瞳がそう言ってる感じ。
「じゃあ、さっさとすませるか」
颯がそんな状態だからか、朝まで我慢してて。
わたしは小さく、吹き出しちゃった。
颯が座っていた場所に、彼が朝を座らせる。
視点が変わったからか、朝の眠気は、少し、取れたみたいだった。
けど、颯は無理そうで。
でも、寝かせようとすると、嫌そうな声を上げたから。
わたしは無理に、寝かせることはせずに、抱いておくだけに留めた。
行く前も、二人で遊んでたみたいだし。
寝ちゃってもいいよ。
そんな風に、小声で言えば。
やっぱり嫌そうに、声が上がって。
彼がカートを押すのを、ゆっくりと付いていく。
颯が少しでも、興味を示した物を、手に取って。
よく見える場所へと、持っていってあげて。
颯が眠らないように、手伝ってあげる。
「玲。財布」
レジのとこで言われて、わたしは肩から提げていたバッグを、
彼に見えるような場所へと来るように、身体を回転させる。
鞄を探って、財布を彼が出してる最中。
颯はじっと、レジの中の店員さんの姿を見てた。
結構、気になるもんね。
思いながら、颯に見やすい位置へと、わたしは体勢を変えた。
「双子なんですか?」
打ち終わったのか、聞かれて。
わたしはそうなんですよー、なんて声を上げる。
「可愛いですね」
「ありがとうございます」
子供を誉められると嬉しい。
赤ちゃんが好きなのか、指で手を触ろうとしたんだけど。
颯は嫌そうに、わたしの腕の中で逃げて。
「ごめんなさい。人見知り、しちゃうみたいで…」
「いえ」
笑顔で答えてくれたけど。
悪かったなぁ、なんて思う。
朝なら、笑って、受け止めるんだけど。
そうやって、会計を終えて。
彼が袋に、買ったものを入れてくれる。
その間、朝と颯の相手を、わたしはずっとしてた。
颯を、朝の目線の高さに下げて。
それじゃわたしがきついことに気づいて、膝を折って、身体を屈めて。
でも朝はもう、本当に眠そうにしてたから。
身体を起こして、その小さな頭を撫でる。
二人抱えるのは、ちょっと辛い。
そうしていると、彼が籠の中に、買い物袋を入れた。
それから、朝を抱き上げて。
器用に片手で、カートを動かしていく。
そのあとを追いながら、颯を見れば。
颯は心配そうに、朝を見てた。
本当に仲がいいね。君らは。
わたしは嬉しいよ。
思うと同時。
颯をぎゅーって抱き締めたら。
彼女は嬉しそうな声を上げてくれた。
彼が疑問顔で振り返ったけど。
何も言わずに、颯と笑ってた。
着いて、彼がドアを開けて。
朝を乗せたあとで、反対側のドアを開けてくれた。
そこから、颯を抱いたまま、わたしは乗って。
ドアを閉められる、その音を聞きながら、颯を座らせて、ベルトを締める。
彼がトランクに荷物を載せるのを、横目で見ながら、朝のベルトを締めて。
「また、みんなでどこか行こうね?」
眠ってしまった朝に、そう言えば。
「じゃ、玲が早く、仕事を終わらせないとな」
なんて声が聞こえた。
わたしの方が、家にいる頻度は多いんだけど。
なぜか、彼の方が子育てしてる。
アトリエが家にもあるから。
その理由で、彼はすぐに家に帰ってくる。
モデルの仕事はどうなのかって聞いたら。
今は子育てで忙しいだろうからって、あんまり入ってないんだって。
わたしが忙しいってことを、スタッフの皆さん、知ってるらしい。
ってことは、彼の言う通り、わたしが頑張って、仕事を終わらせないといけないわけで。
「…頑張ります」
運転席に乗り込んだ、彼の背中に、そう零す。
彼はくすくすと笑ってて。
颯はきょとんって顔をして。
朝は規則正しい寝息を立てて、眠りについてる。
別に、ささやかな幸せでいい。
それを感じるために、またみんなで、どこか行こうね?
思いながら、眠たそうにしはじめた颯の手を取って。
朝の手も取って。
同じだ。
なんて、彼に言ったら。
彼もふっと、笑ってくれた。

END

 

四人でスーパーに買い物に行ってほしい。
なんてお声を、前に頂きまして。
樹も、それを見た(メールだったので)時に。
こんな感じで行ってるのかなーなんて、思い浮かんでしまったので。
いつか書こうと思っておりました。
でも本当は、公園にでも行ってほしかったかなー、なんて(苦笑)。

戻る