彼女のことを聞いて
俺なりに…考えてみてた

俺は彼女に
何をしてあげられるだろう?

俺だって何か
できるはずだから




Engel 12





風景を見て。
何度かしか行ったことはないけれど、その風景は覚えていたから。
俺はその道を、そこに向かって、まっすぐに歩く。
二人はきっと、驚くだろう。
彼女もきっと、驚くはず。
でも、俺だって。
そう考えたら、動かずにはいられなくて。
見えてきた目的地に、一度、足を止める。
それから、また、歩を進めはじめれば。
「やめて!」
叫んだ声が、耳に入ってきた。
聞き知った声に驚いて、目を見開いて。
すぐに、駆け出そうとしたけれど。
「そうだよ! やめろよ!」
また、聞き知った声が響いたことに、なぜかほっとして。
俺は駆けることなく、歩いていく。
俺は、いじめられた経験はない。
彼女はあるらしいけれど、その時のことを聞くと、必ず苦笑するから。
きっと…アドバイスしたようなことは、彼女はできなかったのかもしれない。
考えたなら。
俺ができるのは、小さな、手助け。
たくさんの声の中で、門の前に立つ。
隅で、それは起こっていて。
砂場で遊んでいたらしい彼女の髪を、男の子が引っ張っているのが見えて。
それを必死でやめさせようとしている彼に、笑みが零れる。
確かに、彼女がされていることに関しては、腹が立つけれど。
それでも、二人が彼女の言葉を信じていることが。
そしてそれを、実践してくれていることが。
何だか、嬉しくて。
けれど、俺がしに来たのは、そういうことじゃない。
「朝! 颯!」
門に手をかけながら呼べば。
二人は顔を、俺の方に向けてくれて。
颯をいじめていた子も、手から力を抜いたのか。
金色の髪は、さらさらと、その手から零れ落ちた。
その、次の瞬間。
「「おとうさん!」」
二人同時に、呼んでくれて。
中へと入れば、二人でそばへと駆けてくる。
泣きそうだった、颯の表情は、もう笑顔で。
颯を助けようと必死だった朝も、同じように、笑みを零していて。
二人で俺に、抱きついてくる。
抱きとめて、颯を抱き上げれば。
俺の首に、しがみついてきて。
そんな颯を、朝は見上げて。
それでも、颯の表情は、笑みで。
笑って、いたから。
それを朝に、視線と表情で伝えれば。
「あれ? 珪?」
そんな声が、背後から上がった。
振り返れば、彼女の姿が、そこにあって。
開いていた門から入ってきた彼女に、朝が駆け寄った。
「颯は? 今日は平気?」
「またやられてたけど。でも、やめてっていえてたよ」
「そっか。朝は?」
「もちろん、たすけた!」
「よし!」
頭を撫でてもらって。
朝は嬉しそうに笑う。
それから彼女は、俺に瞳を向けてきて。
「颯。帰ろう」
「うん!」
「朝も、帰る用意!」
「わかった!」
下へと下ろせば、二人は手を繋いで、駆けていく。
その背中を見て、彼女と笑いあって。
「確かに、わたしが毎日、迎えに来てたもんなー」
直後放たれた言葉に、俺は小さく、声を漏らして笑った。
「自分が来れば、颯の髪は特別じゃないんだって、思うかもね。ほかの子達も」
「ああ。そう思った。俺も」
言えば、彼女もくすくすと笑って。
二人の用意が終わるまでの間に、話しかけてきた保育士の先生と、話しはじめる。
俺だって、彼女の父親。
それに、彼女が俺と同じもので悩んでいるのなら。
手を差し出せるのは、きっと、俺しかいないだろうと、思ったから。
「……ちょっと、悔しいかも」
帰り道。
彼女が小さく呟いた一言に。
俺はやっぱり、笑ってた。

END

 

前回の続き。
完璧に続き。
書きたかったから書いただけv(汗)

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