考えなかったかと言われれば
考えていなかった

素直にそう
言うしかない




Engel 10





「思ったんですがー」
彼女の親友の家族が帰ってしまったあと。
小さな二人は、淋しそうな表情で、俺たちのそばにいて。
その瞳は、もう来ないのかと。
そう――問うていそうだったから。
頭を撫でて。
きっとまた来るから、と。
そう言葉を紡いだのは、彼女だった。
安心したように、二人はリビングの中央で遊びはじめて。
そんな二人の姿を見ていた時に。
彼女が不意に、口を開いた。
「?」
「玲ちゃんが、ウチに来るとさ」
「? ああ」
「麻衣が簡単にここに来られちゃうと思うんですけど」
「?」
わかんない?
眉根を寄せれば、彼女は苦笑で、そう零して。
あごに人差し指を当てて、考えはじめる。
月宮が簡単に来られる……って?
「噛み砕いて言うと、玲ちゃんをウチで預かると。同時に、麻衣がウチに来る理由を与えることになるんですよ」
「……?」
「子供に会いに来たと言った麻衣を、君は拒否出来る?」
「…あ」
説明されて、思わず、そんな言葉。
……そういうことか。
「多分、麻衣のことだから。口ではそう言うと思う。でも行動は、どうかな?」
「………」
「わたしは別に、どっちでもいいんだけど」
「………」
「まぁ、まだ五年あるし。その中で変わるかもしれないし」
「……だな」
変わらないと、思ってはいても。
彼女もきっと、そう思ってはいても。
変わることを願って、そう言うしかない。
彼女はまぁ、半々だろうけど。
「それを狙っているような気が、しなくもないなー…」
「…まぁな」
「信頼されてるのかなーとか、思ってたんだけど」
「されてるだろ?」
「…うん。でも、それ以上に」
「それ以上に?」
「……愛されてるなーって」
「………」
「自分の子供を使っちゃうほど、麻衣はわたしに会いたいんだなーとか」
「………」
「颯か朝、どっちか麻衣のウチに行くー?」
「…行かせない」
静かに言い放てば。
二人の天使に向き合っていた彼女は、その表情のまま、俺を見て。
けれどすぐに、その表情を曇らせて。
「使わせない。おまえが、月宮に会いに行くための理由には」
「…そうだろうけど」
「だから、行かせない」
「………」
放って、朝を後ろから抱き上げる。
と、すぐに声を上げて、手を伸ばした颯は。
その勢いのまま、立ち上がろうとして。
片手を付いて、片手を伸ばして。
そんな颯に、朝も声を上げていて。
俺はそんな二人のために、颯のそばに、腰を下ろした。
「それに。離したらかわいそうだろ? この二人」
「………」
加えれば、彼女は大きく、息を吐いて。
「確かにねー」
そう、零して。
俺の隣りに、座り込む。
「とはいえ、二人共っていうのは、嫌だしなー…」
「当たり前」
「で?」
「?」
「玲ちゃんは、どうするの?」
改めて聞かれて。
俺はべつに、としか、答えられなくて。
「別に…って?」
「月宮が来るっていっても、毎日じゃないし」
「…まぁ」
「泊まったとしても、一日ぐらいだろ?」
「だろうね…」
「がまんする、だったら」
言えば、彼女はくすくすと笑い出して。
「そうしてください」
なんて。
含み笑いのまま、綴ってた。

END

 

前回の続き…。
リクエストを先に…とも思ったんですが。
やっぱりちょっと、前置きを。
でも、次辺りに、リクエストは昇華しようかな……。

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