| 怒るかな? でも どうしても言いたいんだよね?
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思い出したことに、手を止めて。
ぼんやりと、考える。
というか。
出した答えが、とても合っているような気がして、ならなくて。
「あのさー」
「ん?」
リビングに首を向けて、声を発すれば。
彼はまだ、雑誌を眺めていて。
それでもまぁ、よかったから。
わたしも、止めていた手を動かしていく。
お鍋の中を、一回かき混ぜて。
焦げていなかったことに、ほっと息を吐いた。
「君が読んでくれた絵本、あるでしょう?」
「? ああ」
多分、彼からすると。
急に、何の話だ?
とか、思ってると思う。
絶対。
「それが?」
こうやって、先を促してくるのが、いい証拠。
何の話か、気になってるから。
知りたいから。
そうしてくる。
「あれってさ。お姫さまが王子さまを待ってるんだよね?」
「……ああ」
「教会で」
「そう…だけど?」
火を止めて、皿に盛って。
そうしながら、また、口を開く。
「で、その話の通りっていうのも、おかしいけど。君は遠い国に、行っちゃって。わたしは教会で待つことになったじゃない?」
「………」
「その時は、君が王子で、わたしが姫?」
「………」
お鍋から移し終えて。
それを持って、リビングに移動する。
彼を見れば、何が言いたい? って感じで、不満そうで。
それを視界の端に入れながら、皿を置いた。
怒るかな?
怒りそうだよなー…。
でもここで止めても、結局、彼はわかりそうだし。
踵を返して、また、キッチンに戻る。
「でも途中から、わたしも旅に出ちゃって。君が教会で待つことになったでしょう?」
「…つまり?」
うわ、怖っ!
思って、ちらりと後方に視線を送る。
思いっきり、眉間に皺が寄ってます。珪さん。
「あのー…だから」
「だから?」
進んで、茶碗を手にして。
炊飯器を開けた。
「途中から、配役が逆になったと言うか、何と言うか……」
「………」
茶碗に盛って、そばに置けば。
それは彼の手に、収まった。
それについ、ビクッと肩が震えたのは、許してほしい。
本当に彼は、足音とか立てずに近寄ってくるから。
こういう時、気が抜けない。
「つまり。おまえは。俺が姫で、おまえが王子って言いたいのか?」
ごく近くで、彼の声が響く。
お、怒ってるよ…。
当たり前かもしれないけど。
「僕が王子ってことはないと思うよ?
だって君を迎えには行ってないし」
「でも」
「うん。でも、君は姫かもね」
結構、ビクビク。
内心、ビクビク。
そうしながら、自分の分もよそって。
蓋を閉めれば。
それは、わたしの手から取り上げられて。
彼の茶碗でさえ、少し、離れた場所に、置かれてて。
「珪?」
言いながら、振り返れば。
案の定と言うか、何と言うか。
わたしはすっぽりと、彼の腕に、包まれて。
首筋に、触れたのは、彼の唇。
「珪?」
「べつに…そんなの、どうでもいい」
「そうですか」
そう言いながら、怒ってたくせに。
言わずに、彼に腕を緩めさせて。
身体を回転させる。
確かに彼は、怒ってなくて。
わたしはほっと、息を吐く。
「珪が姫っていうのは、結構いいかもね。似合ってるよ?」
「嬉しくない」
即答にくすくす笑う。
そうしながら、ぎゅっと抱き着いて。
腰に手を回して。
見上げれば。
軽く、唇が塞がった。
それに、くすくすと笑う。
「でも、わたしが姫でも、困るでしょ?」
「…そうか?」
「わたしが困るの」
「そうか」
ぷぅと頬を膨らませれば。
彼はくすくすと笑い始めて。
わたしをぎゅって、抱き締めてくれた。
「ガラじゃないので」
「確かにな」
「…即答されるのも、何か……嫌かも」
胸にもたれながら言えば。
彼はなおも、くすくすと笑って。
「でも俺も、教会でおとなしく、待ってなかった」
そう、言葉を落とした。
あー、そうだねぇ。
なんて言って、考え直して。
「じゃあ君も、姫じゃなくなったね」
「だな」
頭を撫でられて。
髪が引っ張られて。
でもそこで、わたしは彼の胸を押した。
彼は眉間に、皺を寄せて。
それでも。
「ご飯、冷めちゃってるので、またあとでね?」
背伸びして、口づけて。
憮然としている彼の手に、茶碗を乗せて。
わたしも、自分のを、片手に持って。
逆の手で、彼の手を引いて、リビングへと歩く。
もう、何だっていいか。
考えて。
「玲」
「ん?」
「俺がやる。片付け」
「それはどうも」
「だから、逃げるなよ?」
「当然!」
彼が腰を下ろした隣りに座って。
茶碗がしっかりと、置かれてから。
わたしは彼に、抱き着いてみたりした。
END
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