「急に何を言い出すのかと思った」

おまえはそう言うけど
俺は本気

苦笑してるおまえに
目もくれず

手に取ったのは
今 俺が
口にした色をしたもの




誰のためでもない 君のために





「可愛い」
彼女は言って、それを撫でる。
けれど、そうしただけ。
「綺麗な色だね」
言って。
今触っていたのとは違う色に、視線の先を変える。
手に取ることはしない。
きっと、理由を聞けば。
似合わないから、の一言が紡がれる。
知っているから、俺は何も言わずに、彼女がどれを手にするのかを、ただただ待ってた。
リビングにある、低いテーブルの。
そのクロスを変えたいと言ったのは、彼女で。
俺はそれに、驚いたものの、首を縦に動かした。
彼女が好きな色は知っている。
知っているから、きっと、その色に収まるんだろうことも、わかっている。
わかっているけれど、それが少し、おもしろくないとも思えてしまう。
べつの色があってもいいんじゃないか。
そう思うからこそ、俺は彼女の言葉とか。
それこそ、一挙一動を、見逃さずにいる。
「迷うなー。こんなにいっぱいあると」
案の定、彼女が手に取ったのは、淡い緑色。
今のテーブルクロスは、薄い水色だから。
似たような色。
そう思ってしまったのは、仕方のないことだと思う。
「珪はどれがいい?」
俺の好きな色を知っているのにもかかわらず、彼女はそう聞いてくる。
けれど、彼女がそう聞いてきた理由も、わからなくはないから、俺は振り返ってくれた彼女の隣りに、歩を進めた。
テーブルクロスと言っても、全体にかけるわけじゃない。
覆うんじゃなくて。
中央にかけるだけ。
だから、テーブル自体の色も見える。
そのテーブルの色が、俺の好きな、白だから。
白い布を選んだとしたら、意味がない。
それを思ってのことは、俺にもわかってた。
……から。
「これ」
そう言って、その色の布を差し出した。
彼女は目を丸くさせて、驚いていて。
「本気?」
「本気。ピンク色」
「………」
目の前に差し出せば。
彼女はおずおずと、それを手に取ってくれて。
それからじっと、見続ける。
考えているのだろうけれど。
彼女は何も言わずに、それを見ているだけで。
「だめか?」
「…ダメじゃない…けど……」
「けど?」
「ソファの色と、合わないので……」
「じゃあ、ソファにも布、かければいいだろ?」
「…うん……」
そうなんだけど。
呟いて、彼女はまた、じっとそれを見る。
「ソファのは? 何色?」
「同じ色」
「………」
言えば、彼女は苦笑して。
それから、「可愛いの、好き?」なんて、聞いてくる。
好きかどうかと聞かれれば、結構好き。
でも彼女は、そんな格好をしてはくれないから。
髪の色とあってるんだけどな。
思いながら、彼女の判断を待つ。
布に顔を埋めた彼女は。
そこからわずかに顔を上げて。
「これで足りると思う?」
そう、質問してきた。
それに、ふっと笑う。
「平気だろ?」
「大きいもんね、これ」
「ああ」
「端をちょっと切って、テーブルライナー、作ろうか」
「そうだな」
渡されて。
受け取って。
くすくす笑いながら、彼女の手を取る。
「クッションカバーも作り直そうか」
「何色?」
「赤とか…暖色系」
「わかった」
言われた色に、瞳を向けて。
そうすれば、彼女は手に力を込めてきた。
「わたしもね、可愛いのは好きなんだけど」
「?」
「汚すの、怖くなっちゃうんだよね」
「………」
「変に、行動とか、おとなしくなっちゃうし」
「へぇー…」
それは知らなかったな。
思いながら。
彼女の違う面が見られるのかもしれない、なんて。
彼女の笑顔を見続けてた。

END

 

二次創作書きさんにたった10のお題』より、お借りしました。
二つ目は『ベビーピンク』。
…難しい……。
玲にはピンクのイメージないので(というより、そっちの方のイメージがない)。

web拍手に置いておりました。

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