窓の外を見た瞬間。
今日の計画は、練り直しだな、なんて。
考えて。
机の上の携帯を、手に取った。
雨音のそばで
起きた時。
青空は見えないまでも。
ここまで、崩れてはいなかったのに。
考えて、彼は小さく、息を吐き出す。
カーテンを開け切った、窓の外では。
小さな透明の雫が、上から下へと、降りてきていて。
今日は――外で一日、過ごす予定だったんだけどな。
窓を開けて。
灰色の空を見上げて。
彼はまた、ため息を零した。
振り返って、時計をその瞳へと映して。
待ち合わせの時間まで、あと二時間。
それを確認すれば、テーブルの上に置いていた、携帯電話が、光を発する。
そのあと、遠慮がちに一度だけ、音が鳴って。
それはすぐに、消えてしまったのだけれど。
携帯を手にして、仕返しのように、さっき、電話をかけてきた相手に、同じことをすれば。
すぐに、同じ相手から、電話はかかってくる。
けれどまた、それはすぐに切れてしまって。
彼はくすくすと笑みを零しながら、履歴を表示して。
電話をかけて。
彼は耳に、携帯を当てた。
切る気はもう、なくて。
ただただ、その声を聞きたかったから。
『もしもし?』
コール音のあとで聞こえた声に。
彼は笑いを声に出してしまって。
『珪くーん?』
そう、電話の向こうの彼女に、不満の声を漏らさせてしまったのは、仕方がなかったのかも、しれなくて。
「悪い」
『もう! それより…今日のことだけど……』
「ああ、どうする?」
『…どうしようか?』
森林公園、行けないもんね?
言葉を聞いて、小さく、息を吐き出して。
彼女が何を思って、そこへと誘ってくれたのかはわからないけれど。
彼女の思いが流されてしまったようで。
そんな風に、思えてしまって。
「……なぁ」
『なぁに? 珪くん』
「行き先、変更して…俺の家、来ないか?」
『え?』
それは、最初から考えていたことで。
梅雨という時季なのだし。
そこで一日を過ごせる可能性は、最初から、低いと思っていたから。
なら、べつの場所を考えておくのが、あたりまえなんじゃないかと、彼は考えていたから。
彼女と過ごせる日を。
時間を。
不意にする気は、毛頭なかったから。
「待ち合わせしてた時間に、迎えに行く」
『え? え?』
「それとも、今から行くか? …優菜の仕度が終わってるなら」
『仕度は…終わってるけど……』
「じゃ、今から行く」
『え? ちょっ、珪くん?』
「ん?」
会話は終わったと思ったのだけれど。
彼女の声を断ち切ることだけは、したくなかったから。
話した携帯を、もう一度、耳のそばへと彼は上げた。
『………』
「どうした?」
『…いいの?』
「? ああ。いいから、言ったんだろ?」
『うん…』
そこで、言葉は切られたけれど。
彼女からは、『待ってるね?』と、答えが返ってきて。
通話を切ったのは、ほぼ同時。
彼女が、今日の約束を、なかったことにしよう、なんて言う前に。
そんな風に、焦ってしまった面も、あったから。
彼は大きく、肩を落として。
それでも一歩、足を踏み出した。
END
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