雨の日には
雨の日の 過ごし方何となくしか 知らないから
みんなで 考えたりもしたけど
一番は
あなたとの そんな日の過ごし方が
本当はとても
知りたい
雨音の中で
「ちょっとぉ、梅雨はどこに行ったのよ!?」
響いた声に、彼女は顔を上げる。
彼女だけではなくて、その場にいた全員が、言葉を発した人間を瞳で捉えて。
それぞれの反応を、見せていた。
「確かに今、暑いもんね」
「長いわよね、中休み」
「でも、来週からまた、崩れるって、予報は出てたけど…」
「この前さ、カキ氷のシロップ買いに、スーパーに行ったらさ。まだないなんて言われちゃってさー」
「ミズキだって、去年よりも早い時期に、日焼け止めクリームを買いに行きましたもの」
口にして。
大きくため息を吐いたのは、五人同時。
「雨が続くのも、憂鬱だけど」
「早めにアツくなるのも、やめてほしいよねー」
「どっちのがいいんだろうね?」
「どっちって…何が?」
問い返されて、彼女は笑みを浮かべ直して、口を開いた。
「雨の日と、暑い日」
言って、彼女は握っていたシャーペンを、ノートの上へと置く。
「どっちって…」
「ミズキはどっちもイヤ!」
「わたしも、どっちも嫌かなぁ? 雨の日は、体育館を使う部活、増えちゃうし。暑いとみんな、すぐに休憩取りたがるんだよね」
「私は、どちらかといえば、雨の日ね。赴きがあるもの」
「アタシはアツイ方がいいな。外で遊べないじゃん、雨だと」
「優菜ちゃんは?」
問われて、彼女はうーんと、声を上げた。
どちらも、嫌な部分はある。
でも、どちらもいい部分を、持ち合わせている。
「どっちでもいいかなぁ……」
「………」
「どっちも、楽しく過ごすことは、できると思うし」
「そりゃ、アンタはそうでしょうね…」
届けられた言葉に、彼女はにっこりと微笑って。
そして、徐に、席を立った。
「日誌、書き終わったから、提出してくる」
そう言って、歩き出す。
「戻ってきたら、遊び行こうねー」
その言葉を、彼女は背中で聞いて。
一度だけ振り返って、手を振った。
ここへと辿り着いた直後に、勢いを増した、雨音を聞きながら。
彼女はソファへと、腰かける。
そうしてから、首を回して。
窓を、瞳に映して。
「強くなったな、雨」
耳に入った声にも、彼女は視線を動かさずに、そこにいて。
それから小さく、肩を落とした。
「今日の予定、狂っちゃったね」
発して。
まだ、窓の外を、恨めし気に見ていたかったけれど。
彼女はゆっくりと、彼へと視線の先を移す。
「梅雨……だからな。仕方、ないんじゃないか?」
立ったまま、窓の外を見ている彼の顔を見上げて。
彼女は、そうだけど、と綴る。
彼に、ゆっくりしてほしかったから、今日は森林公園へと出向く予定だったのに。
朝起きて、外を見た瞬間に、だめだと肩を落としていた。
行き先を変えるために、電話をして。
その時に出された提案に、彼女が考えている間に、彼は話を進めて。
気がついた時には、行き先が彼の家に、決められてしまっていた。
彼がゆっくりできるのなら、べつにかまわないのだけれど。
逆に、彼女に気を使ってしまって。
疲れてしまったのなら、彼女の考えからしたら、本末転倒。
本当なら、誘わなければよかったのかもしれないけれど。
一緒にいたかったから。
彼のそばに、できるだけ長く、いたかったから。
結局、わたしがわがままだったから……。
息を吐いて。
彼女は、そばに座り込んだ彼に、焦点を合わせた。
出かけるのをやめるかと言われたら、必ず、悲しくなってしまうのは、わかっているのに。
そばにいてもいいのかと、気になって、仕方がなくて。
「珪くん」
「ん? どうした?」
「……疲れて、ない?」
向けられた緑に、一瞬、聞くことを戸惑ってしまったのだけれど。
彼女はゆっくりと、その言葉を紡いだ。
それに、彼は驚いたような表情を見せて。
けれど、次の瞬間には、笑顔を浮かべて。
「平気」
そう、彼女へと、答えを届ける。
「本当?」
「ああ。本当」
「………」
「おまえと、一緒にいるからな」
言われたことに、驚いて。
首を傾げて見せて。
それでも彼は、笑うだけで。
「何、したい?」
「珪くんは?」
「特にない。優菜は?」
「わたしも、べつに……」
ただ、一緒にいられれば。
それだけで、いいから。
言えなかったけれど。
同じ理由で、彼もしたいことがないのなら。
そうだったら、いいな、なんて。
彼女は考えて。
ふんわりと、笑みを浮かべた。
END
|