休みが続くのは
嬉しい
正直言って
――けど
頭を抱える原因にもなるそんな 休みの間
おまえと過ごすためには
どんな言い訳をすればいい?
会えないから
カレンダーを見て。
彼は息を吐く。
明日から、ゴールデンウィークとかいう連休に入って。
四日間、休みになる。
まぁ、彼の場合。
火曜日はバイトで消えてしまうから、ただ、休みが多いだけ、という気もするけれど。
だと――しても。
休みの間は、学校がないから。
世間が休みだと、彼女のバイトは、ないから。
会いたいと思ってはいても、会えなくて。
考えて。
彼は踵を返して、歩き出して。
けれどもう一度、首を回して、カレンダーに瞳を向けた。
何度見ても、日程は変わらなくて。
明日からの休みは、変わらなくて。
彼は大きく、息を吐く。
会いたいから、会えないと辛い。
けれど、そのままを伝えていい関係ではないから。
会う理由を、考えなければいけない。
明日から休みだから。
どこか行かないかと。
そう届けたら、彼女はどんな反応を示すだろう?
明日からの予定を聞かれたことは、覚えている。
何もないと、そう答えて。
それでも、バイトがあると。
ポツリと答えた。
「そっか。じゃあ、ゆっくり休みたいよね……?」
言葉を落とした彼女は、残念そうな顔をしていて。
それでも、見続けていれば。
彼女はそれに気づいて。
顔を上げて、笑みを浮かべていた。
誘おうと、思ってくれていたのかもしれない。
それなら。
誘っても、大丈夫かもしれない。
けれど、どこに行くかは決めていなくて。
決めてからでもいいかもしれないけれど。
彼女は、友達が多いから。
彼が誘う前に。
誰かに、先を越されてしまうかもしれない。
考えて。
そう…思ってしまったら。
いても立っても、いられなくなって。
彼はテーブルの上に放っていた携帯を、手にした。
会いたいから、会いたいなんて。
告げる勇気は、まだない。
それでも。
どこかに一緒に行きたいと、そう告げたなら。
一緒に、どこかに行こうと、そう…告げたなら。
結局は。
会いたいから、会おうと。
そう告げたのと、同じことになる。
思って、彼は折り畳みのそれを開けた状態で、手を止めた。
ディスプレイを見続けて。
それから、顔を上げる。
彼女は、気づかないかもしれないけれど。
可能性は、ゼロではないから。
怖さもあって。
それでも、想いを伴った言葉を届けたことも、あったけれど。
今まで、大丈夫だったから。
今回も……とは、思う。
けれど、今回も大丈夫だという保証も、なくて。
もしかしたら、今回は、断られてしまうかも、しれなくて。
思えば思うほど、怖くなって。
彼は携帯を折り畳んで、リビングを出る。
廊下をわずかに歩いて。
階段を、上がって。
上がり切ったところで、彼はため息を吐き出した。
弱気になるのは、仕方のないことだとは思っても。
それでも、電話をかけるぐらいの勇気は、持ちたい。
考えて。
思って。
彼は畳んだそれを、もう一度開けて。
彼女の電話番号を映し出した。
大事なのは、きっと勢い。
彼女の声を聞いたら、嬉しいと思うのは、わかり切っているから。
発信させるのに大事なのは。
ボタンに手をかける勇気と、勢い。
考えて。
通話ボタンに指を置いたと同時に、彼はそれを押した。
耳に当てて、コール音を聞いて。
あんなに怖さを抱いていたはずなのに、今は早く出てほしくて、仕方がなくて。
それに気づいて、彼は小さく、失笑を零した。
同時に。
『もしもし? 珪くん?』
そう、声が聞こえて。
彼はほっとして、肩を下ろす。
『どうしたの?』
問われて。
口にするのに必要なのも。
勢いだと、そう思えば。
「明日から…休みだろ?」
『うん』
「だから…どこか行かないか? 一緒に」
言葉は、すんなりと、口を衝いて出てくれて。
彼はまた、ゆっくりと歩き出す。
部屋に入れば。
『珪くんは、行きたいところ、ないの?』
断りの意味を、決して含んではいない言葉と。
声の明るさに。
彼はふっと、笑みを零していた。
END
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