考えなきゃいけないの
毎日をあなたと過ごすため
あなたの笑顔を見続けるため
わたしはがんばって
考えるの



会いたいから




何でこんなに休日が続いてるんだろう?
なんて、彼女は思って、息を吐く。
いつもなら楽しみな休日も。
何日も続くと、頭を抱える原因になってしまう。
カレンダーを見れば、そこには誰が書き込んだのか、『
GW』の文字が書かれていて。
それを見て、彼女はまた、大きく息を吐いた。
「何、ため息吐いてんの?」
ソファの隣りに座った母親を見て。
彼女は眉尻を下げる。
それから。
「お母さん」
「なぁに?」
「何でゴールデンウィークってあるの?」
「は?」
聞き返されて、彼女は一度、口ごもって。
それでも、言葉を続けた。
「だって、学校ないし。友達に会えないでしょ?」
「友達に電話して、遊びに行ってくればいいじゃない」
「……向こうの都合だってあるでしょ?」
「……向こう?」
「え?
うん……」
「それって、本当に友達なの?」
「友達…だよ?」
「名前は?」
「え?」
「名前」
「……葉月、珪くん…」
「………」
名前を紡ぐだけなのに、どきどきして。
頬が赤くなったような、そんな気さえして。
でも、気だけではないのだと、頬に手を当てて、確信した。
「それって、友達なの?」
「う、うん…」
「………」
「お母さん…?」
「つまり、何も言ってないし、言われてないのね?」
「!」
言われたことに、焦って。
彼女は一人で、わたわたと慌て出す。
それから、頬に思い切り、手を当てて。
「い、言ってもないし、言われてもない…」
そう、何とか答えを紡いだ。
母親の顔を見られなくて。
頬に手を当てたまま、下を向く。
言うって、何を?
というのは、わかっているけれど。
混乱しているからか、彼女にはわからないままで。
言われるって、何を?
少しだけ泣きそうな顔で、そう思って。
彼女は思い切り、瞼を閉ざした。
「都合、聞いたの?」
「……何となくしか、聞いてない」
「答えは?」
静かな問いに、心を落ち着かせて。
彼女は瞼を上げる。
ちらりと母親の顔を盗み見るようにして。
見えた笑顔に、小さく息を吐いた。
「ちゃんとは…聞いてないの」
「どうして?」
「だって、いつも忙しそうだし。お休みの日ぐらい、しっかり休みたいかな、とか。そんな風に、思っちゃって……」
「聞けなかったのね?」
促されて、こくんと頷く。
それに落とされたのは、失笑で。
ゆっくりと、彼女は顔を上げた。
「聞いてくれば?
会えるかもしれないじゃない」
「でも……」
「四日間、会えないで、そんな風に落ち込まれてる方が嫌よ。家の中が、暗くなっちゃうでしょ?」
「お母さん……」
「聞くだけ聞いてみなさいよ。何も四日間、全部っていうわけじゃないんだから」
「…うん……」
「………」
欲を言えば。
許されるのなら。
四日間、すべて、彼に会いたくて。
すべてを独占、してしまいたくて。
「会いたいなら、理由、作らないとね」
「うん…」
「四日あるんだから、最低四つ?」
「………」
「考えなさい。それから、聞いてみなさい」
「四つ……」
「行きたい場所なら、四ヵ所。見たいものなら、四つ」
「会いたいからじゃ、ダメ?」
「それで断られたら、傷ついちゃうでしょ?」
「そうだけど……」
考えはじめて。
それでも、それからすぐに音楽を奏ではじめた携帯に、肩を竦ませた。
驚いてしまった理由は、二つ。
一つは急だったから。
もう一つは、彼用に設定した、曲だったから。
「ご、ごめんね?
お母さん」
謝罪をすれば、母親は手をひらひらとさせて、離れていく。
その背中を見送りつつ、携帯を開いて、通話ボタンを押した。
「もしもし?
珪くん?」
『…ああ』
「どうしたの?」
『明日から、休み…だろ?』
「うん」
『だから…どこか、行かないか?
一緒に』
耳に直接入ってくる声だけで、嬉しかったのに。
その言葉を聞いて、彼女は腰を上げる。
明日からの四日間、どこに行こうか?
それを、ゆっくりと、彼と二人で、考えるために。
部屋に置いてある雑誌を開こうと、思い立ったから。
「珪くんは、行きたいところ、ないの?」
そんな風に聞きながら。
彼女は一段一段、しっかりと階段を上っていった。

END

 

20040503のペーパーに載せてました。
母親との会話を早めに終わらせるつもりが、終わらず。
あれあれー? とか思いながら、珪くんを出すのが遅くなったのでした(悔しい)。

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