目が合って。
そして、笑いあう。

それだけで、あたたかくなる。

ひとりじゃないって。
強く、思える。



ミナモト




手を引いてもらって。
そうしながら、人ごみの中を歩いていく。
決して早くはない足取りだけれど。
それでも、手を引かれてしまうのは。
背の高い彼しか、人があまりいない場所を見つけられないせいかもしれなくて。
手を繋いでいるから、彼とはぐれることはないけど。
でも、少しでも遅れてしまったら。
わたしたちの間には、人が入ってくる。
そうすれば必ず、手は離れそうになって。
そのたびに、彼が気づいて、引き寄せてくれる。
げたは歩きにくいから。
浴衣も、動きづらいから。
いつも、今度はやめようって、思うのに。
彼の嬉しそうな笑みを、見たいから。
着てしまって。
そしてたぶん、今日も。
家に帰って、わたしは思うんだろうな…。
小さく、息を吐く。
その間にも、歩みは止まることはなくて。
わたしは必死に、ついていく。
手は繋がっているのに。
目の前に、彼はいてくれているのに。
ひとりだと思ってしまうのも、毎回のこと。
きゅっと、強く握って。
わたしがここにいることを、彼に届けてみる。
彼がここにいることを、確認してみる。
見上げれば、星は瞬いていて。
歩道は人がいっぱいで。
両脇には、屋台がたくさん、並んでいて。
彼も、そばにいてくれる。
それでも。
やっぱり、不安。
思っていたら。
「あった」
そう、小さく届けられる。
周りのざわめきにかき消されて。
それは本当に、微かな声だったけれど。
彼の声だと、わかったし。
言っていることも、わかった。
でも。
「何が?」
そう聞いたのに、彼は歩みを止めずにいて。
わたしは常に、引っ張られて。
でも。
それは、少し外れた場所で、終わりを告げた。
「珪くん?」
「ちょっと、待っててくれ」
こくんと頷けば、彼は離れていって。
わたしは一人で、そこにたたずむ。
人の流れは、あるけれど。
本流から少し離れたからか、あまりなくて。
わたしのように、立っている人ばかり。
それを眺めてから、わたしは小さく、息を吐いた。
夜だから。
……かもしれない。
考えて、空を仰ぐ。
星は綺麗で。
時々、瞬いて。
小さな悩みって、そう思えるけど。
でも、地上に目を向ければ、やっぱり不安で。
彼が行ってしまった方を見て、眉尻を下げる。
まだかな?
ちょっとって、どれくらい?
受け取ってくれる相手がいないから、投げられるはずもなくて。
その問いは、わたしの中で燻って。
そして。
「悪い」
その言葉と共に帰ってきた彼の姿に、消えた。
緩く首を振って。
彼が目の前にやってくるのを、見て。
「何買ってきたの?」
手に持たれていた紙袋に、わたしは首を傾げる。
明らかに、今、どこかで買ってきたもの。
「昼間、ここ通って。で…、並べてたから」
「覚えてたの?」
頷かれて。
同時に、短い肯定の言葉も返って。
出されたのは、バレッタ。
きらきらと光るのは、ガラスの飾りで。
「…これ……」
「手作りだって」
「本当?」
「ああ。聞いた。屋台の人に」
差し出されたから受け取って。
じっと見ていれば。
彼は後ろへと回り込んで。
そして、わたしの髪に触れる。
束ねていたものを取って。
わたしに手渡してくれて。
代わりに、今彼が買ってきてくれたものが、収まって。
「…ありがとう」
「べつにいい。見た瞬間に、おまえにって、思ってたから」
目が合って。
微笑めば、微笑ってくれる。
不安は全然なくて。
手を繋がなくても、あたたかくて。
それでも。
差し出された手を、わたしはしっかりと、握った。

END

 


お祭りの話は、ちょこちょこ書いてるので。
ちょっと難しかったです。
そんなわけで、花火のないお祭り。

誰でも手軽に出来る「10ノお題」』さまからお借りいたしました。
七つ目は、夜祭。
web拍手に置いてました。

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