周りから聞かされるのではなくて。
できれば、君の言葉で。

そう、願ってみた。



WIND




屋上で、特に青くもない空を、彼はボーッと眺めていた。
流れていく雲を、ただただ眺めて。
漏れ出るあくびを隠しもせずに、外へと出す。
雲が多いな。
思いはしても、口にはせずにいて。
だからと言って、べつにどうすることもしないまま、彼は壁に背を預けた。
することもないし、瞼を閉じて、寝てしまおうと考える。
いつもなら、彼女と一緒にいる時間なのだけれど。
彼女は友達と話していたはずで。
つまらないと、教室を出たら――ここに来ていた。
何を話していたのかはわからないけれど、楽しそうだったな、と思い出して。
薄く笑みを浮かべる。
けれど。
「葉月、おるかぁー?」
扉が開けられたと同時に放たれたセリフに、彼は瞼を上げた。
同時に、眉根を深く寄せて。
「……返事、ないで?」
「んなわけないって!
ここにいなかったら、校内にはいないってことになっちゃうんだから」
聞き慣れてしまった声に、身体を起こす。
下へと目を向けると、そこには思った通りの人物がいて。
彼は小さく、息を吐いた。
それから、立ち上がって。
あまり高くないことをいいことに、飛び降りる。
タンッとちょっと大き目に音が辺りに響いた。
それに驚いて振り向いた二人に、眉根を寄せて見せれば。
「……おったんか…」
「…アンタさぁ、普通に出てこられないわけ?」
そうぼやかれる。
呆れたような、そんな表情で。
小さく息を吐いて、一歩踏み出して。
「あいつは?」
そう、彼は口を開いた。
「優菜ちゃんなら、瑞希ちゃんに呼ばれて、行ってもうたで?」
「クリスマスパーティーのドレス、買いに行くんで、その相談みたい」
「………」
わかってはいるのだけれど。
彼女に友達が多いという、そのことは。
けれど、でも――。
考え出した思考を止めるように、息を吐く。
それから、校内へと足を動かしはじめる。
「ちょっと待って!」
止めて、藤井をその瞳に映すと同時。
目の前に突き出された紙に、彼は上体を引いて。
「優菜ちゃんからや。言うても、伝言を頼まれたわけでもないけどな」
「?」
「買い物、アンタと一緒に行きたいみたいよ?
あの子」
紙を受け取って、目を通す。
そこには、彼女の言葉が羅列されていて。
「あいつは?」
「須藤のクラスじゃない?
もしくは美術室」
「サンキュ」
呟くようにそう言って。
片手を上げて、そこを出た。
彼女の言葉で、今見たものを、聞きたかったから。
彼女の声を、ただただ、聞きたかったから。
『珪くん…日曜日、暇かなぁ?』
『あのねぇ?
そういうことは本人に聞きなさいよね?』
『あ、うん…。でも、珪くん、どっかに行っちゃったし……』
『捜してくれば?』
『うん……。でも、瑞希さんがいいところ、教えてくれるって言ってたから…』
『?
葉月と行くんじゃないの?』
『行くよ?
行くけど……』
多分、彼女のことだから。
何度も、隣りの机へと、視線を滑らせたはずで。
その光景を思い描いて、彼はくすりと笑みを零す。
階段を下りながら、わずかに彼は、視線を上向けた。

END

 

題名に意味はありません。
本当は、クリスマス関連なSSにする予定じゃなかったのです…!(爆)
ただそれだけのこと。

やっぱり、なっちんとニィやんのコンビは好きです…v
本当はおじょうを出すつもりだったんだけどな。

戻る