空は見上げるものだったけど。
その雲だけは、遠くを見るように。
見ていることに。
そうしているあなたの姿を見て。
気づいた。



あなたのこと




大きく息を吸い込んで。
吐き出して。
気持ちいい、なんて、笑みを浮かべる。
すっきり晴れた日は、いつも思う。
青い空に浮かんだ、入道雲を見て。
嬉しくて。
そうして見続けていたら。
「優菜?」
後ろから、声をかけられた。
振り返れば、買い物を終えたらしい彼が、そこにはいて。
下げられていたビニール袋に、何を買ったのか、気にはなったけど。
「何…見てたんだ?」
問われて、微笑を浮かべた。
「空。入道雲……できてるなぁって」
「ああ。そうだな」
言いながら、彼は遠くを見るようにして。
それに、小さく首を傾げる。
同じ方向を見れば、そこには確かに、入道雲があるけれど。
「………」
真上を見れば、青い空が広がっているだけで。
視線を前方へとやれば、入道雲。
「…どうした?」
「入道雲を見る時って、遠くを見るんだなって、初めて気づいたの」
「……ああ」
「下から見上げたことって、ないもんね?」
くすくすと笑って、視線を空へと投げた。
遠い、前方の空に。
そうすれば、彼は歩き出して。
いつの間にか繋がれていた手によって。
わたしも前へと、足を動かして。
暖かさに、嬉しくて。
優しい人だと、本当に思う。
暖かな人だと、心の底から、思う。
好きになってよかったと。
いつだって、思う。
「珪くん」
「ん?」
「………」
「優菜?」
「何でもない…」
「………」
好きだと。
その気持ちを告げそうになって。
わたしは慌てて、視線を伏せた。
とっさに、べつの会話も思いつかなくて。
小さく、息を吐き出す。
勇気もなくて。
なのに、ついつい、口にしそうになってしまう。
ちらりと横へ、視線を滑らせれば。
彼は前方へ視線を投げたまま。
彼と一緒にいると、新しいことを知ることができて。
彼と一緒にいると。
自分がいかに、彼のことを好きかも、再確認できてしまう。
そばにいると、落ち着かないのに。
ものすごく、安堵できてしまうから。
だからこそ――言いたくなってしまうのだけれど。
「………」
もう一度彼へと視線を向けて。
それに返された視線に。
わたしは満面の笑みを浮かべて。
彼へと届けた。

END

 

入道雲って、空を仰ぐというより、空を眺めるだよなぁ。
と、思いまして。
そんなことを考えて、書いてました。
玲(オリ主)と考えてることが、何だか似ちゃいまして。
このお題(というより、このネタ?)は、玲向きだと思いました。

とにかく、『二次創作書きさんにたった10のお題』より、お借りしました。
八つ目は、『入道雲』でした。

web拍手に置いてました。

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