おまえとなら、いいけどな。
べつに。小さく零したら。
彼女は首を傾げて。
微笑ってた。
逃避
地図を見て。
きょろきょろと周りに、視線を巡らせる。
道があっているかどうかを聞かなくても。
すぐに浮かべられた笑みに、あっていることが知らされて。
俺は小さく、笑みを零した。
「たぶんみんな、ここを見学してると思うんだ」
「…ああ」
「だから、このまま行けば、追いつけると思うよ?」
にっこり笑って、言って。
彼女は歩を進めていく。
それに遅れないように、俺も歩いて。
「でも何で、みんな、先に行っちゃったの?」
「?」
「わたし、ちょっと買い物してくるって、言ったよね?」
地図を仕舞って、彼女は首を傾げつつ、そう零す。
それに一度、ああ、なんて声を上げたけれど。
「ないって言ってたからな、時間」
そう零せば。
彼女はそっかぁ、なんて、納得してた。
ただ、一度だけ。
「でも、そんなに長い時間じゃなかったのに……」
すぐにそう紡いで。
しゅんっと肩を落として。
その様子に、少しだけ苦笑して。
「悪い」
と、小さく紡いだ。
「?」
「俺が待ってるから、先に行っていいって、そう…言ったんだ」
「………」
たとえ、わずかな時間でも。
彼女と二人っきりに、なりたかったから。
だからそう、頼み事でもするかのように、口にした。
少しの時間だし、いいか、なんて思ってた、同じグループのやつらに。
「…珪くんが?」
「ああ」
「………」
「…悪い」
「! う、ううん。怒ってるわけじゃないから」
首を左右に振って。
彼女は必死に、否定してくれて。
それから。
視線をアスファルトへと、落とす。
「優菜?」
「その…あの、ごめんね?」
「? どうして?」
「だって……、珪くんだって、見学の時間、短くなっちゃったから」
「べつにいい」
「…本当?」
「ああ」
そんなことよりも。
彼女のそばにいることの方が。
何倍も…大事だから。
――なんて、言えないから、思うだけに留めて。
そうして、彼女の手を取って、歩いていく。
「地図、確認できないよ?」
「覚えてる、俺」
ぎゅっと握って。
歩いていく。
……けど。
このまま、逃げ出して…。
と。
そうする勇気もないのに。
少しだけ、考えてた。
END
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