| こいつはどうして なんて
俺はまた今日も
考えてしまっている
答えなんて 出はしないのに
隣りにいる理由
「葉月くん! あっち行かない!?」
絡められていた腕が引っ張られて。
だけじゃなく、声もそう届けられて。
俺は彼女を見る。
十字路のそこで。
彼女は左手を挙げて。
その、左の方向へと、指を向けていて。
ちらりとそっちへと目を向けてみれば。
初夏と呼ぶには、まだ早い時季なのに。
下町らしく、売りに来ているのか。
風鈴がちりちりと風に揺れて、音を立てていた。
「………」
「あれ見たい!」
「………」
「行こうよ!」
声を上げ続ける彼女が、逃げ出さないように。
俺の二の腕を掴んでいた手を取って。
強く握る。
それから真っ直ぐに、歩を進めた。
「あー! ふうりーん!」
後ろに体重をかけて。
俺の歩みを止めようと、彼女は動くのだけれど。
俺はそんなこと、気にも留めずに歩いていく。
ただでさえ、同じグループのやつらとは離れてしまっているのに。
これ以上遅れるわけには行かない。
「何で僕、葉月くんと同じグループなわけ?
僕がいるグループに、君、無理矢理、入れられたでしょ?
クラス違うのに」
「おまえの面倒を見られるのが、俺だけだからだろ」
「……逆も言えると思う…」
言葉を綴った彼女の頭を、軽く一つ、叩く。
反論はないけれど。
できないけれど。
それでも、悔しかったから。
「ぶつことないじゃーん」
「煩い」
「本当のことなんだからさー」
「………」
「……?」
こつんともう一発、お見舞いすれば。
彼女は「うー」なんて、唸ってた。
「でも風鈴、見たかったなぁ」
「はいはい」
「っていうかさ、みんな、結構薄情だよねー。ただ、猫さんと遊んでただけじゃん」
「だな」
「なのに、先行っちゃうし。僕、地図持ってないっていうのに」
「俺が覚えてる」
「近道ないんですか?」
「そこまで詳しく、覚えてない」
「…ダメじゃん」
ため息を吐かれて。
それでも、彼女の手は離れないままで。
「初めて来たんだしさ。ゆっくり見て回りたいよねー?」
「そうも…いかないだろ?」
「…わかるけど。時間、決まってるし。修学旅行の練習なのも、わかるけど」
つまんない。
不満を零して。
俺の手から、手を離して。
もう一度、俺の腕を、彼女は掴む。
興味はいろんなものに移るけど。
もう、そうも言っていられないのだと、腕時計に瞳を落としたから、気づいたんだろうと思う。
歩みは少し、速いけれど。
それも、仕方のないことだから。
彼女は何も、言わない。
「…もしかして」
「?」
「修学旅行も、一緒?」
「……なんじゃ、ないのか?」
「………」
「? 田端?」
「寄り道出来ない……」
かくん、と項垂れて。
彼女は「えぐえぐ」なんて、声だけで泣き真似して。
だからこそ、俺が隣りにいることなんて。
彼女はきっと――気づいているのに。
「みんなと一緒がいい!」
「はぐれるんだろ? 結局は」
「…有沢さんがいたら、絶対そうなるね……」
また項垂れて。
彼女は必死に、俺と二人で行動しなくていい術を探していて。
けれど前提に。
寄り道をする、というものがあるから。
きっと――無理だろうとは思う。
「一人で動くか?」
「それは嫌」
「じゃあ、無理だな」
「無理…だねぇ」
大きくため息を吐いて。
かと思えば。
彼女は今度は前方に、その指を向けてた。
END
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