| 考えなければならないのは 今 考えなければならないのは
それ……なんだと思う
諦めと 後悔と
「葉月くん!」
呼ばれて。
振り返れば。
彼女は、そこにいて。
「…どうした?」
「…………」
「…? 田端?」
黙ったままの彼女を、促すように。
そう、声をかければ。
彼女は一度、俺の顔を見て。
……それから。
「あの子が…いないの」
紡いだ声は、小さくて。
俺はただ、驚くだけ。
「怪我、してたじゃん? で、一応病院に連れていったけど。包帯、気にしてたし。ちょっと膿んじゃってるって、獣医さんも言ってたし……」
「………」
「…ダメだったのかなぁ?」
「母親は?」
「………」
聞けば、彼女は無言で首を振って。
それを見て、俺も視線を伏せた。
仕方、ないのかもしれない。
そんな考えが、頭を過ぎる。
「全然、捜そうとか、しないんだよね。一匹いないこと、気づいてないはずはないんだけど」
「………」
「………」
「…俺……きちんと治るまで、家に置いておけば、よかったな」
「でも、学校あるし」
「…ああ」
「学校にいる間は、お母さんに頼むって、二人で決めてたんだし」
「………」
「それに、ひとりで家にいたら、すごく寂しいと思うし……」
泣かない、とは思う。
仕方がないと、先に言ったのは、彼女の方だから。
気づくの、少し遅かったかもね。
とか。
もしこれで…ダメになっちゃっても、仕方ない、よね?
とか。
先にそう言ったのは、彼女だから。
「…捜すか?」
「……ううん。元気なら、きっとまた、どこかで会えると思うし」
「………」
「少し元気になったからって、退院させちゃったのが、悪かったのかな?」
微苦笑。
精いっぱいの、笑顔。
目を細めて、俺はただ、拳を握る。
どうすればいいかなんて、わからない。
それでも。
「ほかのやつらが元気なら……」
「うん。ほかの子達も、大事だもんね」
そう、言葉を綴ることしか、できなかった。
繰り返さないように。
今度は、間違えないように。
そうする、だけなんだから。
「迷子になってるだけなら、いいんだけどなー」
紡がれた言葉に、俺も微苦笑って。
彼女の視線の先を追いかけるように、空を瞳に映したあとで。
彼女の頭を、ポンッと叩いて、歩きはじめた。
END
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