禁じられた恋とか
誰かに反対されてるとか

そんなんじゃ ないけど

やっていいことといけないこと

その区別は
ついてるつもり……なんだ
わたしは




Tatto Kiss





小さく小さく、息を吐く。
それは白くなって、周りに漂ってたけど。
周りには、誰もいなくて。
いつも彼のそばにいる猫の一家の姿も、見えない。
から、それを見ているのは、物言わぬ植物とか、建物で。
それでも――もうすぐ春になる、この日。
氷室先生に呼び出されたからっていう理由で、わたしは学校に、来てたんだけど。
その用事――まぁ、卒業後のことで、またお小言と言うか、心配? されたわけだけど――が、終わったあとで。
昇降口で会った後輩が教えてくれた情報に従って、わたしは彼を捜してた。
何か、いつも捜すのって、わたしの方じゃないか?
思って、こめかみを爪で引っ掻いて。
それから、彼のそばに、身体を屈めた。
「葉月先輩の姿、見かけましたよ?」
なんて教えてくれたのは、バスケ部の子。
実はまだ、名前を聞いてなかったりして。
とにかく、その子にどっちの方向に行ったのかを聞いてしまったから、わたしはここにいる。
だって、聞かなかったら、やっぱり不審に思われるだろうし。
仲良かったのに、何かあったんですか?
……なんて聞かれても、困るだけ。
たとえ、言葉を濁したとしても。
結局は、何かあったらしいって、噂になっちゃうんだろうし。
それはちょっと…嫌だし?
思いながら、また、小さく息を吐いた。
彼はいつも通り、夢の中。
わたしがそばにいることなんか、きっと知らないまま。
音を立てずにいるわたしの行動も、あるんだろうけど。
考えて、彼の顔を見る。
あれだよね?
危険とかって、思わないんだろうね。この人は。
猫だって、安全な場所じゃないところで眠る時は警戒して。
いつでも動けるように、丸くなってるのに。
彼は安全だと思って、外で眠ってる。
安全じゃないって言ってるのに…。
小さく頬を膨らませて。
わたしは合わせた膝を、見てた。
お持ち帰りされても知らないっていう、本当の意味、教えた方がいいのかな?
考えて、首を傾げてみる。
無防備すぎ。
それは何も、女の子だけに当てはまる言葉じゃないと思う。
彼は人気者。
何人の人が、自分のことを想っているか、とか。
考えてないんだろうな。
それからじっとまた彼の顔へと、瞳を向けた。
こんな、無防備な彼に、手を出した人って、いるのかな?
考えて。
それでもじっと、彼を見る。
いないってことはないだろうな。
綺麗なものは、みんなが欲しがるし。
でも、耳に入ってこないところを見ると。
いたとしても、胸に仕舞い込んじゃうような、おとなしめな子だろうな。
考えて。
でもって、彼は気づかない。
考えて。
わたしは自分の行動を、止めた。
仕舞い込むと決めたなら。
こんなとこで、出していいわけがない。
こんなことで、顔を覗かせちゃうようなことをして、いいはずがない。
考えて、大きく息を吐く。
一回だけ。
一度だけ。
そんな考えを持ったら、負けだ。
考えて。
思って。
わたしは立ち上がる。
放って帰ろうかな、とか。
ちょっと考えたけど。
わたしと彼は『友達』だから。
それは少し、かわいそうかもしれない。
考えて。
彼の足を、軽く蹴ってみた。
靴で、地面を擦るようにして。
そうしたら、彼はゆっくりと、瞼を上げて。
顔を上げて。
わたしを――見上げて。
「…玲?」
「おそよう」
「………」
「君、今日、何しに来たの?」
多分、猫さん。
そう思ってたら、彼の答えは、その通りで。
「おまえは?」
「担任に、呼び出し食らいました」
「…そうか」
短く放って、彼は立ち上がる。
何も言わずに歩き出した彼に倣って、歩きはじめて。
帰るんだろう彼の隣りに並んで。
――わかってる。
わたしは、迷わない。
決めたことは、きちっと。
覆さずに。
考えながら、わたしは。
いつものように、笑ってみてた。

END

 

たまには、こんな話。
させちゃうのもありかなーと思ったんですが。
玲の性格上、しなさそうだったので、やめました。
題名は、その名残(……)。

戻る