毎年、考える。
この日が近づく度に。
俺は毎年。
考えてる。



何よりも大事な




高校に入学してから。
彼女と、再会を果たしてから。
三度目だと、カレンダーを見ながら思う。
その日までの日数を数えて。
その前にあるものを思って。
ため息を吐き出した。
今日だけで、この行動を何度、しただろう?
それは思い出せずに、俺はまた、息を吐き出すだけ。
卒業式から、大学の入学式の。
その間にあるものは、ホワイトデーと彼女の十八回目の誕生日。
今月の十四日にもらったもののお返しをすることもそうだけれど。
彼女にとって――俺にとっても――何よりも大事な、その日を祝うためには、俺は勇気を出さなくてはいけなくて。
ただの友達では、その日を祝うのには、よほどの理由がいるから。
その理由を考えるよりも。
この気持ちを伝えて、立場を変えてしまった方が、いい。
考えて、俺はまた、その日を瞳に映す。
卒業式に渡す予定のものは、もうすでにできあがっていて。
あとはもう、勇気を振り絞るだけ。
彼女の誕生日を祝うため。
わずかな休みの日に、彼女と会うため。
「!」
急に鳴り響いた音に、俺は勢いよく、振り返って。
いくつか歩いて、テーブルの上に放ってあった、音の源を、手にする。
開けば、それがどこからのものかが、確認できて。
俺はソファに腰かけながら、通話をはじめた。
「…もしもし」
『もしもし? 珪くん?』
「……ああ」
『今…平気?』
「大丈夫」
彼女が向こうで、ほっと息を吐いたのがわかって。
俺は小さく、微笑を零す。
彼女は……変わらない。
俺に見せてくれる、彼女は。
「それで? どうか…したのか?」
『あ…、うん。あのね?』
「…ああ」
『もうすぐ……卒業だなぁって思ったら、珪くんの声、聞きたくなって…』
「………」
『ご、ごめんね? だからその、たいした用じゃなくて…。あの…』
「優菜」
『! なぁに?』
彼女の不安は、何だろう?
ただ、卒業に対してのものなのか。
それとも……。
「もうすぐ…なんだよな。卒業」
『う、うん……』
「…逃げるなよ?」
『え? な、何が?』
つい、口にしてしまった言葉に、彼女はあたりまえのように、戸惑いを見せて。
それに、くすくすと笑い出す。
追いかける立場なら、楽なのかもしれない。
考えて。
言いたいことを抱えている俺は。
必ず、彼女を捕まえて、言わなければいけないと。
そう思った方が、楽。
うまく言えるかどうかなんて、わからないけれど。
わからないからこそ。
かまえていたら、何もできない。
――きっと。
『珪くん?』
「ん?」
『何から…逃げるの? わたし』
「……俺から?」
『逃げないよ!』
声を大きくした彼女に、笑みを濃くしていく。
怖くはない。
大丈夫。
自分に言い聞かせて。
彼女の気持ちが、俺に向いていることは、些細なことや、彼女の母親の言葉で、わかっているから。
あとは彼女に、伝えるだけ。
俺も同じなのだと、そう言うだけ。
彼女の誕生日を、祝いたいなら。
その次の日の、ホワイトデーに、想いを返したいなら。
考えながら、俺はもう一度、カレンダーを瞳に映した。

END

 

どっちにしようか、ちょっと迷ったんですが。
結局、主人公ちゃんの誕生日にしました。
無難に無難に。

誰でも手軽に出来る「10ノお題」』さまからお借りいたしました。
四つ目は誕生日。

web拍手に置いてました。

戻る