気持ちは、とてもよくわかるから。
わたしには何も、言えなくて。それにわたしは。
彼のことをどうしても、かばいたくなっちゃうから。
少しでも
そばに
教室の時計を見上げて。
それからドアに、視線を移す。
帰ってこない…。
それがちょっと、心配で。
どきどきしながら、お客さんの相手をしてた。
今日は、他校の生徒も来てるから。
その人たちに――捕まっているのかもしれない。
考えて。
不安で。
心配で。
今すぐにでも、彼の姿を捜しに、この教室から、出て行きたくて。
でも。
「あれ? 葉月、いないの?」
やってきた友達の声に、わたしの思考は、べつの方向へと向いた。
「うん…」
「どこにもいなかったよ? 校内にも、外にも」
「え?」
「アイツのことだから、看板持って、うろうろしてんのかなって、思ったんだけど。見なかったから、ここで接客やってるのかーって」
「う、ううん。珪くんは、男の子達に看板持たされて、外回りに行ったんだけど……」
「だよねー? 接客なんて似合わないって思ったんだー」
「でも…、どこに行ったんだろう?」
なっちんの言葉を聞いて。
不安は、確かなものになる。
けど。
「どっかでサボってんじゃない?」
その声に、わたしは大きく、目を見開いた。
「え…?」
「アイツの性格からするとさ。その方が自然じゃん?」
「………」
「だからさ」
言われて、頷くしか、できなくて。
でも、不安なのは、変わらなくて。
「優菜ちゃん。捜しに行ってきても、いいよ?」
もう、時間だしね。
そう言ってくれたタマちゃんに、頷きを返して。
わたしは、制服になっていたエプロンを取る。
「行ってくるね?」
「ごゆっくりー」
手を振ってくれたなっちんに、苦笑を返して。
それから、廊下へと飛び出した。
屋上へと、階段を駆け上がって。
いなかったから、使っていない教室を、全部覗いた。
それでもいなくて。
体育館裏を通って、教会へと、足を踏み入れる。
最初に聞こえたのは、猫の声。
それが、あの一家のものだとわかったのは、子猫の声が混じってから。
「いたぁ……」
「優菜?」
見つけられた彼に、わたしはほっとして。
近寄ってきた子猫を、抱き上げた。
そうしてから、彼の隣りへ、歩を進める。
「珪くん、時間になっても、戻ってこないんだもん。心配になっちゃった」
「…あ……悪い…」
「ううん。こうやっていてくれたから、いいよ。でも…。どうするの?」
「?」
「サボってたんでしょ? だから」
「…ああ」
彼のそばには、持たされていた看板はなくて。
どうしたのかを聞いたら。
昇降口に置いてきたって、彼は淡々と述べてくれた。
それを見た人がいたから。
お客さん、結構多かったんだ。
なんて思う。
「教室、戻れないね?」
「だな」
「もー。珪くんが悪いのに」
彼はくすくすと笑って。
楽しそうに、笑って。
でも、かばっちゃうんだろうな、なんて。
そう、考えてたら。
「このままサボるか」
彼が空を見上げて、そう、放つ。
彼と一緒に、いられるなら。
それが一番、嬉しいことだから。
わたしはつい。
首を縦に振ってしまってた。
END
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