ぼんやりと歩いていれば
かなりの高確率で 遭遇する

何なんだ?

一度でいいから
そう聞きたかった




存在





「いや、あの。何なんだと聞かれても……困るんですけど」
零して、彼女は、うーんなんて、考え出す。
夜、8時過ぎ。
まだ営業しているスーパーもあるけれど。
そこまで足を伸ばすのは、少し、面倒臭く思えて。
俺は、家の近くのコンビニへと、来ていた。
そこに、先に来ていたのは彼女で。
彼女の家から、ここは。
結構距離があると思う。
なのに。
「その問いに関して、君はどういう答えを望んでるわけ?」
「……」
「名前とか、君との関係とか。そういう答えじゃ、無理でしょう?」
「それは、知ってる」
「だよねぇ…」
腕を組んで、天井を見上げて。
それから、ため息を吐く。
「とりあえず、僕は尽に言われて、ここに来たの」
「?」
「お腹空いたから、買ってこいって。お菓子」
「………」
「しかも、ここにしか売ってないやつ。自転車出せば、そんなでもなかったから、来てあげたの」
「…尽は?」
「テレビ見てる。――あ…、今はゲームかも」
壁にかけてあった時計を見て。
彼女はそう、付け加える。
それに、息を吐き出せば。
「偶然ってことで、処理出来ない?」
なんて、言いながら。
歩き出した俺のあとをくっついてくる。
「できない」
「何で?」
「俺が行く場所に、必ずいる。おまえ」
「…必ず?」
「かなりの確率で」
「……そう言われても…」
仕方ないじゃん。
服の裾。
そこをくいっと引っ張って。
そのまま、彼女はついて歩いていて。
それに、服が伸びる、なんて言っても。
聞かないことは、目に見えているから。
俺は息を吐くだけ。
「あとは…そうだなぁ。好きなものが似てるから、とか」
「…ああ……」
それは思っていたことだから、少しだけ、納得して。
でも、それだけで片付けられないことも、あるんじゃないかって、思い出す。
「あとは、思考回路が酷く似てるか」
「………」
間髪入れずに付け加えられて。
俺は眉根を寄せる。
と、彼女が俺の顔を覗き込んできて。
それから、くすくすと笑い出した。
それに視線を投げれば。
彼女の瞳も、俺を見て。
「今、納得しちゃったでしょう?」
「してない」
「えー?」
まだくすくすと笑いながら、彼女は足を止めて。
そうすれば、声はやむ。
服が引っ張られて。
俺も足を止めざるを得なくて。
振り返って見れば。
彼女は菓子コーナーへと、入っていくところだった。
引っ張られているから、ついていくことしか、できなくて。
「何だっけ? 頼まれたやつ」
「…知らない」
「んーと、これ?」
ほとんど、独り言。
それに答えてる、俺も俺だけど。
なんて考えていれば。
首を傾げているのが見えて、俺は笑みを零した。
「そういえば、葉月くんは何買いに来たの?」
聞かれて。
弁当、と、短く答える。
「お弁当?」
「ああ」
「…寝てた?」
「寝てた」
「やっぱり」
くすくすとまた笑い出して。
彼女は俺を、今言ったものが並ぶ場所へと、連れていく。
「サラダも買った方がいいよ?」
「………」
「いいよ?」
強く言われて。
それでも、答えないでいれば。
彼女は離れて。
どこからか、かごを持ってきて。
勝手に、サラダを選んで、入れて。
俺に手渡してくる。
受け取らざるを得なくて。
そうしてから、覗き込めば。
俺が食べられるような、代物。
「プリン、買ってこ」
「太るぞ」
「別にいいもん」
彼女が受けた理由は、これか。
そんなことを思いながら、俺は弁当を選んでいく。
確かに、思考回路は似通っていると思う。
だからこそ、彼女がどこにいるとか。
彼女も俺がどこにいるか、とか。
わかるのだろうから。
そういう相手は、近くに一人はほしいと、何かの本で読んだことがある。
から。
「買ってやろうか?」
「?」
「それ」
「………」
「どうした?」
「明日は台風かもしれない」
「?」
「葉月くんが優しい」
「………」
眉間に皺を刻んで。
彼女を残して、レジへと向かう。
と、彼女は謝りながら。
ついてきて。
「じゃあ、よろしく」
「嫌だ」
「だからごめんって!」
言って。
否定したのにもかかわらず、彼女はかごに、持っていたものを入れる。
まったく。勝手なやつ。
そう思ったからこそ。
俺は彼女の額を、一度だけ、小突いた。

END

 

似ているようで、似てない。
でも似てる。
そんな二人なので、こんなのもありかと。
というか、こういう話を書くのも、楽しい…。

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