つらいってことはない。
悲しいってことは、ない。

それでもやっぱり。
ただただ。
さびしい。



そばに いないだけ




帰ってきて。
部屋に入って。
そして。
そこにない姿に、彼は息を吐いた。
ここに、彼女がいたのは、ほんの、二時間前。
彼女をここに通したのは、今日の午前中。
小さな用事で、この部屋から離れても。
戻ってくれば、必ず、彼女はここにいて。
名前を呼べば、笑みと共に、「なあに?」なんて、答えてくれた。
なのに、今は、ここにそれは、なくて。
彼は大きく、ため息を吐く。
いつもと同じ。
そう――思えば、いいのに。
思えれば、いいのに。
数時間前までのことを思い出すと、泣き出したくさえ、なってしまう。
ソファに腰かけて、また、息を吐いて。
彼は背もたれに、身体を預けた。
今まで。
どちらがより多いかと聞かれたら。
圧倒的に、今のような、ひとりの時なのに。
願いを知ってしまったから。
きっと、願いを持ってしまったから。
だから…、こんなにも、淋しさを抱えているのだと、彼は思う。
ここに、彼女がいるという。
いたという。
その時間の、愛しさを――知ってしまったから。
天井を仰いでも。
まぶたを閉じてみても。
思い出すのは、数時間前のことばかりで。
それ以外は、考えられなくて。
思い出せなくて。
そうやって、ただただ、ひとりの時間を、過ごしていた。
けれど。
「?」
机の上。
放っておいた携帯が、音を発して。
すぐに、消える。
それに、彼は立ち上がって、それを手にした。
開けば、メールが一通、届けられていて。
『今日は楽しかったね? お昼、ごちそうさまでした。でも、今度は作らせてね? それじゃ、また明日、学校で』
ふっと笑みが浮かんだのは、届けられたあたたかさのせいで。
彼女らしい、ていねいな文章は。
あたたかさしか、感じられなくて。
「今度…か」
そう呟けば、いつ呼ぼう、なんて、考えてしまって。
彼は小さく、笑ってしまっていた。

END

 

短い…。
というか、一人だけだと、こんなものですか?
そうですか……。
っていうか、これ。
主人公ちゃんサイドも書きたいなぁ。

戻る