ただ見るだけっていうのが。
どんなに失礼なことかは、知ってる。

知ってるけど。
それで何も、言えはしないから。



ただ




ぶしつけなのは、よく知ってる。
でも、見ているだけしかできないっていう立場でしかないから。
わたしにはどうすることも、できなくて。
外を見る振りをして、窓に映る彼の姿を見る。
彼の席は、わたしよりも後ろ。
だから、あからさまに振り返ることもできないから。
窓に映る彼を見てた。
間接的な視線は、彼を起こすことはできずに。
彼はわたしに、気づくこともなく。
眠りに落ち続けている。
それが少し、淋しくて。
でも、見続けていられるから、嬉しくもあって。
授業中の、先生の声なんか、右から左で、わたしは彼を、見続ける。
窓に近づくように、左手で頬杖を突いて。
起きないかな? とは思っても。
起きなくてもいいかな。なんて、次の瞬間には、思ってる。
仕事…大変なのかな?
そう考えれば、とても心配で。
わたしは眉尻を下げた。
それに、彼が小さく、身じろぎして。
少しだけ、驚いたけど。
彼は窓の方に、顔を向けただけで、まだ、起きないみたいだった。
それに、ほっと息を吐く。
見るということが、どれだけ失礼なことかは、知ってる。
視線を、ただただ送るだけなのが、どれだけぶしつけなのかも、知ってる。
でも。
今のわたしは、クラスメイトでしかなくて。
時々、出かけてはいるけれど。
それだけの関係でしかないから。
今のわたしには、こうしているだけで、精一杯。
今――彼はどんな夢を見ているんだろう?
彼が寝ているのは、やっぱり、つまらないから?
それとも、仕事が忙しくて、疲れてるから?
何も言えなくて。
何もできないわたしは、ただただ、数少ない情報から、判断するしか、なくて。
「大丈夫かな……?」
小さく小さく、そう、口にする。
誰も気づくことはなくて。
それは、よかったのだけれど。
先生も、わたしには気づいてはいても、指したりはせずにいてくれて。
それも……よかったのだけれど。
薄らと瞼を開けたらしい彼と、目が合ってしまった。
もちろん――窓を通して。
雨が降りそうな、窓の外を見ていたのだと。
そう…繕うには、どうしたらいい?
視線を外せなくて。
どうすることも、できなくて。
彼が視線を外してくれることだけを、ずっと、待っていた。
けれど。
視線が外されたあと。
見ていたことを、謝った方がいいのか。
それとも、何も言わずにいた方がいいのか。
…なんて、べつの疑問も、浮かんでしまって。
そうして――考えていると。
彼は小さく、笑って。
ゆっくりと、身体を起こした。
それに、どうしたの? って、思ったけれど。
直後に鳴り響いたチャイムに、わたしは慌てて、黒板に書かれていたものを、ノートに書き写すため。
瞳を前方へと向けた。

END

 

どうすればいいのか、途中でわからなくなりました。
っていうか。
このまま行ったら、長くなりそうな気が……しなくも、ない。
というか…。

誰でも手軽に出来る「10ノお題」』さまからお借りいたしました。
五つ目は視線。

web拍手に置いてました。

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