たくさんの人
たくさんの声
たくさんの目

それらがあるのに
彼女は俺の目の前に
い続けてる




rebuke





休憩時間。
その時に、いつものようにやってきた彼女は。
俺にカップを差し出して。
そのあと。
スタッフと何かを話していたのだけれど。
「小物の中からこれ見つけた」
と、俺の目の前に戻ってきた。
顔を向けると、それを開いて。
俺の耳に、勝手にかけて。
「………」
「何か…変」
「………」
「見慣れてないからかな? と言うか、もともと、眼鏡が似合うような顔じゃないのかな?」
黙っていれば、彼女はうーん、なんて考え込んで。
「ファッション性の高いやつ、選べばよかったかな?」
言って。
俺のことはそのままにして、踵を返す。
その背中にため息を吐いてから、俺は耳にかけてあるものを取り払った。
たたまずに、取ったそのままで、かたわらに置いて。
俺はまたカップを手にする。
けれど。
「こっちならいいんじゃん?」
言いながら、彼女は戻ってきて。
同じ行動を、してくれて。
俺はまた、眉根を寄せた。
「………」
「近寄りがたい雰囲気が、さらに近寄りがたくなった?」
「………」
「でもまぁ、さっきのよりはいいかも」
「………」
「葉月くんてさ、目、悪い?」
「悪くない」
メガネに手をかけて、取ろうとすれば。
彼女の口からは漏れるのは、非難の声。
「あー!」とか。
「取らないでよ」とか。
それを無視して、またかたわらへと置けば。
「つまんない…」
そんな声。
「つまらなくない」
「面白くない」
「なくていい」
「…何か今日、機嫌悪い?」
聞かれて。
悪いなんて、言えなくて。
黙れば。
彼女は俺の顔を覗き込んで。
「…寝不足?」
そう、聞いてきた。
確かに、そうかもしれない。
考えて。
視線を下げれば。
メガネは彼女の手によって、たたまれて。
「今日、ずーっと起きてたもんね、君」
「…起こしてくれたやつがいたからな」
「ん? 感謝してる?」
「してない」
届けて。
カップを手にして、立ち上がる。
彼女に背を向けて歩き出せば。
あたりまえのように、彼女もついてきて。
「今までは休憩中に邪魔しても起こらなかったじゃん」
「………」
「眼鏡、嫌い?」
「…べつに」
「…?」
カチャ…と、わずかに音がして。
足を止めて振り返れば。
彼女は、手にしていたものを、開いていて。
眉根を寄せながら、それをかけて。
「……田端?」
「…クラクラする……」
かけて、俺の顔を見たとたん、そう零した。
それに、ふっと笑う。
「何で度が入ってんの?」
「…知らない」
「ただの飾りじゃないの?」
言いながら、外して。
もう一つの方も、かけて。
そしてまた、同じ反応。
外したあとは、きつく瞼を下ろして。
「何で?」
そんな風に、眉根を寄せる。
瞼を上げて、俺を見て。
その顔に、くすくすと笑って。
彼女の頭を一つ、ぽんと叩いた。

END

 

どんな話?
いやあの、珪くんに眼鏡をかけてもらおうと思ったんです。
で、玲に絡んでもらおうと思ったら、こんな話。
……でも何で、度が入ってたんだろう……(そこまで考えてない)。

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