これまでと同じ。
そう、思っていたのに。
raw ore
『あけましておめでとうございます』
静かな朝。
元日というのは知っていたけれど。
べつに、家の中は俺だけで。
ひとり…だけで。
正月らしいことをやる気なんて、起こらなくて。
だから、いつもと同じ。
去年までと同じ、何もない、静かな朝。
郵便受けの中に入っていた、年賀状を見たとしても、特に何も、考えてはいなかったのに。
なのに。
手描きのイラストと、少し丸みがかった、字。
それに、行動は止まって。
俺も出したな、とか。
印刷ですませた…とか。
色々、思い出したけど。
一番に思い浮かんだのは、これを書いた、人物の姿だったから。
それから視線を外して、家の中へと入る。
俺も何か、書けばよかった。
そう思ってしまって。
でも、何を書けば、なんて。
今でもわからなくて。
考え続ければ続けるほど。
彼女の姿が、ちらついて。
「………」
今日は、一月一日。
新しく、一年がはじまった日。
去年までと同じと、そう思っていたけれど。
こんなにも、心はざわついていて。
静かなのは、周りだけ。
俺の中は、こんなにも。
去年までとは、違う。
何枚か届いていたそれをめくっていっても。
彼女のもののように、手をとめたものは、なくて。
だからこそ。
考え続けてしまうのかもしれなくて。
年賀状の差出人に会いたいと思ったのは、初めてで。
こんなにも、思考が流れたのは、初めてで。
部屋まで戻って、携帯を手にする。
番号を押して。
そこで初めて、どうしようかと、考えて。
けれど、この思考をとめるには。
それしか、ないように思えて。
通話ボタンを押してしまえば、後戻りはできなくて。
『はい』
「…俺。葉月」
二回の呼び出し音のあと。
聞こえた声に、彼女の姿は、しっかりと、像を結んでしまって。
声を聞くだけ。
話をするだけ、だったのに。
『葉月くん? どうしたの?』
「…あけましておめでとう」
『あ、うん。おめでとう。……それで?』
ちょっと慌ててるな、とか。
想像してしまえば。
口からその、誘いの言葉が出てしまうのは、仕方がなかったのかも、しれない。
END
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