この頃、気になってることがあるの。
聞いても……いいかな?だって聞かないと、わからないから。
あなたのこと。
何でも知りたいと思うのは。
やっぱり、わがままですか?
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子猫を抱き上げた彼の姿をちらりと見て。
彼女は目を細める。
ゆっくりと視線を下ろして。
それから。
膝の上の子猫が首を傾げているのを見て、撫でるために手を伸ばした。
小さく、微苦笑になってしまったけれど、笑みを浮かべて。
そうすれば、不意に頬に触れたものがあって。
彼女は顔を上げる。
「珪くん?」
「…どうか…したのか?」
「? どうして?」
「元気ない。おまえ」
「………」
聞かれて。
言ってしまおうかと、考える。
聞きたいことが、彼女にはあって。
けれど今まで、聞けずにいて。
「優菜?」
促されて、一度彼女は、視線を膝の上へと落とした。
そんなに、落ち込むようなものではないのだけれど。
けれど。
彼女にとっては、大事なこと。
子猫は彼女の顔を見上げて。
一度小さく、鳴いてくれた。
「…聞きたいことが……あるん、だけど」
「…俺に?」
頷いて。
顔色を伺うように、彼を見れば。
当然のように、彼は「何だ?」なんて、言葉を届けてくれた。
それに、彼女は子猫の手を、軽く持って。
ほんの少しだけ、振って。
「この頃珪くん…あくび、しないでしょう?」
「…? してる……だろ?」
「あの、あのね? 授業中とかは、よく見るんだけど。その…わたしと一緒にいる時って、ほとんど……してない、よね?」
「………」
「だから、その…どうしてかな? って」
「…………」
「ただ単に、眠くないって言う理由だったいいんだけど。変に、緊張とかしてるんだったら、ごめんね?」
「謝ることじゃないだろ? べつに…」
「そうなんだけど…その……」
言おうかどうしようか、逡巡して。
手にじゃれ始めた子猫を見る。
まだ、軽くとは言え、左前足を取られているからか。
子猫は必死に、右前足だけでじゃれていて。
それは、放してと言っているようにも見えて。
彼女は手の力を、緩めて、それを離した。
それでもまだ――子猫は膝の上にいる。
「……でもわたし。珪くんがあくびを零す度に、笑っちゃってたでしょう?」
「………」
「それが嫌だったなら、謝るのが、普通でしょう?」
「……違うから」
「?」
「俺が、あくびをしない理由」
「本当?」
「ああ。だから…謝らなくていい」
「…うん……」
頷いてはみたけれど。
小さく首を傾げて。
彼女はそれ以外の理由を考える。
ほかに…何かあったかな?
考えて。
それでもやっぱり、わからなくて。
「理由…なぁに?」
聞きたくて、そう、問いを口にした。
膝の上で丸くなった、子猫の背中を撫でて。
答えを待って、いるのだけれど。
「珪くん?」
彼からの返答は、ないまま。
首を傾げて、彼を見れば。
彼はやっと。
「ああ…でも、緊張してる……ことにはなるのかも…な」
と、呟くように言葉を発した。
「…ごめんね?」
「違うって言ってる」
「でも、緊張させちゃってるんでしょう?」
「それは…そうだけど」
「だったら…!」
「でも、平気だから。おまえが悪いわけじゃない」
「………」
眉尻を下げて、彼女は彼の顔を見て。
身体をわずかに、彼の方へと向けてしまったから。
子猫は下ろしていた瞼を上げて、顔も上げていた。
「わたしと一緒にいて、緊張してるのに。わたしのせいじゃないの?」
「…ああ」
「………」
わからなくて、首を傾げれば。
彼からは、小さく失笑が漏れる。
「それに…心配させたくないからな、おまえに」
「……え?」
「聞いてくるだろ? いろいろ。仕事…大変か、とか」
「だって……」
聞かないと、わからないから。
何でも知りたいと思うから。
思ってしまうから。
聞きたいと、そう思ってしまう。
目からの情報だけで判断するなんて。
そんな不確かで、仕方ないものを信じることは、できないから。
――なんて。
言えるはずも…なくて。
彼女は黙り込む。
気にしなければいいなんて。
それはもっと、できないことだから。
「とにかく、大丈夫だから。眠い時は眠いって、そう…言うから。俺」
「…うん」
ぽんっと頭を叩かれて。
彼女はそれに、微笑を零す。
みゃーと、小さな声に、視線を戻せば。
子猫が、彼女の手に、頬を擦り寄せていた。
END
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