それを見て
目の前にある 顔も見て大きく 息を吐いた
同じはじまりに
ほっとして
変わらなかったことに 呆れて
受け取ったそれで
俺も同じはじまりを受け入れるため
きょとんとしている顔の
その額を
軽く――
はたいてみた
おなじはじまり
その日に届けられたものを捲って。
捲り続けて。
見続けていたのに。
一周してもなお、続けていたのに。
見つからない、その一枚に、眉根を寄せた。
去年のことを思い出したのは、家の中に入ってからで。
すべてを思い出したのは、家の電話が、鳴り響いてから。
「…はい」
『あけおめー!』
「……あけまして、おめでとうございます」
『…ノリ、悪いし』
小さく紡がれた言葉に、息を吐き出す。
そう、去年もこんなだった。
確か。
『携帯、掛けたんですが』
「? ああ」
『電源が入っていませんでした』
「………」
『充電、した?』
「……悪い」
してなかった。
思い出して、子機を持ったまま、歩き出す。
去年と、何もかもが同じなら。
このあと、彼女から紡がれる言葉も、きっと同じ。
『何かさ、去年もこれ、言ったと思うけど』
「…ああ」
『笑わないの!』
笑ってないで、充電しなさい!
含み笑いで返した俺の耳に、大きな声で注ぎ込まれた言葉に、少しだけ受話器を遠ざけて。
それから、眉根を寄せる。
普通のボリュームに落としたのか、受話器からは何か聞こえるけれど。
それは、ただただ、音というだけで。
言葉にはなっていなくて。
俺は逆の耳に、それを当て直した。
『聞いてた?』
途端、届けられたのは、そんな言葉。
「ああ、初詣だろ?」
去年と同じなら。
たぶん、それだろうからと、口にすれば。
『そう。初詣。行こう?』
なんて、嬉しそうな声で、紡がれる。
『お迎え、行ってあげるから』
「…いらない」
『そういうわけにも、いかない』
「……どうして?」
『渡したいものと、お届けものがある』
「………」
『だから、待ってて。あと十分ぐらいで着くと思うから』
「…おまえ……」
案の定、彼女は道の上。
それでさえ、去年と同じ。
息を吐きながら、探し出した携帯を、充電器に乗せる。
『朝ご飯、何食べたー?』
「同じ」
『はい、ダメー。お正月はおせちを食べましょう』
「………」
『っていうことで、尽に持たされたから、持ってく』
「…どうも」
『とりあえず、外に出る用意は出来てる?』
「できてない」
『しといて』
電話しながら?
思ったけれど。
聞けば必ず、『可能!』なんて、答えは返ってくるだろうから。
俺はコートを羽織るために、それを手に取った。
『携帯は?』
「してる、充電」
『よろしい』
「………」
『あ、よろしいで思い出した。氷室先生から、年賀状、来た?』
「ああ」
『そっか。僕も来てた。いっぱい、お小言書かれてた』
「だろうな」
『うっわ。意地悪だし』
「で? 今、どの辺なんだ?」
『君んチに続く坂を、もう少しで登り切ります』
言葉に、玄関へと向かう。
もうすぐ、着いたと、彼女は呟くはずだから。
それと同時に、玄関の扉を開けたい。
……何となく。
『あ、着いた』
予想通り、そう言葉が響いて。
それよりも少し遅れて、俺は玄関を開けた。
通話を切って、子機を玄関に置いて。
開け切れば、目の前に、彼女の姿。
去年までと変わらない、姿で。
「改めまして、あけまして、おめでとうございます!」
「はいはい」
「でね、こっちがお届けもの」
はい、と押し付けられたのは、紙袋で。
中を見れば、そこには重箱が、入れてあった。
「きちんと食べて、洗って、返すように」
「はいはい」
「それと。はい、これ」
次に、言葉と共に差し出されたのは、一枚の紙。
やっぱりか、なんて思う。
「ちゃんと出せ」
「いいじゃん。どうせ、元日に会うんだし」
「約束してないだろ?」
「僕の中では、決まってた」
「あのな…」
「ついでに、尽にも決められてたから」
「………」
「今日は君と一緒じゃないと、おかしいらしいです、僕」
「…親友は?」
「彼氏と一緒。僕、邪魔」
「………」
去年と、同じはじまり。
考えて。
思い出して、息を吐く。
細かい部分は違うけれど。
大まかに見れば、彼女と一緒という、はじまりだから。
変わらない。
「行こう?」
くいっとそでを引かれて。
微苦笑を零した。
きっと、来年も一緒。
そんなことを、思いながら。
END
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